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賑やかな秋の祭り

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賑やかな秋の祭り
賑やかな秋の祭り 賑やかな秋の祭り

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■朝・祭りを楽しむ者達


 イルミンスールの町。

「随分、賑やかな祭りねぇ」
「そうねぇ、どこもかしこも浮かれている人達ばかり。というかあたし達もその一人かも」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は賑やかな祭りの光景を眺めていた。
「そう言えば、主催はあの二人だったわね」
「この紅葉や銀杏を降らせる装置はあの二人の発明で今回は許可が下りたというけど」
 ゆかりとマリエッタは頭上から降り注ぐ秋に和むも顔見知りの双子が関わっている事に警戒の色。
 しかし
「まぁ、大丈夫でしょ。何かあっても誰かが対応するだろうし」
「そうね。それであたし達はどうする? 何か食べる?」
 ゆかりとマリエッタはすぐに調子を戻し祭りを楽しむ事に集中する。何せ二人を知るため慣れているのだ。
 ここで
「ところでカーリー、あの二人はまだかしらね」
 マリエッタは祭りを楽しむ仲間としてあと二人まだ来ていない事に気付いた。
「そうねぇ、折角だからまた会って一緒に過ごそうと思ったのだけど」
 ゆかりがそう言った時
「……元気そうね」
「お誘いありがとう」
 知った声、平行世界のゆかりとマリエッタが現れた。
「……お久しぶり」
「元気そうね(しかも変わらずのプロポーション)」
 ゆかりとマリエッタはそれぞれ招待客を快く迎えた。ただしマリエッタは笑顔の裏で170cmを越えるグラビアアイドルの向こうの自分を羨望の眼差しで見上げていた。
「積もる話は秋を楽しみながらしましょう」
 ゆかりのこの提案によっていつまでもここに突っ立っているのをやめて屋台を冷やかしたり秋の味覚のお菓子を買って食べ歩いたりと祭りを楽しむ事に。

 祭り楽しみ中。
「確か医学生だったわよね。相変わらず忙しい?」
「えぇ、毎日忙しいわ。でも自分の夢を実現するためと思えば大した事ないわ。むしろ忙しい方が自分を成長させると思うし」
「……そうね。あなたならきっとなれるわね。この先大変な事があったとしても諦めないんでしょ」
 ゆかりと医学生ゆかりは先程購入したお菓子を食べながら近況を報告。まずは医学生の方から。
 そしてお次は
「その通りよ。そっちはどう?」
「こっちは……」
 医学生ゆかりとゆかりはこちらの近況報告を。大変な騒ぎから夏最後に楽しんだ温泉とバラエティに富んだ報告であった。
「なかなか大変だったのね。でも夏最後に妖怪の山で温泉というのはいいわね。少し羨ましいわ。休みも勉強やら論文作成で忙しいから」
 ゆかりの報告を聞いた医学生ゆかりは少しだけ羨望。よほど忙しいらしい。
「休める時には休まないと体に悪いわよ。医者の不養生という言葉があるのだから」
「心配してくれてありがとう……でもおかしなものね。自分に心配されるというのは」
 ゆかりの気遣いに思わず医学生ゆかりは吹き出した。まさか自分に心配されるとは。笑わずにはいられない。
「そうね。でも今日は勉強の事を忘れてたっぷりと楽しんで頂戴」
 ゆかりはつられてクスリと笑んだ。

 一方。
「……お祭りを自分と楽しむというのは悪くないわね」
 グラビアアイドルマリエッタはお菓子を食べながら祭りに浮かれる町を見るなり隣のマリエッタに笑んだ。
「えぇ(何度見ても素晴らしいプロポーション……前に色々励ましてくれたけれど、やっぱり……こんな見た目も体型も女子中学生よりは羨ましい……周囲の視線全て彼女に釘付けだし)」
 うなずくマリエッタは隣のグラビアアイドルマリエッタの相変わらずの魅惑的なプロポーションが服の上からも判るような素晴らしい女体美が隠されており、周囲の視線が全てそれに注がれている事に気付き、胸中で激しく落ち込んでいた。
 とにもかくにもそれぞれの思いを抱きながら四人は祭りを楽しんだ。

「……しかし、本当幻想的ね。紅葉に銀杏が降って来るなんて……秋らしい美しい音楽に踊り……」
 医学生ゆかりは秋の風情に歌い踊る人々を眺めて楽しんでいたかと思いきや
「……」
 にこぉとゆかりに笑いかけるなりぱっと前に飛び出し、
「♪♪♪♪」
 秋が舞い降る中、踊る医学生ゆかりのステップは相当に優雅でまるでバレエダンサーのようなしなやかな動きで踊り出した。
「ちょっと、一体……」
 医学生ゆかりに声をかけようとしてゆかりはあまりの美しさに言葉を飲み込んだ。
「♪♪♪♪」
 ただ美しいだけでなく紅葉の舞い散る風情の儚さを繊細な仕草で表現したりと細かな動きにまで神経が通い、まるでプロのダンサーのようである。
「……(自分が踊るのを見て感動するなんて……でも本当に綺麗)」
「……(綺麗)」
 ゆかりとマリエッタは完全に医学生ゆかりの踊りに心吸い込まれた。
 ゆかりが言葉を発したのは踊りが一段落してからだった。

 踊りが終わるなり
「ねぇ、さっきの踊りどこで覚えたの?」
 ゆかりは戻って来た医学生ゆかりに訊ねた。
 その返答は
「即興よ」
 というあまりにも簡潔な一言だった。
「……即興って」
 驚きの答えにゆかりは何とも言えぬ様子であったが、
「ほら、折角の祭りなんだから楽しみましょう」
 医学生ゆかりのこの誘いに
「それもそうね。いいわ、付き合うわよ」
 何となくやる気になり共に踊る事に。

 一方。
「あたし達も踊ろう」
 グラビアアイドルマリエッタはそう言うなりマリエッタの手を引っ張って踊るゆかり達に加わった。
「え、えぇ」
 マリエッタは戸惑いつつも手を振りほどく事無くそのまま付いて行き、踊る事に。

 踊り始めて。
「♪♪」
 心底楽しそうなグラビアアイドルマリエッタ。
「……(……はぁ、同じ自分なのに残酷)」
 強力なコンプレックスを抱きつつも共に踊るマリエッタはちらりと平行世界の自分に目を向け、形良く大きな胸が躍る度にたゆんたゆんと揺れる様にますます落ち込んでしまうが、決して表面には出さない。
 しかし、
「……(もう、決めた。踊るわよ。踊って踊ってひたすら踊り明かせばきっとコンプレックスも吹き飛ぶ)」
 その鬱屈とした思いは踊りにぶつけ豪快に踊りまくった。
「……(マリー達も乗って来たわね)」
 ゆかりはちらりとマリエッタ達を見るなり特に豪快で激しいマリエッタの踊りにクスリとしつつ踊りを続けた。
 この後、二人のゆかりと二人のマリエッタは日々の鬱憤を吹っ飛ばすかのように優雅で時に豪快に踊って踊ったという。