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シャンバラの宅配ピザ事情

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シャンバラの宅配ピザ事情

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 『チーム時代錯誤』と、とある優男に名付けられた2人組、景虎とフレンディスは、今のところは何事もなく配達に勤しんでいた。
 彼らは2人共、現代文明に疎かった。
 なので、2人共がバイク、小型飛空艇のどちらも操ることが出来なかった。
 そして樹には、配達期限とピザと安全を守るように、とても厳しく言われたのである。
 そこで彼らが出した配達方法は、
 バイクより数倍速く走れるフレンディスが、ピザの安全を守る景虎を背負い、走って配達する、という方法だった。
 端から見ると、ピザの店員の制服を着た女が、同じく制服を着た男を背負って荒野を駆け巡るという、なんともシュールな光景である。
 そしてバイクなどの乗り物とは違い、移動方法が人力で、その辺の岩場をピョンピョン跳ねて移動したりしていた。
 つまるところ、配達バック内のピザは、すごい勢いで揺らされ、既にあられもない姿に変貌していたりする。
 まぁそんなことは、『ピザ』がどんなものかさえ、よく分かっていない2人にとっては気にもとめていないことであった。

 そしてそんな2人を追う、2人の男がいた。
 章に『チーム時代錯誤』を追うように言われた、緒方 太壱(おがた・たいち)と、フレンディスが心配で着いて来た、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)である。
 ベルクについては、ポチの助に『エロ吸血鬼』と呼ばれていたりする。
 2人は、『チーム時代錯誤』が無事に配達できるか心配なので、ベルクの『レッサーダイヤモンドドラゴン』で追っているのだった。
「ふぅ、ようやく見えてきたな。今のところは何事もない…と」
 ベルクは安心するが、
「いやフレンディスは無事だろーがよォ、アレ絶対ピザは大変なことになっちまってるぜ」
 と、太壱はため息をついた。
 そして太壱は、樹と章に連絡をいれる為、腕時計型携帯電話を操作する。
「あ、お袋〜親父〜、一応見つけたぞ、フレンディス達…。状況を簡潔に言うとだなー、とてもシュールな光景が目の前にあって、ピザはおそらくもう原型を留めていなさそうな感じだぜ」
 と、状況を説明した直後、何故か景虎が思い切りピザパックを振り回した。
 景虎としては、なんとなくピザパックが持ちにくかったので、持ちやすいように動いただけだったのだが。
「あーあぁ! ピザパック振り回すなよ! だ、大丈夫なんかよ!」
 と太壱は思わず叫ぶ。
 さらに、太壱の携帯の繋がる先には、
 「貴様らに配達期限とピザの死守については伝えたがピザを振り回せとは伝えてはおらんわそれではピザが偏ったりチーズが蓋に付いたりして台無しになりお前らの給金に支障が出るぞ分かっておるのかーッ!!」
 とか無意味に叫びながらピザ生地に思い切り八つ当たりする樹と、それを必死でなだめる章がいたりするのだが、原因の『チーム時代錯誤』の2人は知るよしもないことだった。
 と。
 そこへ新たに、1人の男と一匹の犬が、太壱達のもとへ辿り着く。
 同じく、『チーム時代錯誤』の心配をして追って来た、東雲とポチの助である。
「ん? なんだ、ポチと東雲も着いて来たのか」
 というベルクに対し、ポチの助は、
「うるさいですよエロ吸血鬼。その口閉じて下さい汚らわしい」
 と、毒づいた。
 だがベルクは、そんなことは日常茶飯事なのでスルーする。
 もう挨拶みたいなものだ。
「というか、東雲は何してるんだ」
 ベルクの視線の先には東雲がいたのだが、何故かポチの助に抱きついて「もふもふー…うふふ…」と、ぼやいている。
 どうやら、豆柴姿のポチの助が気に入ったようだった。
「あぁ…何かさっきからこんな感じなんですよ。何言っても何しても離れてくれないですよ。まぁもう諦めましたが」
 やれやれですよ、とポチの助は呟く。
「で? ご主人様は何処です?」
 ベルクは、ポチの助の質問に、首だけ動かして答える。
「ありゃ…、アレじゃぁもうピザが大変なことになっていますかね。ご主人様ーッ!! もう少し落ち着いて下さいーッ!」
 ポチの助はフレンディスに向かって叫ぶが、聞こえていないのか、こちらを見向きもしなかった。
 しかし、景虎はその声に気づいたようで、ポチの助達の方を向いた。
「お、ナチュラル侍は気づいたみたい…だが」
 ベルク曰くナチュラル侍こと、景虎は、何か敵に出くわしたような顔をして、刀を抜いた。
「お、おい。なんかアイツ、俺達のこと敵だと思ってるみたいだぞ?」
 実際のところ、太壱の言う通りであった。
 景虎は使命感に燃えていて他の事を考えられないようで、知り合いであるはずの太壱達をてっきり敵だと認識してしまっていた。
 こんな状態の景虎でも、パートナーの東雲には気づくはずなのだが、東雲はポチの助の影にすっかり隠れてしまっていて、東雲に気づけなかった。
 太壱達には距離があって聞こえなかったのだが、この時の『チーム時代錯誤』の会話としては、
「ふれんでぃす! 背後から敵と思しき者達が迫って来ている。だが心配するな。前だけ見ていろ。俺が何とかしよう」
「分かりました、景虎さん。ですが戦闘は避けた方がいいかもしれません。ちょっぴり加速します!」
 といった感じで、勘違いも甚だしい限りである。
 そして、『チーム時代錯誤』は逃げるように加速した。
「うぉ!? 何かよく分からないが加速したぞ!?」
「あぁもう…、とにかく追いますよ!」