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こどもたちのおしょうがつ

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こどもたちのおしょうがつ
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リアクション

 子供達用の寝室で。
「この本よんでください。よみにくくて」
 お外に出ずに、ずっと読書をしていた、たいさちゃん(毒島 大佐(ぶすじま・たいさ))は、お隣の女の子に本を出しだした。
「お家の中で見つけた本です。ここから先のないようがしりたいんです。こいのお話です」
「え……。これって」
 その女の子はたいさちゃんから渡された本を手に目を見開いた。
「わたしのにっきー! ダメーっ」
 隣の女の子――子供化したリーアちゃんは、たいさちゃんが持ち出していた自分の昔の日記をぎゅっと抱きしめた。
「続きが気になるので返してください」
「ダメー、見ちゃダメなのなの!」
「そうですか……」
 リーアちゃんが読んでくれないので、たいさちゃんは諦めてこれまでのストーリーを思い出すことにする。
「しゅぞくのちがいから、はなればなれになった2人。彼は主人公の彼女とはなれているあいだに、びょうきでしんでしまいます。そして、少女は……」
「やめやめやめやめーっ!」
 リーアちゃんが、たいしゃちゃんの口を両手で塞ぐ。
「もごっ、ちがう本でもいいから、だれかよんでください。アーデルハイトさんだったら、読めそうですね」
 リーアちゃんを振りほどいて、大佐ちゃんは拝借してきたいくつかの本をアーデルハイトに渡す。
「こ、これは……」
 一番上にあった本は、やはりリーアちゃんの過去の日記帳だった。
「ダメーダメーっ!」
「わかっておる」
 アーデルハイトとしてもちょっと興味があったが、さすがに本人を前に開くわけにもいかず、リーアちゃんに返してあげた。
 そして、リーアの許可が得られた本を読み始める。
「材料、牛肉100グラム、豚肉100グラム、鶏肉100グラム、卵3個、油、塩、こしょう、酒……料理の本らしいのう。それにしても、肉ばっかりの変なメニューじゃのう」
「へんとはなによー。にくばっかりりょうりおいしいのよー!」
 リーアちゃんがむきーっと反論する。
 ごめんごめんと謝って、アーデルハイトは続きを読もうとするが……。
「……すー……すー……」
 せがんでいたたいさちゃんは、眠りに落ちていた。
 ほっと息をついて、アーデルハイトは本を閉じる。
「さて、リーアも少し休むといい」
「うん、これはみちゃだめだからね。もぉ、たいさちゃんたら……もぉ……っ」
 リーアは日記を自分の布団の中に入れてぶつぶつ言いながら、すでに眠っているお友達のお手てを握り、目を閉じた。

「めーりんセンセー……」
 お外で元気いっぱい駆け回っていたさゆきちゃん(久世 沙幸(くぜ・さゆき))が、目を擦りながら子供達用の寝室に入ってきた。
「どうしたの?」
 カオルと一緒に、さちこちゃん(祥子)を寝かしつけていた、梅琳がさゆきちゃんに優しい微笑みを向ける。
「あのね……。あたしもうおねむなの。それでね」
 さゆきちゃんは梅琳の服ちょこんと掴んだ。
「おててつないで欲しいなって。だって……ひとりでおねんねするのこわいんだもん」
「そうね……でも、隣はもう他の子が寝てるし……」
「いやー、いっしょにおねんねするのー」
 言って、さゆきちゃんは梅琳の大きな胸にぎゅうっっと抱き着いた。
「ふふっ。はいはい、それじゃ一緒のお布団で寝ましょうね」
「うん!」
「その前に、お着替えしないとね」
「いやー、すぐおねんねするのー。ばしょとられたくないもん」
 さゆきちゃんは、梅琳のふくよかな胸の中で、首を左右に振ってイヤイヤする。
「うーん……。ま、いっか。ちゃんと毛布かけて寝るのよー」
「うんっ」
 さゆきちゃんは、梅琳と手をつないで、梅琳の隣に横になる。
「それじゃあおやすみなさぁい」
「お休みなさい」
 さゆきちゃんは、梅琳が温めていたお布団の中で、梅琳と手をつないだまま、目を閉じる。
 その数分後には、さゆきちゃんは安らかな寝息を立てていた。
 梅琳の反対側の隣にはさちこちゃんがすやすやと。
 その隣には、るいふぉんくんが眠っている。
 その隣の端っこには、カオルが横になって、子供達を見守っていた。
「けほん、けほん……」
 色々な場所をたくさん回ってきた、あずさくん(佐伯 梓(さえき・あずさ))も、子供達用の寝室に入ってきた。
 沢山見つけた宝物を沢山紙に書き記して、その場所に残してきたのだ。
 スプリングロンドがあずさくんを見ながら、尻尾を振る。
 あずさくんは嬉しそうな笑みを浮かべて近づき、すみれちゃんの隣でおねんねする。
「ふわふわふかふか。きもちいい……。おやすみなさい……」
 微笑みながら、あずさくんは目を閉じて、眠りに落ちていく。
「みんな、ちゃんと休みなさぁい……むにゃむにゃ……」
 子供達に振り回されっぱなしだったエリザベートも、子供達と一緒に眠りについていた。
 夢の中でも、子供達の世話をしているようだ。
「校長も頑張りましたね」
 ザカコがエリザベートと子供達の寝顔を見て、微笑みを浮かべる。
「皆ぐっすりしていますね」
「そうね、とても可愛らしいわ」
 ザカコの言葉に、梅琳がそう答えた。
「この可愛い姿を見ていると、日中この子達が元気に動き回っていたのが嘘みたいです」
 それからザカコはカメラを取り出して、子供達の寝顔を撮っていく。
「こんな平和な一日が、いつまでも続けば良いですね」
「……そうね……」
 梅琳は少し切なげな表情でそう答えて、彼女も目を閉じた――。

「キャー!」
 翌朝、悲鳴を上げたのは、さゆきちゃ……いや、沙幸だ。
 子供服のボタンがはじけ飛び、上にずり上がっていて、はいていたズボンもぴっちぴち状態だ。
「わ、私なんでこんな素っ裸に近い格好で寝てるのー!!!」
 同じ部屋で眠っていた子供達も、それぞれ元の姿に戻っており、男の子は咳払いをしながら沙幸の悩ましい姿に釘付けだった。

○     ○     ○


 元の姿に戻った契約者達は、思い出とささやかなお年玉を受け取り、子供の頃と変わらない、明るい笑みを浮かべて帰っていった。
「現像して持ってきますね。こちらにアルバムを置いておきましょう。各校の校長や、写っている方々にもお送りしたいです」
 ザカコが、カメラを手にアーデルハイトと首謀者のリーアにそう言った。
「お願いするわね」
 リーアも途中から子供化してしまい、子供達の世話が行き届かなかったこともあって少し苦笑気味だ。
 だけれど、だからこそ子供達同士で協力しあい、楽しみあえたことも多かった。
「そういえば、元の姿に戻ってから、雪の中でごろごろ転がってるピエロの人とか、家の柱にゴンゴン頭をぶっつけてるオールバックでつり目の青年とか、裏庭で頭を抱えて『記憶よ消え去れ……マジで消えたい』などとつぶやいている黒い服の目つきの悪い青年とか……いましたよ? 一緒に写真に収めておきました……!」
「その者達は、いつか写真を奪いにきそうじゃの」
「そういえばこたつむりしていた子も、平常心を装っていたけれど、苦悩していたみたいね。もう一人のほのぼのしていた子は、調合法教えてくれと、土下座してきたわ。調合法は私にもわからないのだけれど、判明したら来年の為に作っておこうかしら」
 ザカコとアーデルハイト、そしてリーアは微笑みあって、外へと出た。

 子供達の姿はもうないけれど。
 庭に、子供達が作り出したものが残っている。
 たくさんの雪だるまに、沢山の小さな足跡。

 いっぱいいっぱい、おともだちと楽しんだ証しだ。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

 シナリオへのご参加ありがとうございました。
 みんなみんな可愛すぎでしたっ!
 いつもとは全く違う姿を描かせていただけて、とても楽しかったです。

 ガイドでお知らせしたお年玉アイテムですが、『フォトフレーム』を参加者の皆様にプレゼントいたしました。ご確認くださいませ。

 アクションの内容および、状況的理由で、複数シーンに登場している方もいます。お時間のある時に全部ご覧いただけましたら幸いです。

 貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。
 あまりお返事を書くことができず、申し訳ありません。励みになっております。

 楽しいアクション、本当にありがとうございました!