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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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第一章

 イルミンスールでの戦いより数日後 某所

 エッシェンバッハ派の拠点と思しき場所。
 未だここがどこだかわからないまま、ティー・ティー(てぃー・てぃー)はあてがわれた部屋にいた。
 ベッドに腰かけていたティーは、ノックの音にはっとなって顔を上げる。
 
「ど、どうぞっ!」
 ほどなくして入ってきたのは航だった。
「羽鳥さん……」
 そっと横に動き、ベッドにできたスペースを手で示すティー。
 ほんの僅かに逡巡した後、航はティーの横に腰かけた。
 
「約束、果たしにきたぜ」
 落ち着いた声で航はそう告げる。
「覚えてて、くれたんですね」
「まぁ、な。『女の子とした約束は何があっても守りなさい』って理沙にうるさく言われてるんだよ」
 小さく笑いをこぼすティー。
 それを見た航も小さく笑う。
「この前は帰投するなり賢志郎のことがあったから、そのゴタゴタで後回しになっちまったし、な」
「でも、いいんですか……?」
「約束は約束だしな。それに――」
「それに……?」
「お前になら話しても良いと思ったんだよ。ティー、お前になら――な」
 小さく頷くティー。
 ややあってティーは決意を固めた表情で再び頷く。
「ありがとう……ございます。なら、私に聞かせて、ください……」
 瞳に力強さを宿し、ティーは航の手をそっと握った。
 
「やっぱり使うのか? インファントプレイヤー……だっけか」
「嘘をつくとは欠片も思ってません。けど、感情を直接に感じ取りながら聞きたいんです。あなたの、怒りや嘆き、悔やみ……憎しみの理由を、って思って。だから……」
「構わねぇよ。お前になら話しても良いって言った以上、使うななんて言うつもりはねぇ」
「羽鳥さん……」

「『偽りの大敵事件のことは知ってるだろ?」
「はい……」
「――最初は何が起こったかわからなかった。ただわかったのは、周りを見回しても、息をしてるのは俺だけだったってことだけだ」
「……」
「その後で、俺以外にも理沙や来里人みたいに生き残った奴がいるってことを知った。そんでもって、俺たちはスミスと出会った」
「スミス……さん。イコンを開発してる……あの人と」
「ああ。それで俺達は事件の全貌を聞かされた。その時思ったよ。こんな理不尽があっていいのか、って。俺も含めてあの場にいた連中は、殆どがただイコンを見に来ただけのただの……フツーの人間だった。なのに――」
「……」
「それと同時に、徹底的にぶっ潰してやろうと思った。こんな理不尽を強いた九校連を――」
 
 語りながら航が当時のことを深く思いだしたせいだろう。
 凄まじく激しい怒りと憎しみ、そして悲しみが奔流となってティーの心へとなだれ込む。
 膨大な負の感情が一瞬にしてなだれ込み、ティーの身体は自然と震えだした。
 ティーの意志とは無関係に涙が流れ出し、身体は更に震え、呼吸も苦しくなる。
 完全にあてられ、苦しげに喘ぐ中でティーの意識は霞んでいく――。