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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair
アリサ・イン・ゲート -Rest Despair アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

リアクション

 ――空気が苦しい

 乾いた大地を潤すはずの雨雲はともに侵略の翼を携えてきた。
 近づく遠雷に重くなる空気がオリュンズの大地を覆う。
 それはひとつの戦いの幕開けの予兆を告げているに過ぎない。
 やがてここは息もできない戦いの海になるのだから。

 【ノース】は軍を編成し、オリュンズに向けて航空部隊を投入した。
 目的はオリュンズに設置されているゲート装置の奪取、および地球への侵攻に伴う第一次斥候奇襲作戦。
 消滅し続ける領土と難民救済という名の元、体の良い放逐場所を得るため。そして、新たな属領を得るためのこの作戦だが、立案者のロキス・ワーグナーの思惑は誰も知らず、部隊を預かる将軍トールズ・ルートヴィッヒですら救国の勅命と信じて疑わない。
 確かに【ノース】にとってはそしてその国民にすればこの作戦は彼らが生き延びるための現在もっとも有効な方法に思えた。何よりも「彼らが外世界から来た」という事実が、侵略する土地の道標になっていたと言いえる。
 そしてなによりも、民族主義、民主差別主義、他民族排除主義の国民性が侵略という手段を是としていた。
 この侵略作戦に対し、【グリーク】が防衛作戦を行う理由は、かねてからのパラミタとの友好関係が【ノース】よりあるからではなく、守備位置的問題があったからだ。
 オリュンズは現在【ノース】と【グリーク】の国境線の真下にある。国家が滅んでからオリュンズは地理的関係からどちらの国にも属さない土地になってはいたが、未だ機能し続ける都市と放置された軍事施設があり、これらを【ノース】に抑えられた場合、後々になって二方向侵略作戦をされるおそれがある。なにより、空路しか許されぬ島となった今ではここは要塞の体を冠する重要拠点にもなりかねなかった。
 このオリュンズを争って双国が軍事的衝突が起きるのは時間の問題だったのだ。
 そして彼らは奇しくもこの戦いに巻き込まれた事になる。

 作戦実行中において、いかなる状況になろうとも軍務を放棄することは出来ない。それは例え行きずりの者であってもだ。
 彼らは対外的には協力者という名目だが、契約上は雇われた傭兵ということになっている。つまり、守備防衛する事態になった現在、軍の式に従いこれに従わざるをえない。
 だがこの状況下において、彼らには幸いにも基地を【ノース】軍に先んじて抑えられたことと、イコンを持参していたこと。この二つの戦力的優位性があった。
 イコンの運用と整備補給はオベリスク奪取作戦時において、トロイア基地にその設備がある。そして基地の火器系統は対空防衛に特化しており、遠方より飛んでくる敵に対しては圧倒的有利にある。
「敵機射程内に補足。距離5000、アローヘッドですわ」
 梓が土佐のCICより入電。敵位置と陣形を知らせる。
 亮一が航空部隊の第一攻撃部隊として戦端を開く。
「第一次攻撃隊。遠距離攻撃開始、主砲71cm連装砲発射!」
 攻撃はまず物理火器による超遠距離戦から始まった。航空艦隊による砲撃戦に始まり、敵が距離を詰めてくるに連れて、基地装備の地対空誘導ミサイル、レーザー砲による艦隊戦に変わっていく。
 特攻陣形の【ノース】軍は【グリーク】軍都の距離が短くなるに連れて、陣形をハンマーヘッドに変え前面広範囲での砲撃戦になった。
 一進一退の攻防に入ると、ロボット部隊の投入。地上にも歩兵機が降り近距離戦が開始された。
 彼らの中では蛇々のライネックスとシヴァの{ICN0004078#フィーニクス・NX/H}が空戦部隊として動員されていた。
 対して敵の空戦部隊はスズメバチと呼ばれる黄色の機体が大量に導入されている。中距離射撃に優れたRD社製だ。
 対空機関砲の雨が地上から注ぐ中、戦艦と戦艦の間で衝突する。
 ライネックスは【ビームサーベル】とワイヤーロープによる近接戦闘で応戦し、フィーニクス・NX/Hは中距離戦でのツインレーザーライフで応戦した。
 部隊後方支援としてコルセアの伊勢が待機しイコン及びバーデュナミスの補給艦役目をしていた。
 館内整備用ドッグでは吹雪「忙しいであります! 忙しいであります!!」と慌ただしく整備に駆けまわり、      も黙々と補給に追われていた。
 地理的優位性とそれを圧倒しようとする物量。
 戦いは長くなりそうだった。