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手を繋いで歩こう

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手を繋いで歩こう
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リアクション

「パッフェルの瞳ってサファアよりも澄んだ青とルビーよりも深い赤をしていて綺麗よね」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)はアレナとパッフェルへの祝辞を終えた後で、和やかにパッフェルに話しかけていた。
 祥子の隣には、ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)の姿もある。
 ティセラは多くは語らず、優しい微笑みを浮かべていた。
「隠したままは勿体無いわよ。親しい人といる時くらい、眼帯を外したらどう?」
 祥子もにっこりパッフェルに笑みを向ける。
「……ええ、円の前、ならそうする……」
 パッフェルは意外と素直にそう答えた。
 だけれどまだ、円限定のようだった。
「ごめんあそばせ、通してくださいませ」
 そこに、長身でスタイルの良い女性が近づいてきた。リナリエッタだ。
 リナリエッタはパッフェルに近づくとじろじろ彼女を眺める。
(ふふ、胸は私の勝ち……じゃなくて!)
 にっこり微笑んで、リナリエッタはスカートをつまんで挨拶をする。
 スカート丈が超短いので、中が見えそうだ。
「ごきげんよう」
「……」
 パッフェルはと軽く首を縦に振る。
「パッフェルさん、もうここの制服は買ったぁ?」
 パッフェルが首を縦に振ると、お嬢様ぶっていたリナリエッタの顔が、普段のにやにや顔に戻り始める。
「じつわね、今ここにあるのよぉ」
 リナリエッタが紙袋をじゃーんと前に出す。
「ささ、着替えましょうぉ。今日は鈴子さんも着てくださったのよぉ」
 リナリエッタの誘いで訪れた白百合団の団長、桜谷鈴子も今日は制服姿だった。
「ここじゃ……無理」
「勿論、隣室の休憩室を借りましょう。案内するわぁ」
 勝手知ったる他人の家。リナリエッタはパッフェルの手をぐいぐい掴んで、隣の部屋へと連れていく。
「制服の試着って意味でもいいかもね。似合うかもしれないし」
 円もついていくことにする。

 数分後。
 ぶかぶかの制服姿のパッフェルが再び会場に姿を現す。
 スカートは超ミニだったけれど、リナリエッタとパッフェルでは身長差があるので、そこまでギリギリ状態ではない。
 靴下はニーソックス。正式な百合園女学院の制服とは少し違う。
 さらに百合園の制服を着る場合、下には何も穿かないのが常識だとか、リナリエッタ個人の常識を教わったりもしたが、円が止めたので、パッフェルは穿いている。
「似合ってるわぁ。いえ、お似合いですよ。パッフェルさんも百合園女学院の淑女の仲間入りですわ。おほほほほ」
 慣れない笑い方で、淑女を装うリナリエッタ。
「……そう?」
 パッフェルが円を見ると、円は首を縦に振る。
「なかなか似合ってる。たまには一緒に着ようか」
「……円がそう言うのなら」
「喜んでいただけてよかったですわ。それではごきげんよぉ」
 再びスカートを掴んでお辞儀をして、リナリエッタは鈴子の元へと戻っていった。
 もうちょっと遊びたいところだけれど、おふざけはこのくらいにしておかないと、円……そして、鈴子に叱られそうだから。

「飛び込み参加になってしまい、すみません。お手伝いしますね」
 百合園女学院に留学中の夜住 彩蓮(やずみ・さいれん)が、白百合団団長の桜谷鈴子に頭を下げる。
 殲滅塔の作戦の際、彩蓮は鈴子達と共闘したことがあった。
 今日はパーティに出席をする鈴子に、成り行きでついてきていた。
 彩蓮は少なくなった皿の料理を、皆の皿に分けていき、空いた皿を重ねていく。
「ありがとうございます。せっかくですから、楽しんでいってくださいね。……私が主催したパーティではありませんが、スタッフの方々もそう思っているはずですから」
「はい、ありがとうございます。百合園ではあともう少しお世話になると思いますが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
 彩蓮と鈴子は頭を下げ合って、淡い笑みを浮かべた。
「百合園に留学して色々な発見がありました。副団長の神楽崎優子さんが、あの時白百合団を指揮していなかった理由。あの村に訪れた理由。アレナさんのこと……」
 彩蓮は、友人達と談笑している優子とアレナの方に目を向ける。
 優子とも、アレナとも、別々に会ったことがある。彼女達の想いを、見たことがあった。
 その時は、事情を何も知らなかったけれど、今はよく解っている。
「このケーキ、美味しいですわよ」
 鈴子がオレンジケーキを皿にとって、彩蓮に差し出した。
「いただきます」
 両手で皿を受け取って、鈴子と微笑み合いながら食べていく。