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林 則徐(りん・そくじょ) マイト・レストレイド(まいと・れすとれいど) 朝倉 千歳(あさくら・ちとせ) イルマ・レスト(いるま・れすと)  



「地球のモノマネのエセ博物館で、まさか、コソ泥みたいなマネをするやつが俺以外にもいるなんて驚いたな」

「コソ泥だろうとなんだろうと、捜査のためなら努力は惜しまん。
私は、林則徐。
きみたち父子がよくご存知の、マジェー地球間の麻薬密輸を調べている捜査官だ。
きみはあそこでなにをしていた。
デュヴィーン館長はどこにいる」

林と一緒に天井裏からおりた俺は、ブラッドリーのボケが手もみしながら、林に提供した応接室で、捜査官様にお取調べを受けた。

「麻薬密輸なんて俺は関係ない。
アーヴィンはどうだかな。父と子でも俺は養子だし、あいつのすることをいちいち知るかよ。
デュヴィーンのブタ野郎が昼間から仕事をさぼって、部屋で女と遊んでんじゃないかと思って、様子をみるために天井裏にいたんだ。
ところが野郎も女もいなかった。
あいつがどこにいるのか教えて欲しいのは、俺のほうだぜ」

「信じて欲しければ、きみの話を信じてやってもいい。
しかし、麻薬密輸の件で、きみが私に嘘をついているのなら、嘘が露見した時、最悪、私はきみを焼却する」

白手袋をした林の右手が炎に包まれた。
こいつは、炎をだしたり消したり、自由自在に操れるらしい。

「デュヴィーンはキャロルって娼婦とどっかで遊んでるはずだ。
キャロルは俺より若い小娘で、未成年ってやつだろ。
麻薬なんてなくても、デュヴィーンはこの件だけでも引っ張れないか」

「別件逮捕か。
すまんが私は麻薬捜査官だ。しかも、マジェでは売春は禁止されてはいない。
互いに同意のもとなら、幼、少女のそれもここのヤードは大目にみているのだろう。
観光資源の1つでもあるようだ。
鷹揚なことだな。
私の個人的な意見だが、きみよりも若いキャロルとは、男爵の娘のキャロル・デュヴィーンではないのか。
天井裏までのぞきにゆくとなると、きみは彼らの近親相姦の現場でも目撃したいのか」

「キャロルが、男爵の娘だって。
ほんとかよ。あんな娘が、ブタ男爵の子供だなんて」

「子供は親を選べん。またその逆もしかりだ。
きみはキャロル・デュヴィーンについて知っているのか」

「知らねぇよ」

林はずっと無表情で、こっちがどこまでからかわれているのか、まるでわからない。

「リンさん。なにかわかったか」

ドアが開くと、トレンチコートをはおった、いかにも刑事風の男が入ってきた。
男は、林の真向かい椅子にいる俺を眺め、

「はじめまして、俺は、スコットランドヤードのマイト・レストレイドだ。
きみはたしか、家具職人の息子の」

「ああ。オリバーだよ。おまえら、どいつもこいつも、知らない間に俺のことまで調べてやがって、薄気味悪い連中だな」

「天井裏に潜んでいたので、身柄を確保して事情聴収を行っている。
証拠品を探して私が探索していた時に、たまたま出会ったのだよ。
いまのところ、彼は密輸事件とは関係ないらしい。
デュヴィーン男爵の娘のキャロルに興味があるようだ」

「悪かったな。その通りだ。俺は、麻薬なんかとは、まったく関係ない。
だから、もう解放してくれよ。いいだろ」

席を立った俺の肩に、マイトが手をかけた。

「今回のこの事件は、根深く大きい。
いまはまだいいが、隠されているものが、いざ表にでてきた時には、多くの被害者を生むかもしれない。
きみも身の安全に、気をつくてくれ。
それから現段階ではお義父さんには、くれぐれも」

「ジジイとは、仕事以外は口なんかきかねぇよ」

俺は、マイトの手を振り払った。
林もマイトも絵に描いたような警察の犬どもだ。側にいると、クソをだしたくなって、尻の穴がムズムズしてくる。
俺が部屋をでかけた時、入れ替わりに、さっき館長室にいた女どもが入ってきた。
メイドと東洋人の2人だ。

「イルマさん。千歳さん」

出迎えるマイトの声が緩んでやがる。野郎、女のどっちかにホレてるのか。いい加減にしやがれ。
俺は後ろ手で応接室のドアを閉めた。

「マイトさん。実は、館長の部屋の隠し金庫から、こんなリストを見つけたので撮影したのですが、顧客名簿と贋作の受注リストではないでしょうか」

もれてくるメイドの声を聞きながら、俺は博物館を後にした。