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蒼フロ総選挙2023、その後に

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蒼フロ総選挙2023、その後に

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 ●薄日の温泉合宿



 総選挙の賞品として受け取ったギフト券を使って、神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)は合宿を行うことにした。
 アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)は、その合宿で手料理を皆にご馳走するのだという。
 優子は合宿の知らせを、仲間や友人、若葉分校生達に送ったのだった。

 そして当日――。
「ゼスター、合宿行こうぜー!」
 若葉分校に顔を出したシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は、喫茶店で駄弁っていたゼスタに声をかけた。
「ああ、神楽崎の合宿か。お前も行くのか……俺は別にいかなくてもいいんだけど」
「うん、オレも別にお前がこなくてもいいけど」
「あっそ」
 ぷいっとゼスタは顔をそむける。
「……ということなんだけど、サビク」
 シリウスはサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)に目を向けた。
 サビクが声をかけてあげようと言うから、シリウスはゼスタに声をかけたのだ。
 それだけの理由だ。他意はなくもない気もするが。
「人手は多い方がいいしさぁ、これから教職につくなら一部に根強い『胡散臭いヤツ』って評価を払っておくのもいいんじゃない?」
 サビクがそう言うと、ゼスタは少し不満気な顔を向けてくる。
「俺のどこが胡散臭いんだよ。天真爛漫明朗闊達だろうが、俺は〜」
「アレナちゃんも手料理振る舞ってくれるそうだよー」
「……」
 元気な返事は返ってこず、やっぱりゼスタはなんか不機嫌そうだ。
 サビクにはゼスタが拗ねているように見えた。
「んー」
 シリウスがゼスタに近づく。
「またどうせアレナや優子にちょっかい出しそうだし……でも誘わなくてもちょっかい出しそうだし。オレは来なくてもいいと思ってるけど、ええと、やっぱり来い!
 べ、別に呼ばれなかったらかわいそうだなー、とかそういうのじゃないんだからな!?」
「素直に俺に来てほしいって言えば、参加してやるのによ、お前も、神楽崎達も」
 ため息交じりにゼスタはそう言った。
「いや、オレが来てほしいわけじゃないんだ、本当だ! そ、それにだな! お前春から百合園で教師っていうけど、いきなり大丈夫なのか?」
「教師の経験はお前よりはあると思うが」
「パラ実ではやってるそうだが、百合園は女子校だぜ、女子校? ほら、そういう予防……じゃない、予行演習とかも兼ねてだな。お互い教師としてっつーか、まとめ役としての訓練みたいな感じでさ」
「……」
「……お、お前なんぞに学ばせてもらうところなんかないと思うけどな!」
「だから」
 ふうと、ゼスタは大きなため息をつく。
「俺と一緒に合宿がしたいって、素直に言えよ。大体、今回の神楽崎主催の合宿は、元々俺が当時の東シャンバラ政府に任され、指揮をとった合宿だ。俺の方が責任を持って、長期間、大人数をまとめ上げている。今回の合宿で学ぶことなんてなんもないし、神楽崎なんて、足下にも及ばねぇよ」
「お、お前……」
 言葉を切った後、シリウスは真顔で言う。
それなのに、今回誘われなかったのか!?
「……っ」
 ガタン。
 ゼスタがテーブルに手を叩きつけて立ち上がった。
「その減らず口……塞いで喋れないようにしてやるッ」
 シリウスに近づくと、両肩を押さえてバンッと壁に押し付け、顔を近づける。
「ぎゃーっ。やめ、やめ、やめーぃ!!」
 シリウスはゼスタの口を押えて必死に抵抗する。
「……やれやれ、本当は合宿に行きたいのに、直接アレナちゃん達に誘われなかったから、拗ねてるってところかな。
 結構幼いところもあるんだね。もしかして意外と若い?」
 シリウスとゼスタの攻防を見ながら、サビクはくすっと笑みを漏らした。

○     ○     ○


 神楽崎優子が仲間達を率いて訪れたのは、ヒラニプラの東、ヴァイシャリーの南辺りにある岬付近の渓谷だ。
 シャンバラが東西に分かれていた頃に、合宿所として使った建物が近くに存在しており、若者達が作った温泉や脱衣所も残っていた。
「優子お姉様、アレナさん、この度は本当におめでとうございます☆
 やっぱりお二人は百合園の、いえ、シャンバラの誇りですっ」
 到着するなり、桜月 舞香(さくらづき・まいか)から優子に薔薇の花束が差し出される。
「優子先輩、アレナ先輩、この度はおめでとうございます☆
 お二人同率なんて凄いですね!
 まいちゃんも我が事のように喜んでたんですよ♪」
 パートナーの桜月 綾乃(さくらづき・あやの)は、アレナに花束を差し出した。
「ありがとう。こうして共に励んでくれる皆がいるお陰だ」
「はい、同率なんです。びっくりしました……嬉しいです。ありがとうございました」
 優子とアレナは、笑顔で舞香、綾乃から花束を受け取り、集まった人々に頭を下げた。
「それじゃ、お2人のお部屋、お掃除させていただきます! 一番景色の良い部屋にしましょう」
「いや、私達は入口に近い部屋でいいよ、警備しやすいし。部屋が足りないようなら、テントでも……」
「駄目です! 主賓を外に寝かせるなんて論外ですから! 警備なんかはあたし達がやりますっ」
 びしっとそう言い切ると、舞香は優子とアレナの部屋を2階の景色が良く見える部屋に決定し、綾乃と共に掃除に向かって行った。