リアクション
人気のない山道を、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)とマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が歩いていた。 ◆ 「さむくなってきたね」 「そうですわね」 天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)はイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)と、結奈の家でお家デートをしていた。 二人は暖かな部屋にたくさんお菓子を用意して、恋愛映画を見ている。 「けれど、こうしていると暖かいですわ」 結奈を膝の上に乗せているイングリットは、映画に視線を向けながら結奈の手をそっと握った。 「えへへ、あったかいね」 結奈もお菓子に手を伸ばしながら、幸せそうに笑う。 画面の中には、ヒロインがキスをするロマンチックな場面が映っている。 「いんぐりっとちゃん、ちゅーしよ」 結奈におねだりする。 イングリットは画面から目を離して、結奈にそっとキスをする。 「ふふ」 映画のシーンと自分たちが重なり、思わず笑みを零すイングリット。 結奈も笑顔を向けて、もう一度イングリットにキスをした。 「暖かいですわね」 「そうだねー」 それからも結奈とイングリットは、時折いちゃいちゃしながら映画を見ていたのだった。 ◆ ヒラニプラの山々の初霜、初冠雪のニュースが入ってくるようになる頃。 董 蓮華(ただす・れんげ)は自由な時間に、金 鋭峰(じん・るいふぉん)の元へ差し入れに向かっていた。 「失礼致します……」 蓮華が入室すると、鋭鋒は静かに視線を送った。 「差し入れをお持ちしました」 蓮華が持って来たのは、草加煎餅と淹れたての日本茶だ。 煎茶と共に渡して、蓮華は一歩下がり鋭鋒を見つめた。 こうして、今以上に鋭鋒と同じ時間を共有できたらどれほど嬉しいだろうか。 鋭鋒の手伝いをできたら嬉しい。 けれど、どこまでならしても良いのかが分からない。 「あの……」 蓮華は勇気を出して、鋭鋒に尋ねた。 「お手伝いさせてくださいませんか、何でもいいんです……」 非番の日に、鋭鋒の仕事をお手伝いする。 決裁済みの書類を文書室に持っていく。 次の予定のために上着の埃を取る……。 「こうして、差し入れをお持ちしたり、お茶を淹れたり、してもよろしいですか……?」 お茶を飲みながら蓮華の申し出を黙って聞いていた鋭鋒は、、ふっと視線を手元に落とした。 「そのくらいなら構わない」 鋭鋒の言葉を聞いて、蓮華の表情が晴れる。 小さく咳払いをして、鋭鋒は草加煎餅に手を伸ばした。 「そういえば、里帰りしたそうだな」 「はい。私の故郷である北京を、スティンガーたちに紹介してきました」 「その時の話でも聞かせてくれ」 蓮華は中国の様子を話した。 鋭鋒は黙って、蓮華の話を聞いていた。 「……懐かしむべきものが無いわけでもないが、面倒なことが多い」 鋭鋒は蓮華の話を聞きながら、ゆったりと休息を取った。 蓮華にとっても、鋭鋒が寛げる時間を作れたことを嬉しく思うのだった。 |
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