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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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    ★    ★    ★
 
 ロングバスタオルを身体に巻いた朝霧 垂(あさぎり・しづり)が、持ち込んだ妙酒『霧霞』ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)に勧めました。一人大風呂に泳ぎに行ってしまったリン・ダージと同様に、ココ・カンパーニュたちはロングバスタオル一枚を身体に巻いています。
 ちなみに、ゴチメイ隊は、全員めでたく二十歳を超えていますので、飲酒オッケーです。
「ささ、どんどん注ぐわよ♪」
 朝霧垂の奥さんである騎凛セイカが、ゴチメイのみんなにお酌をして回りました。さすが、年季の入った人妻は、飲ませっぷりが違います。朝霧垂と騎凛セイカは、互いにお揃いの黒羊のロングバスタオルを身体に巻いています。
「日本酒の他にも、アニバーサリーワインもあるわよ」
 高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)までもが、持ち寄った酒を出してきてゴチメイたちに勧めました。
「やっぱり、日本酒と露天風呂は切っても切れない関係よねえ」
 ビキニの水着の上にデキる女の白衣を来ていますが、その姿はどこかの秘密結社の首領を思わせます。
 まったく、以前この大浴場でお酒のパーティーなどというものがあったものですから、みんな平気でいろいろと持ち込むようになってしまいました。
「温泉でさあ、育てた鯉って、意外と美味しいんだよねえ」
 お酒の入っている朝霧垂が、いい気分でココ・カンパーニュに言いました。
「鯉って、あの錦鯉?」
 あれを食べるのかと、ココ・カンパーニュが聞き返しました。以前、ココ・カンパーニュと朝霧垂は、ヴァイシャリーにあった錦鯉の生け簀の警備バイトをしたことがあります。
「あれは高いだろ。普通の鯉の方だね」
「へえ」
 いっぺん食べてみたいものだと、ココ・カンパーニュが興味を示します。さすがに、鯉の洗いとか鯉濃とかは、フランスやパラミタにはなかったでしょうから、想像がつかないのでしょう。
「そういえば、茨ドームのときにばらまかれた石が、アトラスの傷跡のジェットコースターに使われてたって……。所有権とか、使用料とかとれないかなあ」
「それは無理でしょう。勝手にばらまかれた物だし、ほとんどはイルミンが回収したっていうから。それに、あれはマスドライバーだったわけで……」
 高天原鈿女が説明しますが、さすがにマスドライバーと言われても、ココ・カンパーニュの方はピンときません。「でっかいジェットコースターみたいな物ですねえ」
 ゆいいつチャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)だけが分かっているようでしたが、パラミタ出身のマサラ・アッサム(まさら・あっさむ)ジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)にはちんぷんかんぷんです。
「そんなことより、もう一杯♪」
「はいはい。喜んで」
 ココ・カンパーニュに言われて、騎凛セイカがお酒を升に注ぎました。
「おいおい、ほどほどにな」
「そうよ、お姉ちゃん」
 アラザルク・ミトゥナアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)が、ココ・カンパーニュたちに軽く釘を刺しました。ココ・カンパーニュたちとは違って、二人は水着を着ています。
 二人が座っているテーブルの下は足湯になっていて、のんびりと飲み物や食べ物を楽しみながらお風呂を楽しめるようになっていました。
「いちおう、私が見ていますから」
 ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が言いますが、彼女も飲んでいるので、あまりあてにはできません。
「もう……」
 仕方ないなと少し呆れつつも、アルディミアク・ミトゥナは足湯のお湯を手桶で少しすくって、テーブルの上においてある小ババ様の入ったお椀風呂に継ぎ足しました。
「こばあ♪」
 お湯がまた温かくなったと、小ババ様が喜びます。
 
    ★    ★    ★
 
「これは、こうやって飲む物ですうさー。ごきゅごきゅごきゅ」
 腰に手を当てて、フルーツ牛乳をごきゅごきゅと飲みながらティー・ティーが言いました。
「いただきまーす。ごきゅごきゅごきゅ……」
 それに合わせて、ティー・ティーにフルーツ牛乳を奢ってもらったパピモンたちがなんとか同じポーズをとろうと苦労しながら、上をむいて便牛乳を飲んでいきました。
「はい、お代はいただいていますから、あなたたちもどうぞ」
 出張『宿り樹に果実』のカウンターを開いているミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)が、ホールにいたコンちゃんたちにもフルーツ牛乳を配りました。
「ぷはーっ」
「ぷはーっ」
 満足気に息を吐き出すティー・ティーを見て、パピモンやランちゃんたちが真似をします。
「お子様たちは元気ですなあ」
 ホールにあるビーチチェアーに寝そべったリブロ・グランチェスターが、大胆に足を組み直しながら言いました。
「わーい、エッチだー」
「わーい、スケベだー」
「わーい、えろえろだー」
 ランちゃんたちが、そんなリブロ・グランチェスターを指さして叫びます。
「こ、この、おこちゃまたちは……」
 どうしてくれようかと、リブロ・グランチェスターが半身を起こしました。
「えー、エステいかがっすか? エステいかがっすか?」
 ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)がミード・エステサロンの幟をパタパタさせて客寄せをしています。
「こんな所でエステ?」
 リブロ・グランチェスターが小首をかしげました。
「ヒャッハー、とったぜえい!」
 その瞬間を逃さず、物陰から飛び出したPモヒカン族が、リブロ・グランチェスターの頭にパンツを被そうとしました。
「てめえら、うちの客(予定)に、何をしやがる」
 リブロ・グランチェスターの頭にパンツダウンが決まったかと思われた瞬間、ゲブー・オブインがPモヒカン族を吹っ飛ばしました。その頭のモヒカンから、被っていたパンツーハットが吹っ飛んで脱げます。
「だいたい、なんだ、その頭はよお。せっかくのモヒカンにパンツなんか被せやがって。せっかくのモヒカンが泣いてるぜ」
 自慢のピンクのモヒカンをキランと輝かせながら、ゲブー・オブインがPモヒカン族に言いました。
「お、俺のパンツーハットが……。だが、まだだ、俺にはまだ他にもパンツがある!」
 そう言うと、Pモヒカン族は、リブロ・グランチェスターに被せようと手に持っていたパンティーを頭に被りました。
「えっ、あのパンツは……」
 それを見た騎凛セイカが真っ赤になります。
「えっ、まさか……」
 驚いて、朝霧垂が奥さんを振り返ります。こっくりと、騎凛セイカがうなずきました。
「いったい、いつの間に……。貴様ー、万死にあたいする!!
 Pモヒカン族が騎凛セイカのパンティーを頭に被っているのを知って、朝霧垂がキレました。
「てめえ、何を言って……」
 ちょっと驚いたPモヒカン族が皆まで言わないうちに、朝霧垂が歴戦の獲得術であっという間に騎凛セイカのパンティーを取り戻します。同時に、真空波で、すっぱりとPモヒカン族のモヒカンを切り落としました。
「うわああああ、俺様のパンツとモヒカンがあ〜!」
 Pモヒカン族が頭に手をやって悲鳴をあげます。まあ、Pモヒカン族のアイデンティティーを構成する二つの物がいっぺんに失われたのですから当然です。
「止めだ!」
 朝霧垂が身構えました。
「待て!!」
 そこへ、ゲブー・オブインが間に割って入ります。
「兄貴、助けてくれるんですかい」
 パンツも、モヒカンも失ったただの男が、ゲブー・オブインの後ろに隠れようとします。
「邪魔をするつもりか!」
 怒りに燃えた朝霧垂が怒鳴りました。
「いや、ちょっと待て!」
 そう言うと、ゲブー・オブインは後ろのただの男に、持っていた光るモヒカンを被せました。ピタッとモヒカンが男の頭にフィットして外れなくなります。
「これでよし。やられるときにも、モヒカンを忘れちゃあいけねえ。もういいぞ」
 満足気に言うと、ゲブー・オブインがPモヒカン族をトンと朝霧垂の前に押し出しました。
「えっ!?」
 助かったと思っていたPモヒカン族が、フリーズします。
「よし、最後の仕上げだ!」
 朝霧垂と騎凛セイカが、お互いの手と手を繋ぎました。
「二人のこの手が真白く光る。パンツを掴めと、輝き叫ぶ。必殺、ラブラブランバレスト!!」
 結婚指輪(朝霧垂&騎凛セイカ)の輝きが一つに合わさり、二人の拳がPモヒカン族を大浴場の反対側まで吹っ飛ばしました。
「とりあえず、ちゃんとしまってこなきゃ」
 今度は盗まれないようにと、騎凛セイカがいったん女子脱衣所の方へと戻っていきます。朝霧垂もそれについていきました。