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リアクション
〜 phase 06 〜
「パフュームちゃん!よかったぁ…会えて…皆さん無事ですか?」
「あたしは大丈夫、そっちこそよく無事だったね」
上の階に進む通路を進んでいたパフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)と【アダム】【詩音・シュヴァーラ】達
すぐに彼女達の前に数機の【メカフリューネ】が行く手を遮った
だが十分に応戦できない三人を救いの手が現れる……冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)である
傍らには冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)と【我が子・冬蔦 奈千】がいて、パフューム達が邂逅している間
千百合の剣が【プロホーク】を駆使し、攻撃を一身に引き受けてガードしてくれている
彼女に守られながら奈千が日奈々に状況を伝える
「日奈々おかあさん!相手は4人だよ、ロボットみたいなやつ!」
「ありがとう奈千…すぐに蹴散らしますぅ」
「あたしも行くよ!アダムくん下がってて!」
それぞれの言葉と共に日奈々の【天の炎】とパフュームの【サンダーボルト】が放たれ、炎雷の渦が敵を一掃した
ようやく生まれた邂逅を喜ぶ時間に全員がほっと息をつく
「このルートにいるって事は、三人とも……」
「ええ…【デレフリューネ】攻略です
実は…先に向かってる方達と合流はしてたんですけど…奈千がアダム君が近くにいるって教えてくれて」
「あたし達で、急いで向かう事にしたんだ
結構、敵もいるからどうしようって思ったんだけど、途中まで手伝ってくれる人達がいたんだよね」
「手伝ってくれるヒト?」
パフュームが聞き返すと同時に、向かう先の通路から、新たな声とともに人影が近づいてきた
「良かった、間に合ったんですね、3人とも」
「えっと……ああ〜!?」
自分達の前に現れ、ニッコリ微笑むその人の顔……その顔に記憶が符合し、パフュームが声を上げた
「卜部 泪さんだ!テレビの!?」
「はいそうです、はじめましてパフュームさん」
ミーハーっぽいパフュームの声に、やや吹き出しながら挨拶をする卜部 泪(うらべ・るい)
一緒に仁科 姫月(にしな・ひめき)と成田 樹彦(なりた・たつひこ)もいるようだ
「【デレフリューネ】はこの先にいます
すでに先行した皆さんが戦闘を開始しています、アダムくんですね、皆さんのサポートをお願いします」
「わかった!詩音、ありがとな、ここまで案内してくれて」
アダムの言葉に、詩音が申し訳なさそうに答える
「ううん、本当は一緒に行きたいんだけど……戻るね
【キレフリューネ】は倒したらしいけど、やっぱりお母さんが心配だから」
「詩音さんは私が送ります
どの道、【デレフリューネ】を突破しないと最上部には辿り着きませんから……そちらはお任せします」
「わかった、行こうアダムくん!みんな!」
泪の言葉に頷き、パフュームはアダムや日奈々達と先に進む事にする
進路方向に再び【メカフリューネ】が出現を始める中、樹彦と姫月がパフューム達に声をかけた
「【メカフリューネ】の足止めは任せろ、中ボスの所まで俺達で何とかする」
「なんていうか、キリがなくて馬鹿馬鹿しいけど、やるしかないのよね……さっさとフリューネさんを救出しなさいよ」
その言葉に力強く頷くパフュームとアダム
二人を先頭に塔を目指し残り全員が向かう中、泪とともに詩音は今来た道を引き返し始めた
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その頃【デレフリューネ】が控えていた聖堂の様な広間では、激しい戦闘が繰り広げられていた
【魔法特化型】という特性上、先ほど知る【キレフリューネ戦】の様な一点で洗練された戦闘ではない
しかし、激しいエフェクトと広範囲な攻撃効果の奔流は魔法ならではの特性かもしれない
……もっとも、その攻撃として選択される魔法に【派手でファンタジーっぽい】演出目的があるのは否定できない
「にゃはははははは!冷たい氷を喰らうといいにゃぁ〜!」
そんな【デレフリューネ】の【氷術】の連続発動による雨あられを回避しながら
アレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)はミラベル・オブライエン(みらべる・おぶらいえん)に声をかける
「……で?なんでアイツは、口調共々あんな格好なんだ?ミラ」
「わたくしに聞かれても……多分名前の【デレ】に関わるものなんじゃありませんか?」
目の前に跳んできた氷塊を彼女の剣が斬り砕き、アレクセイの杖がそれをすかさず打ち返す
氷同士の相殺がダイヤモンドダストのように細かな霧を撒き散らす
「二人とも、気をつけてください!」
そのまま霧を突き抜けようとすた二人に、後方にいる六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)からの声が聞こえる
その霧に遮られた向こうから馴染みのある魔力の気配を感じ、アレクセイがあらん限りの声で叫んだ
「雷だ!全速で下がれっ!」
同時に氷の霧を伝って広範囲攻撃に変化させた【雷術】が炸裂する
咄嗟に彼も【サンダーブラスト】を放ち、高圧の電流が絡み合いプラズマの奔流が僅かに身を焦がした
ダメージ数値を確認したいところだが、度重なる戦闘でこれで攻撃が終わりでない事はわかっている
「もらったにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
予想通り、光芒の中から飛び出してきた【デレフリューネ】が杖に魔力を纏わせ襲いかかる
だがそこに消滅寸前の【メカフリューネ】の残骸が高速で投げ込まれ、アレクセイの盾代わりに杖の攻撃を受け止めた
「ちっ……お邪魔虫が!」
容姿と今までの仕草口調とは真逆の憎々しげな舌打ちと共に【デレフリューネ】が離脱し、他の仲間と応戦を始める
それと同時に、彼の前にキリカ・キリルク(きりか・きりるく)とナビAIの【息子】が盾となるべく姿を見せた
「お待たせしました!取り巻きの【メカフリューネ】を蹴散らすのに手間取ってしまいました
少数のまま相手をさせて申し訳ありません」
「謝るこたぁないさお二人さん、こっちも3人……実質2人に有象無象のメカ共の相手を頼んだんだ
むしろ、時間の短さに驚いた位だぜ……で、肝心な帝王殿は?」
「御安心下さい!並み居る大群を相手にしたとはいえ、その程度で後れを取る父上ではありません」
息子【小帝王】の言葉と共に遠くを見れば
豪快な笑みと共に彼等の主ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)が二体目の【メカフリューネ】の残骸を投げつけながら
【モエフリューネ】のいる方向へ飛び込んでいくのが見えた
そんな父の姿を見ながら【小帝王】は再び今度は笑みと共に、アレクセイと駆けつけたミラベルの方を向く
「ちなみに遠巻きながら質問を聞きましたが
あの容姿と振る舞いは恐らく【ニャンデレ】というものだと思われます
異常に好戦的なあたりややマイナーな【サドデレ】も含まれているかと……【ヤンデレ】かどうかは」
「すみません、緻密な情報はありがたいのですが……奥が深すぎてちょっと……」
至って大真面目な彼の分析を、慌ててミラベルが止めに入り、改めて【デレフリューネ】の容姿を見つめ直す
眼帯にメイド服……しかも猫耳に尻尾、右足は横縞のニーソックス、左足は同じ長さに包帯が巻かれている
手元の短い杖も、良く見れば先がフリルの傘になっていて、柄の部分には星型の宝石の飾りがついており
【フリューネ】のトレードマークの背中の【ヴァルキリーの羽】も心なしか小さく可愛くなっている
サブカルのありとあらゆる情報を盛り込んだ容姿は正直【わかる者】と【わからない者】を二分する
だが、その混在加減が彼女の【三騎士】たる個性と強さなのは認めざるを得ない
多面的なキャラ……もとい精神構造は、それぞれの持ち味を補い合い、それぞれの欠点を補い合う
【激情】が【炎】、【積極性】が【近接を恐れない戦闘性】、【強烈なキャラ設定】が【揺るがない精神性】となり
多彩な【魔法】を尚一層の柔軟性を持ってコントロールし、一対多の戦闘を成り立たせていた
頂点に上り詰める【アイドル】が【客観】と【主観】を兼ね備え、オールマイティに生モノなライブと渡り合えるように
実質【天然・破天荒・ランダム】に見えてその実【合理的】な戦闘スタイルを生み出している事実
流石に普段興味のない者達も、それを認めざるを得なくてミラベルは額に流れる多めの汗を感じずにはいられない
「こうも攻撃パターンが読めないと、連携も……っ!?」
「いけない、離れて!」
仲間の盾で生まれたタイミングを狙い、強引に攻めようとした彼女を、キリカの鋭い声が遮る
気がつけば、薄く残っていた氷の霧が溶け……粘度を増した別の物に変容し始めていた
「今度は【アシッドミスト】ですか!?」
攻めに飛び込むミラベルとアレクセイを包むように霧の濃さが増す
それを押し出すように飛び込んだ優希が、自分ごと霧の塊から彼女達を弾き出した
先に酸の脅威から脱していた【小帝王】が、優希のダメージを見て心配そうに声をかけた
「大丈夫ですか?立て続けの正面からのガードで鎧の方も脆くなってます
VR世界なので耐久値を超えると装備は一気に消滅します、気をつけないと」
「【エンデュア】の効果があるから見た目より大丈夫!それに……援軍のフォローもあったみたいだから」
ニッコリ笑う優希の言葉に、ようやく自分達を包む【護国の聖域】の力に彼も気がつく
アクティブにしてあるナビ用のマップを見ると、スキル発動エフェクトと共に接近してくるマーカーがある
名前を表示すると冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)と冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)の名前があった
よく見ると別方向から【デレフリューネ】に向けて進む2つのマーカーも見える
目視できる距離を駆けていくシルエット……向こうもこちらの存在に気がついたらしく、すぐにダイレクト通信が届いた
『おまたせ!パフューム・ディオニウス、アダムと一緒に手伝うよ!』
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「どうした相棒?意気込んで突入した割には何もできていないではないか?」
「黙れ帝王!さっさと自分の仕事をしろっ!」
優希達の立て直しを待ちながらヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は隣の相棒に声をかける
当の相棒レン・オズワルド(れん・おずわるど)は苦戦の様相で【デレフリューネ】の猛攻を回避してきたところだった
「褒め殺しで動揺を誘うなど、いささか勉強不足ではないか?
【デレ】と冠がつく以上、それは挑発以上の何物でもないぞ
みろ、現に有頂天になっている……ま、お陰で攻撃をお前が一身に受けてくれて助かるがな」
「この……」
「うにゃぁ〜〜〜〜レンた〜ん☆」
飄々と軽口を叩く帝王に抗議をしようとするレンだが
口を開ききる前に彼めがけて【デレフリューネ】が喊声とともに抱きつこうと飛び込んできた
それだけなら正面から受け流してもいいところだが、先ほどそれを試みて痛い目を見たところである
放った本人も自爆レベルでしかない零距離の【雷術】を喰らったダメージは二度と御免こうむりたい
……もっとも、それを回避すればするほど自分への【憎悪値】が上がるらしく、執拗な特攻が勢いを増しているのだが
「どうして逃げるにゃダ〜リン?あんなにフリュを褒めてくれたんだからもっと言って欲しいのにゃ☆
フリュの痺れる愛をもっと受け止めて、苦しむ顔をもっと傍で見せて欲しいんだっちゃ☆」
「断る!それに自分をフリュとか言うなっ!この【ヤンデレ】がっ!」
彼の当所の目論見としては【看破眼鏡】で容姿的弱点を調べ上げ【綺麗】といわれるフリューネに
あえて【可愛い】という事で動揺を誘う心づもりであったのであるが
実際は【綺麗】をどこかに置いてきてしまった容姿にそのまま褒め殺しを行っただけという過程で今に至る
(おかげで優希達が十分な立て直しとパフュームとの合流が、実にじっくりできているのであるが)
【デレフリューネ】の猛烈病み系ラブアタックに逃げ惑うレン
完全に【某雷様系宇宙型ヒロイン】の口調が乗り移り、逃げ惑っている彼を半分楽しそうに見守る帝王殿である
「ラスボスメインに作戦を考えすぎて、こっちに思考を向けなかったのが敗因だな
しかし良かったではないか。念願の愛を溢れるほどに貰ってうれしいであろう?」
「楽しむな帝王!そもそもこいつの相手はお前の方がメインで担当するはずだろう!?さっさと仕事をしろ」
「……ふむ、確かにそうであったな……ならそろそろ余興はここまでにしておいた方がいいかな、祥子?」
「そうねぇ、カメラを忘れた分もうちょっと堪能したかったけど、記者姫もいるからいいかしら?
しかし、あのプロポーションと美貌であれをやられたら大抵の男は魅了されちゃうんでしょうけどー
あの生真面目サングラスとあなたと戦闘馬鹿と子供しかいないから、そっち方面で楽しめなくてがっかりだわ」
ヴァルの言葉に、頭をかきながら宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が専用準備に入りつつ答える
「キャラの個性でこっちが翻弄されそうだけど、冷静に考えれば向こうは一人なのよね
対魔法は全員考えてあるんでしょう?じゃぁ迷わずガンガンに行きましょうか」
『でも、私たちもみなさんのプランも、最終的には接近戦ですよね?
レンさんみたいに、零距離&相互ダメージ覚悟の魔法は想定外だったので、そこだけどうすればいいか……』
「それはほら、ダーリンにしっかり愛のホールドで……」
『断るっ!こっちから願い下げだ』
通信による優希の質問にニッコリ答える祥子だが、即座にレンの通信でバッサリ提案を却下される
やれやれ……とため息をついた後、全員に聞こえるように通信込みで返答した
「甲斐性無しが多いから、そこら辺は私が何とかしましょうか……それじゃ、対魔法戦よろしくね」
言葉と共に浮かべた彼女の笑みが【デレフリューネ】と似たものを含んでいると感じる事が出来る者は
残念ながらこのパーティーにはいないようだ
ともあれ【三騎士】の一柱を攻略するべく戦闘は、彼女の言葉により再開される
「にゃにゃ?何やら決着フラグのニオイがびんびんするのにゃ?でもそうはいかないのにゃ〜!」
言葉と共に【デレフリューネ】の左右に向けて広範囲魔法【ブリザード】【サンダーブラスト】が放たれる
「全体魔法……まかせて……ください」
「日奈々と奈千はあたしが守る!」
千百合が【護国の聖域】でそれのダメージを軽減し日奈々と共に【奈千】を守りながら距離を詰める
【奈千】が魔法の効果時間を正確に計測し、ピーク……すなわち術者が発動に集中すタイミングを伝えた
「今だよ!おかあさん」
「ありがとう、奈千」
お礼の言葉と共に日奈々が二匹の召喚獣【フェニックス】と【サンダーバード】を呼ぶ
フェニックスの炎と彼女の【天の炎】が氷結の嵐を相殺し【デレフリューネ】をその空間に縫い付ける
大量の水蒸気に周囲が包まれる中、動き出す無数の気配を感じた【デレフリューネ】が声を上げた
「ふふふ……撹乱を狙おうと、フリュの【ディエクトエビル】が……にゃ?」
しかし、不意にその複数の気配が強烈な二つのものに集約されるのを感じ、舌打ちとともに呟く
「【プロボーグ】の挑発かにゃ?小賢しい真似をっ!」
キリカと千百合がともに発動したそれに対応するべく【アシッドミスト】を放つ
だがそこに二つの気配の死角を突いて【エンデュア】を纏った優希が接近する
スキル効果で酸のダメージに耐えながらギリギリ近づき発動した【ガードライン】が後続の仲間を守り距離が詰まる
だが、そこも予測済みか……酸の霧が晴れる中、全体を【サンダーブラスト】が包みこむ
しかし、その手もすでに攻略組の方も予測済みである
「アレク様!パフューム様!」
「了解!」
「まかせて!」
ミラベルの声でアレクセイが連続の【天のいかずち】を放つ
キリカ達の気配陽動の間に描いた無数の魔法陣が放つ雷
それとパフュームの【サンダーブラスト】が、相手の雷を誘導し強烈なプラズマの柱を無数に生み出す
その触れれば焼け焦げる光の柱の中に、ミラベルと祥子そしてレンと千百合が飛び込んでいく
すさまじい余波に無傷ではいられないものの、各々強化さた魔法耐性でダメージをしのぎ高速移動で掻い潜る
「あまり周囲に気にしてると、正面すら疎かになるぞ小娘!」
未だ【プロボーグ】の挑発が継続する中、【デレフリューネ】の正面からヴァルとミラベルが飛び込んでくる
ヴァルの二刀とミラベルの【面打ち】を魔力強化された杖で凌ぐ【デレフリューネ】、その対応力に帝王が笑う
「さすが素体がアレだけあるか、至近距離でも容易には堕ちぬかっ」
「ぞくぞくするにゃ!こうなったら奥の手にゃぁ!」
言葉と共に帝王の剣を受け止めていた【デレフリューネ】の杖の両端から【闇黒】が発生する
それが【罪と死】の発動だと悟った二人が離脱を試みるも、至近距離・連続発動のそれは確実に二人を跳ね飛ばした
「ぬぉっ……【魔法使い】だけでなく【死霊術師】が本質か!」
「まずはまとめてボロゾウキンにしてゾクゾクしてやるのにゃ!」
【地獄の天使】で上昇した【デレフリューネ】の言葉と共に放たれる【エンドレスナイトメア】
接近した全員が闇に包まれるのを確認し、連続して【闇術】を叩きこむ
接戦を回避した事に【デレフリューネ】が安堵した刹那……足元の闇の中からレーザーが彼女に向けて放たれた
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
不意の直撃を何とか防御する中、闇の中から祥子と千百合、アレクセイが飛び出てくる
全体魔法の影響が微塵にも感じられない勢いを疑問に感じ、眼下を見直すと、倒れているキリカが笑っているのが見えた
その魔力残滓に何が起こったのかを【デレフリューネ】は瞬時に理解する
「【サクリファイス】!?自分を犠牲にして回復魔法をっ!?」
二発目の【エンドレスナイトメア】発動に間に合わないと判断し、咄嗟に【アボミネーション】の効果で攻撃力低下を試みる
だがそれをものともせず、接近する三人の中心からヴァルが【デレフリューネ】に高速で突っ込んできた
「にゃにゃ!?なんで平気なのにゃ!?」
「まだだ。その程度のデレが、この帝王を蕩けさせるかぁぁぁあ!…精進せよっ!」
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
すさまじい剣戟で、杖の防御ごと彼女をさらなる上空に弾き飛ばす帝王
その両脇を千百合とアレクセイがすり抜け、両脇から【超賢者の杖】と【光条兵器】を叩きこむ
防御の硬直から立ち直るタイムラグを突かれ、膨大なダメージを負う中それでも懸命に離脱を試みる中
とどめを刺さんとばかりに祥子が【梟雄剣ヴァルザドーン】を振りかざし接近してくる
先ほどレーザーを放ったそれを耐えるのは困難と判断した彼女は、瞬時の判断で近づく祥子に抱きついた
「あららら?これはどういう事かしら?」
「みなさんとっても強いのです〜、とくにお姉さんが強いのでフリュ、メロメロになっちゃいました
痛いのは嫌です、やさしくしてくださ〜い☆」
「……ま、その格好で言われると悪い気はしないわね」
そういって攻撃を中断し【デレフリューネ】を抱き締め返す祥子
その胸元に顔をうずめながら、【デレフリューネ】の目は不敵に輝いていた
(かかったにゃ!このまま【リジェネレーション】で回復してから魔法で至近距離から……)
「……あ、でもごめんね?どうしても止めを刺したがってるサングラスのこわ〜いお兄さんがいるから譲らないと」
「ふぇ?」
抱擁のまましれっと答える祥子の言葉に顔を上げ、彼女の見ている先をみる
そこには顔面に【面目躍如】と書いたような表情で接近するレンの姿があった
「え?え?そんな……だったら【ペトリ……ふむぅっ」
抱擁されて手が動かせず、せめて石化魔法を……と詠唱をはじめた【デレフリューネ】の口を祥子が口で塞ぐ
地上では咄嗟の事に、千百合が良い子は見ちゃいけませんと奈千の目を塞ぎ
小帝王は真剣にガン見する中、さりげなさを装い目をそらすキリカ
思わずカメラを向けてしまい、停止スイッチにテンパって探してる優希の図
……もちろん、至近距離でそれを眺めているサングラスのお兄さんのこめかみには蒼い筋が立っているなか
しっかり舌まで入れて堪能しつくした祥子が、彼女をぽん……彼の射線へ押し出した
「悪いわね、こういうことは私のほうが経験値高いのよー!最後はお兄さんに優しくしてもらってね☆」
「ふぇ……いやあああああああああああああああああああああああああああ!」
テク……もといオトナのイロハですっかり自分の状況を忘れかかっていた【デレフリューネ】
彼女の叫びと共に、某お兄さんの銃による止めの【一発】で天に召されたのは言うまでもない
………だが、後に彼が『むしろ隣のお姉さんをハチの巣にしたかった』と漏らしたのはずっと後の話である
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