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煩悩×アイドル

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煩悩×アイドル

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第7章 煩悩ラストバトル


「うぉぉおおおおおおっ!」
 煩悩に取りつかれたアイドルたちの間を駆け抜ける一陣の風。
 駆け終えた風はぴたりと動きを止め、真の姿をその場にいる者たちに現す。
 風は、エヴァルト。
 エヴァルトも、アイドルたちも、微動だにしない。
 やがてエヴァルトは静か鯉口を切り……かちりと、納刀する。
 その鍔鳴りの直後。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴーン!!!!!
 狂乱するかのように鐘の音が鳴り響き、ばたばたとアイドルたちは倒れていく。
「安心しろ……打ったのは、鞘だ」
 エヴァルトが静かに宣言した。
 その時だった。
『♪あーたーしーのーうーたーをー、聞けぇええええーっ!』
 スタジオ内に、どこからともなく流れる歌声。
「くっ…… ♪まーだ残党がいたようだ。早いとこ救ってやーらーねーばー……って、何ぃいいっ!?」
「あはは! エヴァルトってば ♪おーもしろいーおもしろいー。どうしてこんなんなっちゃったー……あれ?」
 歌声を聞いた途端、突如としてオペラ調に歌いだすエヴァルトとロートラウト。
「♪わかるー、わかるぞ私にはー!」
 同じくオペラ調で歌いながら、アヴドーチカが説明する。
「♪これはー今までにない強力なー、チ・カ・ラー! それがスタジオ中にー、流れて皆に影響をー!」
「えぇえええーい、♪うっとうしー! ひとまずこいつをくーらーうーがーいいー!」
 アイドルたちを打とうにも拳で傷付けてはいけないと今まで攻撃を控えてきたコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)
 しかしふと何事か思いついたのか、飛ぶ。
 高く高く。
 そしてそのまま、大地へ突撃という名の落下!
 ずぅううううん!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーン!!
 コアが大地に与えた攻撃。
 その衝撃と爆風で、煩悩が抜け切れていないアイドルたちは次々と正気を取り戻していく。
 そしてコアが落下した地点には、大穴。
「だ……大丈夫ですか?」
 ぼこり。
 結和の声に、コアは穴から顔だけ覗かせる。
 どうやら無事のようだ。
「♪あの歌声は、ラブのものー。早くなんとかしなければ、嫌なよーかーんーがー」
「♪すーるー!」×全員

『♪あたしこそー、108のアイドル魂のひとつー、歌・欲(うたよく)!』
『♪あたしの歌をー、聞きなさい! 全国のお茶の間にー、うーたーをー!』
 スタジオ中にラブの歌が響き渡る。
 その声に影響されることなく、走る影ふたつ。
(ダリル、こっちでOK?)
(ああ。音響の中心は、そこだ)
 ダリルの指示した場所へと急ぐ、ルカルカとコードだった。
 そこは小さな録音用スタジオ。
 音声、音響スタッフに囲まれて女王のように歌っているのは、ラブだった。
「あなたが混乱の大元ね。覚悟っ!」
『♪いやぁん、このさいこーパワー、誰が無くすもんですかー!』
 歌いだすラブ。
 しかしルカルカたちは精神結界発生装置によって(あと耳栓によって)歌声は効かない。
 そのままラブを打とうとするルカルカだが、意外にも苦戦する。
 何しろラブは全長30センチ。
 捕捉は、できる。
 だがダメージを与えず絶妙な手加減で打つのが非常に難しかったのだ。
 ルカルカの攻撃をひらりと躱すラブ。
 しかし、それは彼女達の罠だった。
「爆ぜろ!」
 コアの声に、ラブの足元近くに転がったボールが反応する。
 ボールが白く光る。
「きゃ……」
 ゴーン!
 ボールに装填された雷がラブを打った。
「あ、あれ、あたしは……」
「大丈夫? 煩悩はもう去っていったわよ!」
「ぼ……煩悩? いえいえいえ、この蒼空学園最強アイドル(自称)のラブちゃんが、煩悩ごときに負けるわけないじゃない!」
「結構負けてたけど」
「違うもん、あれはホンネ! ……って、こうしちゃいられないわ、早く舞台に行って歌わなきゃ!」
「がんばってねー!」
 会話もそこそこに走り出すラブ。
 応援ヨロシク! と手を振る彼女にルカルカも黙って手を降り返した。

   ◇◇◇

 舞台に並ぶ、アイドルたち。
 ネージュと雪乃は微笑み、結和と歌菜に促されセレアナもひきつりながら笑顔
を見せる。
 美雪はいつものキャラとは違うゆるふわなレースのついた衣装を恥ずかしそうに纏う。はだけた衣装でよろめきながら歌うのは、咲耶。
 雅羅と沙良、璃良が3人声を合わせ、その後ろで夢悠が恥ずかしそうに唱和する。
 そしてラブは胸を張り、誰よりも大きな声で歌う。
 観客席ではセレンフィリティが隣の剛太郎たちに当たるのも気づかずうちわを振りまくり、それを小鳥たちが笑って見ている。

 スタジオに、そしてお茶の間にKKY108たちアイドルの歌声が流れる。
 それは気のせいか、この一年で最もスッキリした歌声だった。

担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 あけましておめでとうございます。
「煩悩×アイドル」を執筆させていただきました、年末年始の特番はひたすらお笑いの、こみか、と申します。
 年末の風物詩にお付き合いくださいまして、どうもありがとうございました。
 こちらで多少なりスッキリしていただければ幸いです。
 アクション期間中に年が明けてしまったため、アクションで年越しという方もいらっしゃったとか……ええと、お疲れ様です!
 煩悩を打つ方がたくさんいらっしゃったため、スムーズに煩悩を消すことができました。
 反面、煩悩の取りつかれる方は少な目だったため、取りつかれメインの方にはよりがんばっていただきました。
 愉快な煩悩が多くてすばらしかったです!

 アイドル、KKY108はまた機会があれば顔を出すこともあるかと思いますので、よろしくお願いします。
 そして、新たな年もまた皆様と一緒にここでお会いする機会がたくさんあることを祈っています。
 今年もよろしくお願いします。