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木蔭のお茶とガーデニング

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木蔭のお茶とガーデニング

リアクション

「アイシャ、これを植えようかと思うんだが、どうすればいいかな?」
 アイシャの元に、不慣れな手つきで苗を抱えたリア・レオニス(りあ・れおにす)がやって来た。
 秋の花々を植えたいというリアは、ここに誘う時一緒に、ガーデニングに詳しいだろうとアイシャに秋の花を訊ねていた。アイシャが挙げた幾つもの秋の花の中からリアが選んだのは、キンギョソウとウインターコスモスだった。どちらも秋に植えるのに適した花だ。
 アイシャはその苗が何かは聞かずに――というのも、もう花が咲いていたから――可愛い花ですね、と微笑んで、適した場所を探すのを手伝った。
「秋は庭が殺風景になると言われるけど探せば身近にあるんだな」
 愛も幸せも身近にあるというメッセージを込めて言ったが、アイシャは花を見つめていて気づいていないようだ。
 それでもいいか、とリアはスコップを握って土を掘った。
 今まで入院中のアイシャに見舞いに行き、花も届けていたが、今度はきちんと地面から生えている花を植えたいと思ったのは、アイシャに花で喜んで欲しいと思ったからでもある。
(新しい命が根を下ろすのを感じたら、気持ちもグッと元気になるんじゃないかな)
 リアとしては、しかしそれだけではなくて。
(アイシャの人生を大地に根ざして始めよう。この花々のように……その傍らに俺が居られると嬉しいよ)
 愛を込めた思いではあったが、彼は口には出さなかった。
 だから、アイシャはただ土の量とか、水の上げ方とか、そんなことを楽しそうに話していた。
 作業を終えたリアは地面で風に揺れる花をアイシャと一緒に見つめる。
「キンギョソウの形、可愛いな。ウインターコスモスの黄色も眩しかったり……」
 秋に差し掛かって日差しは和らぎつつあった。花も草も枯れていく中で暫く綺麗に彩を補完してくれるだろう。
 しかし、リアの視線はつい花から逸れ――花を見ているアイシャの赤い瞳と、白い頬、そして零れ落ちる長い髪に吸い込まれていった。
 花の中で一番眩しく見えるのは、アイシャだった。彼女はふと顔を上げて不思議そうに小首をかしげる。
「……リア、どうしましたか?」
「あっ、君に見惚れて……じゃなくて、えっと、お茶にしようか」
 リアは誤魔化すように笑うと、オープンカフェにアイシャを案内した。
 守護天使がブレンドしたというハーブティーを飲むと、自然に心がほぐれていくような気がした。
 リアは、植えた花の話や、今度紅葉を見に行こうとか誘った。それから、ついこの前年を取ったことも。アイシャに喜んで貰いたいと飽きさせないように話題を変えて話していく。
「リアは先日が誕生日でしたね。おめでとう。お祝いが今頃になってごめんなさい」
「い、いや! 最高に幸せだよ」
(愛する人が自分を祝ってくれるんだから……)
 じーん、と幸せをかみしめているリアだったが、そうそう浸ってもいられない。
 花を植えることより、もっと大事なことがある。
「あの……アイシャ」
「何ですか?」
「これから、どうしたい?」
 女王としての責務から解放され、宮殿を去り、一人の少女となったアイシャ。リアは、彼女の望みが知りたかった。
「アイシャのしたいことに、俺も協力したいんだ」
 アイシャは顔を俯けると、暫く考えているそぶりをしていたが、顔を上げて、心の中にあるものを懐かしむような、愛しむような表情になった。
「具体的に何を……ということはないんです。ただ今まで家族がいなかったですから、家族と一緒に、何気ない日々を大切に過ごしていきたいです」
 一言一言かみしめるように言うアイシャに、リアは笑顔を向けた。
「そうか。聞かせてくれて有難うアイシャ。大好きだよ」

担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 有沢です。
 ご参加ありがとうございました。
 『蒼空のフロンティア』も残りわずか。私が9月中にリアクションを提出できますのはこれで最後かと思います。
 まだ、シナリオを出させていただく予定です。最後まで宜しくお願いいたします。

▼マスター個別コメント