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リアクション
〜 phase 04 〜
プレイヤー間のネットワークが成立し、次々に作戦方針が練られて行動が開始される中
当初から戦闘を続行している面々も、変わらずの【メカフリューネ】との激戦を繰り広げられていた
とはいえ、システムを改変した力はプレイヤーの基本素養を知っていたのか、それとも偶然なのか
メカ機兵のリポップ速度と数も尋常ではなく、一掃しても次々と復活し10分後には完全に元の数で編隊を組んでいく
夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)と柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の一団もそれに随時対応し見事に応戦している成果か
実におびただしい数を倒していた……だが、流石に各自消耗を隠せなくなってきている様である
「しかし、何という物量でありましょうか……マスターは大丈夫でありますか」
「こっちは剣だからな、弾薬の心配はないが……休憩無しってのはちょっとしんどいかな」
高機動型戦車 ドーラ(こうきどうがたせんしゃ・どーら)の問いに恭也は剣を握りなおして答える
VR世界である以上、肉体感覚も仮想なので明確な疲労というのは存在しないのだが、電脳の体を支配するのは脳だ
神経反射を駆使して戦う事は集中力を要するし、そういう疲労を消す事は出来ない
それでも直撃のダメージは一切負わずに切り抜けてはいるが、積み重なる微細なダメージは着実にHPを削っていた
姉を名乗る以上、気丈に柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)も戦ってはいるが、基本のレベル差は誤魔化しようがなく
時々鈍る彼女の動きを狙って、数体のメカが襲い掛かるのだがホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が援護防御を駆使し
かろうじて致命的なダメージを受けずにいた
ようやく目の前の数体を一掃し、退避できた唯依に草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が回復を試みる
「大分疲労が目に見えてきとるの、大丈夫か?」
「弟が頑張ってるのに弱音は吐けないさ
それにようやく他のプレイヤーが動き始めたのに、早々にリタイアなんてゴメンだね
誰かが塔に辿り着くまでは意地でも持ちこたえてやるさ」
「無論じゃな、ほんとにウジャウジャ出てくるのぅ……この扱いではフリューネもうかばれまいて」
見ればすでに初期配置の6割が復活している
こちらをターゲット認識されないよう甚五郎とブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が迎撃しているが
やはり数体は止められず、着々と唯依達に接近しつつある
「回復は半分か……まぁいいインターバルだったさ、続けてのラウンド行こうか」
「わるいな唯依、この数だと範囲殲滅にも限りがある……出来るだけ減らすが残りは対処してくれ」
僅かに重い頭を振って気力を振い立たせる唯依をかばう様に、羽純が迎撃の準備をする
だが【メカフリューネ】があと100メートルで彼女達に到達すると判断した刹那……
ひゅっという風切り音の後、カンカンカンと乾いた音が炸裂、敵数体の間接が穴と共に電気爆発を起こした
「【ライトニングウェポン】と【スナイプ】の併用?……どこから?」
攻撃に見覚えのある唯依が口を開いた刹那、傍らに浮かんだ通信アイコンと共に唯依に負けず劣らずの凛とした声が聞こえた
『そこから動くな!移動のついでに一掃してやる、そのまま回復に専念しろ!』
声と同時に唯依の前だけでなく、甚五郎や恭也たちの前を複数の影が駆け抜ける
その中の一つから裂迫の気合が放たれると同時に【轟雷閃】らしき攻撃が無数の【メカフリューネ】を破壊していった
そのまま立ち去る一団を見送りながら、唯依と羽純は閉じようとしている通信アイコンに浮かぶ名前を急いで見た
そこに表示されている名前を確認し、その勢いに二人とも思わず納得する
……そこには【林田 樹(はやしだ・いつき)】の名前があった
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「……こんなもんかな
拓、今の寄り道での時間誤差と敵の出現数の変化を教えてくれる?」
たった今すれ違いざまに【轟雷閃】を放った愛刀を軽く振って鞘に納め、
【パワードスーツ】に身を包んだサムライ……緒方 章(おがた・あきら)は【我が子・拓(ひらく)】に質問をする
「とーちゃん達の時間ロスはゼロ!進行上の敵影は20パー現象だって
……っていうか、むしろそこのおっさんの動きにムラがあってヤバイんだけどさ、大丈夫なの?」
拓の言葉に緒方 太壱(おがた・たいち)はカチンと来た様子で容赦なく睨みつける
「おっさんたぁなんだこのガキ!言っとくけどな俺は27才、独身だっ!」
「27で独身?……行き遅れの間違いなんじゃねぇの?」
「いき……このクソ餓鬼、言うに事欠いて……どうやら仮想のモンは礼儀知らずらしいなコラ
能力で調子に乗ってるガキにはな、社会の荒波にのっとったきつ〜いお仕置きを」
「……なら私も喜んで便乗させてもらおうか」
ガチャリ……という銃のリロード音を聞くと共に
共に何だよという態度で拓と太壱が声をした方を向くと樹が二人に向けて銃を向けていた
「そろそろ静かにならんか、バカ息子共!」
「げーっ!ぅわかったよ!大人しく当初の作戦に戻るからっ!」
「わーっ!…うぁい、真面目にナビゲートしますっ」
共に同じようなコメントを述べながら進行方向に一目散に走っていく
そんな一部始終を腹抱えて大爆笑している章……毎度毎度の事ながら殺伐とした場所で賑やかな事この上ない
目的の中継点まで到達し、息を荒げる息子二人に呆れながら、樹は助言を章に求める
「アキラ!このバカ共何とかならんのか!」
「いやいや、実に僕達の子どもらしいってとこじゃない?何か似てるよね二人とも」
その言葉に抗議しようとする拓と太壱をやんわりと……そして厳しく手で制し、彼の言葉は続く
「はーいはいはい、それ以上言うと僕も樹ちゃんも怒るからね? それでは作戦行動の確認するよ……樹ちゃん」
「ああ、作戦の主目的はパワードスーツの訓練【メカフリューネ】とやらの殲滅はおまけだ
これから激戦区に突入するから今以上の戦闘になるだろう、パワードスーツの感触を実戦に向けて確認しておけ
合図により規定のフォーメーションで移動、役割は……わかっているな?
私が敵陣に突入し間接部を射撃……次に」
「僕が【轟雷閃】メインで敵陣突破だね、そして拓君がナビゲート、太壱君が……」
「わかってる、【強化装甲】で耐久力あげつつ、後方支援でイクぜ!」
「よし、各自装備の点検を……」
「待ってかぁちゃん!3時からプレイヤー接近、オレの仲間もいる」
拓の言葉に声の方向を見ると、上空から迎撃してる【メカフリューネ】の姿が見える
地上からも何やら複数の爆発音が聞こえ、すぐに女性の声が聞こえた
「シャンバラ維新軍から、期待の新人登場!メカフリューネ共、あたしが相手だぁ!」
「……シャンバラ維新軍?っていうかあの声……来い、ガキ」
「うわったた!?なにすんだよおじさん!?」
拓の首根っこを掴み、声の方へ走り出す太壱
突然の行為にまた息子組の暴走かと樹が声を荒げる
「!?……言った傍から!何を考えてるんだたい……」
「まって樹ちゃん、あの子」
章の声で改めて樹が確認する中
太壱は戦闘と共に飛び出した陰と【メカフリューネ】の前に割り込むと【光術】と【雷術】を炸裂させた
不意の攻撃に機能静止したメカロボに炎の鞭が炸裂し、爆発と共に消滅する
その自分の攻撃を良く知っているタイミングと武器に、確信を持って太壱は乱入者に声をかけた
「?…ってお前ツェツェじゃねぇか?戦隊モノの敵女王様みてぇな格好しててもわかんぜ!
サポートしてヤッからこっちに来い!」
「ちょ…あたしの正体ばらさないでよ、バカタイチ!それと、その呼び方禁止!」
彼の言葉に鞭を纏めながらセシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)が慌てて抗議をする
そして、ようやく太壱の拘束から開放された拓が、セシリアの物陰にいたもう一つの影を見つけこちらも驚きの声をあげた
「あれ?チセ、お前も来てたのか?」
「あら、ヒラク?うん、セシリアとダディをナビゲートしてここまで来たの」
対する影……【チセ】も拓を見つけて意外そうな声を上げた
「セシリアってあのねーちゃんか……っていうか、ちょっと雰囲気変わってない?っつか、縮んだ?」
「母親のデータを変更したらこうなっただけよ」
「データ変更?母親の?それだけ?……いやちょっと待て?確か母親の元データーってかーちゃんだよな?」
「細かい説明は後!セシリア、新たに3機接近!拓はこっちに来て!」
チセの言葉に戦闘態勢を取るセシリアと太壱
拓もチセに連れられ、岩陰の方に移動していくのを樹たちも確認した
「あのボンテージ姿……バカ息子の想い人か」
「うん、骨格から判断してセシリアくんに間違いないね
彼女がいると、『先生』も近くにいることになるけど…どうする?」
「【メカフリューネ】とやらの殺気以外に反応はない…無視して大丈夫だろう
しかし何だな、彼女は…動きがおかしくないか?」
「身体に異常でもあるのかな?サポート、する?」
章の少し思慮気味な問いに、少しの間思考をめぐらし樹が返答した
「いや……時折、5時の方向から弾幕が来る、アルトがサポートしているんだろう
それに、何かあったらバカ息子が何とかするだろうて」
少し前なら露骨に嫌悪を示していた樹だが、見たところ冷静さを失っていないようだ
自分と彼女の関係も含め、時間の経過を章は感じずにはいられない
「そーだね、惚れた女を何とか出来ないようでは、僕達の息子じゃないもんね」
「だから、お前は何でこうさらっとこっ恥ずかしくなるようなことを……」
「9時!」
「わかった!」
顔を真っ赤にして抗議をしようとした樹だが、敵影を察知した章の指示の方向にすかさず【二丁拳銃】を打ち込む
気がつけば自分達の近くにも数体接近していたようで、彼女達も迎撃に集中する事にした
一方、チセに引っ張られ岩陰につれられた拓は、そこに先にいた人影に驚く事になる
「ごわっ!かーちゃんの敵!いたのかよ!」
「拓君でしたか?今回はイツキ達の妨害に来たのではありません、シシィのサポートです」
そう言って人影……アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)はセシリアに向け【弾幕援護】をしている様だ
正直、拓にとっては自分が生まれた時に母親と彼がいがみ合っていた姿しか見ていない
それでも嫌悪出来なかったのは、自分と同じ存在の【チセ】の母親のデーターが同じだったからだ
これが実際に生まれて育てられた記憶があるのなら、異父的感覚で違う嫌悪感でもあるのかもしれないが
基本、自分がデーターの集合体だとわかっている今、それ程嫌悪の対象になってはいない
そんな先入観がない目線なのか、以前感じた狂気のようなものが彼から無くなっているのを感じ、拓は彼を見つめる
拓の目線から感情を感じ取ったのか、アルテッツァは抑揚のない声でふと拓に言葉を漏らした
「…子供を持つと、ここまで性格は変わるものなのでしょうか」
「多分変わるんじゃね?とーちゃんとかーちゃんみてると分かるけどさ
どこまでも頼る事が出来る存在がいるってのは何か違うみてぇだせ、オッサン」
「オッサン、ですか…初めて聞きますね」
苦笑して返事をしたきり、無言のままアルテッツァは援護射撃を続ける
(親世代の確執が、子世代で解決する…そんな夢物語を考えても良いのでしょうか?)
かつての自分らしからぬ思考が頭をよぎる中
遠くのセシリアと太壱のコンビネーションが眩しく写るのは気のせいではあるまい
それは樹達も同様に感じたようで、戦いながら彼等の様子を見ていた章が感想を述べた
「それにしても、ずいぶんと息が合うねセシリアくんと太壱君……戦い方が僕達流っていうか」
「多分、バカ息子と共に行動していた期間が長いからではないのか?
遺伝子的な【ジーン】ではなく、後天的に学んだ【ミーム】によるものだろう」
「ま、野暮な詮索は後にしようよ樹ちゃん
残り5体さっさと撃破して、予定通りの作戦を決行するよ……闘う衛生課・緒方章、参ります!」
鮮やかに【名乗り】を決め、樹共々メカ軍団に切り込んでいく章
そんなそれぞれの親の様子を見て拓とチセが呟いた
「チセ、かーちゃんとオッサンが喧嘩しなくなると良いな」
「ワタシもそう思う…」
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