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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
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リアクション


今日はハロウィン・3


「これがハロウィンサブレでありますか。早速使うでありますよ!」
「うむ」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)は迷う事無くハロウィンサブレを使用した。
 途端、
「これは死神でありますな」
 可愛らしさなど一片も無い恐怖の化身にしか見えぬ死神の姿となった吹雪。
「この姿であれば存分に恐怖を与えられるであろう」
 イングラハムはいつもの蛸な姿ではあるが、魔の海を住み家にしていそうな洒落にならぬほどの凶悪さが付加されていた。
「今日はハロウィン。先手必勝、双子に悪戯するでありますよ!」
 吹雪の目的はただ一つ。いつもの双子との因縁を楽しむ事である。
 そのためには準備が必要。
「まずは絶好の場所を探すであります!」
 準備一つ目は、悪戯に最適な場所を見つける事。
「絶好の場所、か。ならば、穴を掘るのかどこかの部屋にするのか。こう人が多い所はまずかろう。相手が相手だけに」
 イングラハムは行き交う参加者達を目で追いながら提言。
「では、人通りの無い場所で穴を掘るでありますよ! 早速探しに行くであります」
 吹雪は人通りの少ない場所を求めて歩き出した。
 そして、すぐに最適な場所は見つかりあっという間に穴を掘り終えた。

 吹雪達の悪戯現場。

「準備は完了であります! 今日はハロウィンなのでお仕置きではなく悪戯をするであります」
 吹雪は満足げに穴を眺めた。本日するのは、ハロウィンのためお仕置きではなく悪戯である。ただし、一切容赦はしない。
「それでどうするのだ」
 イングラハムは穴を覗きながらこの先の作戦を訊ねた。
「悪戯が成功した時を狙い自分がこの穴に引きずり込むので穴で待機でありますよ」
 吹雪は死神定番の鎌ではなく、鎖であるテンプテートチェーンを手にイングラハムに指示を出す。
「うむ、心待ちに待機をしよう」
 そう言うなりイングラハムは穴に入り、『ナノマシン拡散』を使用して不可視状態で待機。最高の演出で双子を迎えるために。
「では、双子を連れて来るでありますよ!」
 吹雪は早速双子を捜しに行った。ちなみに『隠形の術』で身を隠しながら。

 双子捜索を開始してすぐ。
「へへへ、上手く行ったな」
「ハロウィンサイコー」
 ルカルカ達への悪戯が成功して上機嫌な双子が通りを歩いていた。
「今が絶好のチャンスでありますな。行くでありますよ」
 発見した吹雪は絶好の機会遭遇に大喜び。

 そして、『隠形の術』で身を隠しながら双子の背後に接近してから
「Trick or Treat!!!!!」
 声高に声をかけて呼び止めた。
 双子は背後からの声に足を止め、
「こ、この声は……」
「ま、まさか……」
 聞き覚えのある声に振り返る前に吹雪のテンプテートチェーンが足に絡みつく。
「うぉお、離せよーーーーー」
「何するんだーーーー」
 鎖を解こうとするも解けない上にバランスを崩した双子はその場に倒れてしまう。
「自分は死神でありますので素敵な場所に案内するでありますよ」
 吹雪は不敵な笑みを浮かべながらテンプテートチェーンを引っ張って恐怖の穴へと案内する。幸運な事に素敵な穴はすぐそこだったりする。
「お、お菓子をやるから」
「しかも何で鎖なんだよ。死神って言ったら普通鎌だろ」
 双子は必死に自由のために抵抗する。
「お菓子は遠慮するであります。鎖なのは気にする必要は無いでありますよ」
 双子を知る吹雪には抵抗など通用しない。粛々と悪戯は続けられる。
 抵抗する間もどんどんと穴に近付き、
「おわぁ、何だよあの穴」
「嫌な予感がするぞー」
 目に映る嫌な予感しかしない穴に怯える双子。
「ようこそ、素敵な蛸穴へ」
 吹雪は双子にとっては怯えしか感じられない笑みを浮かべて迎えるのだった。
「た、蛸って」
「ま、まさか」
 蛸という単語から双子はある人物を頭に浮かべた。
 すぐにそれが正解である事を知る。
「ハッピーハロウィン!!!」
 挨拶と共に吹雪は双子を穴へと一気に引きずり込んだ。

 穴。

「……真っ暗だ」
「何もいないな」
 悪戯はまだだというのに胸に迫る嫌な予感に双子の顔はすでに怯え一色。
 姿を目視できない状態にしていたイングラハムは
「ハッピーハロウィン」
 挨拶と共に『ナノマシン拡散』を解除し、恐怖の塊たる姿を晒した。
「!!!!」
 双子は突然出現したイングラハムの姿に顔を青くして硬直。
「よくぞ、来た。たっぷりと悪戯を味わって頂こう」
 そう言いながら大量の触手をゆっくりと双子に絡ませて接近。
 まだ青いながらも我に戻った双子は危機を逃れようとするも
「ちょ、来るなーー」
「う、動けねぇ」
 テンプテートチェーンとイングラハムの『グラビティコントロール』で双子の周囲の重力を操り動きを奪っている。
 本当の恐怖は
「……ハッピー……ハロウィン」
 イングラハムが双子に超接近してからだった。
 ここから恐怖の悪戯は始まった。
 穴から聞こえるのは
「おわあぁぁぁぁぁぁ」
 双子の絶叫。
 しかし、その悲鳴もすぐに聞こえなくなり
「……気絶したでありますな」
 あまりの恐怖に気絶してしまった。
 双子の確認を終えた吹雪はテンプテートチェーンを解いた。悪戯成功に大変満足そうであった。
「無事に成功だ」
 当然、イングラハムも満足そのものであった。

「理知に誘われて来たが、予想以上に賑やかだな」
 辻永 理知(つじなが・りち)に誘われやって来た辻永 翔(つじなが・しょう)はどこもかしこもモンスターで溢れる通りに声を上げた。
「でしょ。街だけじゃなくて夜空も花火が上がって綺麗でこっちも楽しくなるよね。早速、私達もハロウィンサブレで変身して混じろう」
 理知は夜空を見上げた後、ハロウィンサブレを配布しているスタッフを指さしながら言った。眺めるのはやめて早く自分達もこの賑やかさに参加するために。
 辻永夫婦はハロウィンサブレを貰いに行った。

 ハロウィンサブレを貰った後。
「ハロウィンサブレ美味しいね」
「これでハロウィンにピッタリの姿になるんだよな」
 理知と翔は仲良くハロウィンサブレを美味しく食べていた。
 そして、あっという間に姿は早変わり。
「わぁ、魔女に変身したよ。しかも何か色っぽい。どうかな?」
 理知は色っぽい魔女服に身を包んだ姿になった。思わずくるりとその場で一回り。
「いいんじゃないか」
 理知の変身した姿を見て少しだけ照れ気味の翔。
「ありがとう。翔くんは吸血鬼だね」
 にこり笑う顔がまた可愛い理知。
「ハロウィン定番だな。極端におかしな物じゃないしいいかな」
 翔は自分の姿を確認しながら一言。
「似合ってるし素敵だと思うよ。そうだ! ちょっと真似してみよう」
 理知は何かを閃いたのか両手を叩いた。
「理知?」
 分からないのは翔だけ。
「ほら、吸血鬼と言えば……」
 理知が首筋を見せると
「あぁ、それか」
 翔は察し、噛んで血を吸う真似をしてみる。
「こんな感じか」
「何か本物っぽいね!」
 夫婦がこうして仲良く戯れている所に
「トリック・オア・トリート!」
 吹雪達の悪戯から何とか生還した陽気な双子が登場。
「ハッピーハロウィン!」
 理知は噛まれ役状態のまま挨拶を返した。
「おいおい、何してるんだよ」
 ヒスミが思わずツッコミを入れた。
「……お食事中?」
 天然の理知はしばし考えた後、真面目に答えるのだった。
「そりゃそうだけど、真面目に答えられてもなぁ」
 適当に流されると思っていた事に返答があると思わなかったヒスミは少し調子が狂わされた。
「で、話を元に戻すけど……トリック・オア・トリート!」
 キスミが脱線した話を元に戻す。
「ほら、持って行け」
「私もあげるよ」
 翔と理知はそれぞれ双子にお菓子をあげた。
「おう、サンキュー」
「ヒスミ、次行くぞ!」
 双子は菓子を貰い終えるなり風のように次の相手を求めて走り去った。

「ハロウィンって感じだな」
 翔は賑やかな双子を見送りながらぽつり。
「そうだね。そう言えば、ホラーカフェがあるって聞いたよ。この姿にピッタリだし行ってみよう?」
 理知はふとハロウィンサブレを貰う際に耳にしたカフェを口にした。
「そうだな。本格的に街を歩き回る前に腹ごしらえをした方がいいだろうし」
 翔は即理知の提案に賛成した。
「それじゃ、本当のお食事中になりに行こう」
 理知は軽く悪戯な笑みを浮かべた。
 そして、二人はホラーカフェに向かった。

 ホラーなオープンカフェ。

「私は魔女だから不思議な色のスープとか飲んでみたいかも。翔くんは?」
 理知は迷いなくメニューを決定。
「俺もこの姿にピッタリな物にするかな。トマト料理とか」
 翔もまた理知と同じ理由で料理を決めた。
「赤い料理だね。何か似合ってるかも」
 と理知の一言。
 すぐに料理を注文した。料理が来るまで理知と翔は楽しそうに食事が終わった後の予定をお喋りしていた。

 料理が運ばれると見た目の感想を洩らすのだった。
「昔話でよく出て来る魔女のお婆さんの呪い途中の鍋って感じだね」
 理知の料理は紫や濃い緑色のぐつぐつと音を立てるスープに具は髑髏の形をした味が染みた大根とか指の形をしたウィンナーが入っていた。
「見た目で考えると味は不味いの確定だけど……というか俺のもそうだよな」
 翔は理知のスープや自分の吸血鬼セットを見たりして食欲減退する物ばかりだと思ったり。
「トマトジュースはやっぱり鉄板だね」
 理知はワインのように優雅なグラスに入ったトマトージュースを見て一言。
「どこぞの吸血鬼の紳士の晩餐という感じかな。しかも、赤ばっかり」
 翔はどれもこれもトマトなどの赤い食材が混入している料理をざっと見て理知と同じく例える。
 何かと言いながらも二人は一口。
「美味しい!」
「こっちもだ」
 見た目に反して美味しい事に感動する理知と翔。
 少しの間、自分の料理を楽しんでいたが、
「……」
 理知は翔の料理をちらり。
「理知、食べてみるか?」
 視線に気付いた翔は声をかけた。
「うん。翔くんも私の食べる?」
 理知はにこにこしながら誘う。
「あぁ、どんな味か少し興味はある。見た目が俺のより酷いから余計に」
 翔もまた同じく興味を持っていた。何せスープも自分の料理に負けず見た目エグイのでどんな美味しい味がするのかと。
 今度は交換して互いの料理を一口。
「トマトたっぷりで栄養があっていいね。味もいいし」
「具がいちいち悪い方に凝っているが味はいいな」
 理知と翔はこれまた美味しい感想を口にした。
 再び自分の料理に戻るなりあっという間に食べ終え、理知達はハロウィンを楽しむべくあちこち歩き回った。