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一月みんな揃ってのお誕生日会

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一月みんな揃ってのお誕生日会

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■ プレゼント・タイム ■



 さて。
 残されたのは、お待ちかね。待望のプレゼント・タイムだ。
 これが誕生日会一番のメインイベントだろう。
「正義のヒーロー、お誕生日会に颯爽登場!」
 虎のマスクを被った美羽が、同じく虎のマスクを被った大鋸と共に舞台に仁王立ちになった。決めポーズも決まっていて、子供達が「うおー!」と盛り上がる。
「みんなお誕生日おめでとう。お待たせさせちゃった子も居るかな? 心踊るプレゼントタイムだよ。しかもお年玉付き!」
 口上を皮切りに贈り物を抱えたプレゼント班が続々と室内に入ってきた。持ちきれないプレゼントも従者達がそれぞれメルヘンちっくな動きで運び込んでくる。
「さぁ、おいでー」
 美羽の手招きに子供達が舞台上に上がってきた。期待に満ち溢れた眼差しを受けて、美羽はプレゼントの一つを手に取った。
「中身は開けてからのお楽しみ。今は開けないで。皆で開けよう」
「なんだこれボロっちいの!」
 朋美からお手製襟巻きを手渡された男の子が叫んだ。空かさず隣に並んでいた女の子がその頭をはたく。
「なんでそんな文句言うの、お礼は? ありがとうって言うのよ!」
「ちぇっちぇ。偉そうに ……ありがとう」
 顔を赤らめてのぶっきらぼうな謝罪を受けて、朋美は、ああ、男の子特有の口の悪さかと気づいた。嬉しそうにしている姿に、作った甲斐があったと安堵に胸を撫で下ろす。そんな朋美の両肩によかったねと呟いたトメが両手を置いた。
 エースがぬいぐるみを引きずる女の子に赤い包み箱を差し出した。
「フェオルちゃん。お誕生日おめでとう」
「生まれて来てありがとう。おっきく元気に育ってね」
 照れてもごもごしている女の子にリリアは思いっきり抱きしめた。深く抱き竦められて幼子は真っ赤になってはにかんだ。その笑顔を見て、これ以外にもキャットシーやミャンルー、魔法のぬいぐるみが用意されてると知ったらどんなに驚いて喜んでくれるのかと、想像しリリアは微笑ましくなった。
「これで最後かな。よし、みんな全員にあたったかなー?」
 元気の良い返事が帰ってきて美羽は満足に一度大きく頷き、
「うんうん、よしよし。じゃぁ、開けちゃおう!」
 許可が降りて、子供達は一斉にリボンを解いた。
 プレゼントの中身が何なのかは本当にたくさんあった。
 包まれずリボンモチーフで贈り物と示した朋美の襟巻きは勿論、基本的な車のおもちゃやぬいぐるみ、ぬいぐるみはぬいぐるみでもゲーセンの景品だったり、組み立て前のイーグリット・アサルト、お人形にシャンバラ鉄道の模型、やっていない積みゲーと内容は多岐に渡った。誰が何を用意したのか判別がつかないようで、でもなんとなく贈り主の性格が中身に反映されている。
「みんナ」
 シーが絶叫までしている子供達に声をかけた。
「お礼は、どうシタ?」
 投げかけられた疑問に、静まり返った子供達はコントラクター達に向き直る。
「ありがとうございますッ!」
 大声を張り上げて子供達は一礼した。



 その後はもう、自由だった。残った料理を平らげたり、ケーキの取り合いを始めたり、ゆかりが残った材料で作った簡単なおやつを食べた子供はマリエッタと共に驚き、襟巻きが手作り品と知って裁縫に興味を持った子供が朋美とトメに作り方をせがんでいた。
 大英雄アガレスを囲い必殺技をリクエストする少年達にリースはハラハラし、女の子に囲まれたロレンツォとアリアンナは賛美歌を教え、すっかり気に入られたレオーナは男の子の手に引かれて彼の秘密基地に行こうとしてクレアに止められている。
 飾り輪を褒められた魔姫は不機嫌な顔で折り紙を持ち出し、エリスフィアとフローラの三人で急遽折り紙講座を開いた。
 今月に誕生日があると知ってお祝いするお祝いすると逸る子供達に圧倒されるジーナとコタローを眺め、樹と衛は見合うと互いに笑いながら肩を竦めた。
 トランプマジックを見せて貰いたいのか、天音の元にブルーズのチャイナドレス姿が気になりシーと見比べる友人を引き連れた子供が数人近寄った。
 同じ孤児院で暮らすという境遇の為か友人の如く打ち解けてパストライミと桃音は子供達に自分たちの遊びを教え、教えられていた。それをネージュと水穂は微笑ましく見守っている。
 沙夢と弥狐は人形遊びに付き合ってと女の子たちに右に左にと取り争われている。子供達の好奇心がすっかり他方に散って静かに椅子に座っていた大鋸に菊はお疲れと声をかけた。
 楽器を触りたがる子供に順番と理沙が自分のギターを見せていた。ノアとピノがタンバリンのリズムで童謡を歌い、チェルシーもそれに混ざった。すっかりお姉さんになった女の子の姿を見つけた鈴鹿は追憶に懐かしく目を細めていた。足元でイルがなぞなぞを出しては子供達を悩ませている。プレゼントを貰って、でもどう遊べばいいのかわからない子供に美羽はそれはこうやって遊ぶんだよと教え、見覚えのあるプレゼントに贈り主が誰かわかったベアトリーチェはただ微笑んだ。孤児院の外の花畑で少女達に花冠の作り方を教えているエースを見ていたリリアの頭に花冠が乗せられた。空を飛んでと騒ぐ子供にカルキノスは乗り気だ。小さな子どもにズボンを掴まれて接し方がわからず戸惑うダリルは、子供まみれのルカルカに困惑を指摘されて、一瞬言葉に詰まった。



 楽しい時間というのは矢のように過ぎゆくもので、
 日没はもうすぐそこだった。