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第2章

「ここが、オロチが出るという川……」
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は、鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)とともに、噂の川原にやってきた。
 西の空に傾きつつあるものの、まだ力強く夏の輝きを力強く放っている太陽を受けて、水面は、キラキラと輝いている。
「今のところ、不審な様子は見当たらないわね」
 風船屋に行く、と聞いたときには、前にやらされた「温泉へGO!」のレポーターオーディションのことをに思い出した望美だったが、今回の目的は、オロチ退治と温泉の満喫だ。たぶん、前ほどひどいことにはならないだろう……などと考えていると、耳元で、剛太郎が囁いた。
「油断は禁物」
「わかってるわよ!」
 地形や地物などの下調べを始めた剛太郎と望美は、すぐに、岩陰に落ちていた釣り竿を見つけた。
「おーい、おぬしらも、川遊びか?」
 そこに、呑気な声をかけてきたのは、甚五郎の一行。
「いや、自分は、旅行を満喫する前に、オロチ退治の仕事を済ませるつもりでありまして」
「……えぇ!? オロチって、首のたくさんある蛇だか竜ですよね? そんなのが釣れるんですか!?」
 ホリィが、目を丸くする。
「そうだな……オロチも食材として使えるなら、持ち帰らないとな」
「では、釣るとするか。夜になれば、蛍が見れるんじゃろう? オロチ料理をつつきながら、蛍見物とは面白そうじゃのう」
 甚五郎と羽純の会話を聞いていたブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が飛び立ち、空からの偵察を開始した。
「目標地点に到達、周辺の索敵を開始……。目標補足、あのあたりに魚の群れがいます……あちらに蟹が……」
 甚五郎たちがいるあたりからやや上流、川が大きくカーブしているあたりで、ブリジットの声が、緊張を孕んだ。
「大物を発見、オロチです。川底で、眠っているようです。当機ブリジットの自爆を承認しますか?」
 ことあるごとに、自爆の承認を求めてくるブリジットだが、当然、甚五郎が承認するわけはない。
「眠っているなら、今、吊り上げるのは無理だな」
「オロチが動き出すという夜まで待てばよいのじゃ。ところで、あの釣り竿、もしや……」
「ああ、行方不明になった、風船屋の板前のものじゃないか?」
 甚五郎と羽純が、釣り竿のあったあたりを調べている間に、ホリィは、源のものらしき突っ掛けを見つけた。すぐ側に、オロチのウロコが数枚落ちている。
「……ワタシ、わかっちゃいました! 源さんは、オロチに食べられちゃったんです!」