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リアクション
★ ★ ★
「あははははー、いっちばーん」
犬かきですいすいと進みながら、エーリカ・ブラウンシュヴァイクが勝ち誇りました。
「こら。もっとちゃんと風呂に入れ!」
それに気づいたレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)が、軽くエーリカ・ブラウンシュヴァイクを怒鳴りつけました。流れるお風呂沿いに、黒のビキニを着たエーリカ・ブラウンシュヴァイクを追いかけて叱ります。
「えー、いいじゃない。レノアも一緒に泳ごうよ」
「あわっ」
エーリカ・ブラウンシュヴァイクがレノア・レヴィスペンサーの足を掴んで、流れるお風呂に引きずり込みました。
「ぷはっ! 何をする!」
「ははは。捕まえてみてよね」
水面に顔を上げるレノア・レヴィスペンサーから、エーリカ・ブラウンシュヴァイクが泳いで逃げていきました。
「待て!」
ギリギリ泳がないようにお湯をかき分けながら、リブロ・グランチェスターがエーリカ・ブラウンシュヴァイクを追いかけていきました。その背後に、Pモヒカン族のパンツ背びれが迫ります。
「いいかげんに……」
エーリカ・ブラウンシュヴァイクの足を掴もうとしたレノア・レヴィスペンサーが、突然つんのめって転びました。
「ぶふっ。誰が足を……」
あわてて立ちあがりますが、なんだか下半身がスースーします。
「貴様のパンツはいただいた!」
流れる風呂で立ちあがって、P級四天王パンツ潜水番長が剥ぎ取ったばかりのレノア・レヴィスペンサーのパンツをズンと突き出しました。
「わ、私のパンツが……」
レノア・レヴィスペンサーが、あわててお湯の中でむきだしの股間を押さえます。
「さあ、返してほしければ、これを被れ!」
「誰が、被るかあ!」
「だったら、これは返さねえぜ」
激高するレノア・レヴィスペンサーから、P級四天王が逃げようとしました。ところが、クルリと後ろを振り返って走りだそうとしたとたん、バシャンとひっくり返ります。
「逃がさないんだもん」
素早くお湯の中を潜って近づいたエーリカ・ブラウンシュヴァイクが、P級四天王の足をすくって転ばしたのでした。
「パンツは返してもらったわよ」
エーリカ・ブラウンシュヴァイクが、取り返したレノア・レヴィスペンサーのパンツを掲げて言いました。
「み、みごとだぜ。これから貴様は、P級四天王パンツ素潜り番長と呼ぶことにしよう。だが、このままでは終わらねえ。野郎ども!」
「ぴー」
P級四天王が叫ぶと、お湯の中からPモヒカン族たちが現れました。
「貴様らのパンツは俺たちが剥ぎ取る。そして、被せる!」
「ちょ、ちょっと、たんま。とにかく穿かせて……」
自慢げなエーリカ・ブラウンシュヴァイクからパンツを奪い取ったレノア・レヴィスペンサーが、お湯の中でもぞもぞしながら答えました。
「被れ!」
P級四天王たちの返事は揺るぎありません。
「こらあ、そこで何をしている」
流れる風呂沿いの遊歩道をホールへむかっていたリブロ・グランチェスターが、騒ぎに気づいて加勢してきました。さらに、アルビダ・シルフィングも駆けつけます。
「あー、くそ、さっき、風紀委員にバトルアックス取られたのが痛いな。ええい、纏めて始末してやる。お風呂の海は、あたしの海だ。出ていけ!」
そう叫ぶと、アルビダ・シルフィングが、P級四天王たちを流れる風呂から外へと弾き飛ばしました。アルビダ・シルフィングも、レノア・レヴィスペンサーも、しっかりと武器を持ち込んでいたのですが、あっけなく没収されて、今はソア・ウェンボリスが預かっています。そのため素手で戦っていますが、充分に強いです。
「ぐっ、ただでは死なん!」
リブロ・グランチェスターの足許に飛ばされたP級四天王が、そのパンツに手をのばします。
「ええい、しつこい。完全な粛清が必要だな」
リブロ・グランチェスターが、ゲシゲシとP級四天王を踏みつぶしました。すぐに、エーリカ・ブラウンシュヴァイクたちもそれに加わります。
「それじゃ、流しまーす」
エーリカ・ブラウンシュヴァイクが、動かなくなったP級四天王たちを流れる風呂に蹴り落としました。
ぷっかりと浮かんだP級四天王たちが、流されていきます。その後を、ザンスカールの森の精 ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)らしき塊が追いかけるようにして流れていきましたが、いつものことなので気にしないでおきましょう。
★ ★ ★
「みんなで一緒にお風呂というのも、なんだか奇妙なものですねえ」
「え、ええ」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)の言葉に、ちょっと顔を上気させながらアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)がうなずきました。
お風呂開きがあると聞いて、初めて大浴場へ来てみたわけですが、よくよく考えると混浴なわけで、周囲には水着の男女が一杯です。まれに、すっぽんぽんで走り回っている人たちもいるので、もの凄く目の遣り場に困ります。あまつさえ、何やらPモヒカン族たちが徘徊しているので注意するように言われました。
「なあに、不埒な奴らは、我が成敗いたします」
むんと、力瘤を作って見せてイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が言いました。
「わあ、凄いですわ」
それを見たユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が、イグナ・スプリントの力瘤を細い指先でツンツンします。
四人とも、肩までしっかりと浸かっていますが、水着の方はちゃんと身につけています。全部貸し出しのお風呂用水着ですが、女の子たちはイルミンスール水着型で、ユーリカ・アスゲージがチェリーブロッサム、イグナ・スプリントがパステルグリーン、アルティア・シールアムがペールアクアといったカラーリングです。ただ、非不未予異無亡病近遠は、肌があまり強くないので全身水着を希望したことから、横縞の全身水着という、なんだか白黒映画に出てくる海水浴のような姿になってしまっています。
「まあ、男女一緒にお湯に浸かるというのも、海水浴と大差ないと考えればいいのかもしれませんね」
非不未予異無亡病近遠が言いました。
さすがに水着を着たままでは身体が洗えませんので、実は大風呂そばの大洗い場以外にも、小さな個別の洗い場が大浴場には点在しています。
まったく外部からのぞけないようなユニットシャワー型の個室から、観葉植物で周囲を被っただけの物とか、節穴つきの板塀で囲まれた物など、いろいろです。
みんなそちらの方で身体は洗い終えていますので、のんびりと大風呂で一緒に浸かっているという感じなのでした。
最初はどうなるかと思っていましたが、こういう大きなお風呂というのも気持ちのいいもので……。
「ぶはっ!」
頭に水で濡らしたタオルを乗せてのぼせないようにしていた非不未予異無亡病近遠のそばに、突然何かが落ちてきました。
「きゃー、穿いてない、穿いてないですわ!」
「いえ、頭に穿いて……、被っているのでございます」
ぷかあっと浮かびあがってきたPモヒカン族を見て、ユーリカ・アスゲージとアルティア・シールアムが悲鳴をあげました。
「ええい!」
容赦なくPモヒカン族を掴むと、イグナ・スプリントが投げ捨てました。
「うぎゃあ!」
いったい、どこを掴んだのでしょうか。
「大丈夫です。ゴミは捨てましたから。これで安心して……」
イグナ・スプリントがそう言い終えないうちに、また同じPモヒカン族が飛んできました。
「しつこい!」
再び、イグナ・スプリントがPモヒカン族を投げ捨てます。
「おい、ゴミをこちらへ投げるな!」
何やら、湯気のむこうから声がしました。
「そちらこそ」
イグナ・スプリントが言い返します。
いったい誰がいるのだろうと近づいていくと、見慣れた一行がお湯に浸かっていました。エステル・シャンフロウ(えすてる・しゃんふろう)様御一行です。
「なんで、こんな所にいるんですか?」
ちょっと驚いて、非不未予異無亡病近遠が訊ねました。本来なら、エリュシオン帝国にいるはずです。
「いえ、先日の協力のお礼として各学校の御挨拶参りをしている途中なのですが、お正月ですから、ちょっと休暇を……」
タオルを巻いたエステル・シャンフロウが答えました。
「まったく、ここの風呂は、変態の巣窟か。のんびりと風呂にも入れないとは」
ちょっと憮然として、デュランドール・ロンバスが言いました。先ほどからイグナ・スプリントとPモヒカン族ピンポンをしていたのは、どうやらデュランドール・ロンバスのようです。
「でも楽しいじゃないですか」
「姉さん、浸かって、浸かって……」
立ちあがってははははと笑うフレロビー・マイトナーのタオルを、ニルス・マイトナーが軽く引っぱりました。お湯から出るときの勢いで、タオルが貼りついて、身体の線が顕わになっています。
「見ちゃダメでございます」
アルティア・シールアムが、あわてて非不未予異無亡病近遠の目を両手で隠しました。
「いや、そんなにひっつかれると……」
背中にのしかかられて、非不未予異無亡病近遠がお湯の中に沈みます。お湯の中でタオルを巻いたフレロビー・マイトナーの下半身が見えますが、アルティア・シールアムが暴れるのでお湯の流れでタオルの裾がひらひらしています。
「溺れてしまいますわ」
あわてて、ユーリカ・アスゲージが非不未予異無亡病近遠を引っぱりあげようとしました。
「楽しそうだな」
エステル・シャンフロウに近づこうとするPモヒカン族を一撃で吹っ飛ばしながら、デュランドール・ロンバスが言いました。
「そうでしょうか」
ユーリカ・アスゲージの背後から忍びよってパンツを被せようとしたPモヒカン族を同じように吹っ飛ばしながら、イグナ・スプリントが言いました。
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