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リアクション
2)高務 野々(たかつかさ・のの)
「次は、【メイド・オブ・オールワークス】こと、
高務 野々(たかつかさ・のの)さんにお越しいただきました」
「お招きいただいてうれしいです。
ほんとーですよ」
野々が、濃紺のメイド服のスカートの裾をつまんでぺこりと頭を下げる。
「では、さっそく伺いましょうね。
野々さんは、本当のことをおっしゃるときは『ほんとー』、
嘘をつかれる時は『本当』とおっしゃるというのは本当なのかしら?」
「これは本当ですよ?
嘘をついているときは『本当』といいますが、
嘘をついてはいない時は『ほんとー』なのです」
(嘘じゃないことと言うのは、事実とは限りませんけれど)
つまり、野々が真実と信じて言えば、それは「ほんとー」と発話されることになるのだ。
「え?
今、最初に『本当』とおっしゃいました?」
トッドさんが聞き返してきたので、
野々は片眉を上げて見せた。
「すごいですね。
さすが、地球に名を知られた名司会者ですね。
……まあ、聞き分けることができる方はだいぶ限られますので、あまり意味のないことですが。
どちらにせよ、特に誠意を込めたい時に申し上げてます。
「なるほど。
野々さんに仕えられる方はお幸せですね。
これは、わたくし、『ほんとー』だと思うわ」
「……とても光栄です」
野々は少しはにかんだ笑みを浮かべ、うなずいた。
「では、
出演者の方への質問のメールにお答えいただければと思います。
たくさんありますのでよろしくお願いします。
まずは、
キュべリエ・ハイドンさんから、出演者全員に。
もし地球とパラミタどちらかが滅んでどちらかを救えるのだとすれば
あなたが救うのは地球?それともパラミタ?
両方救うという回答ではなく二者択一でお願いします。
……だそうです」
「うーん……」
考え込んでから、野々は答えた。
「どちらと問われれば地球ですね。
と、いうか肉親がいる所です。家族は大事です。ほんとーです。
ですが、パラミタも大事です。
甲乙つけがたいです。
本当にそんな状況になったら困りますね」
「なるほど。
次に、百合園女学院に在籍する皆さんへ、
先ほどご出演いただいた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)さんからの質問です。
あなたにとって百合園女学院の校長、桜井静香様をどのように思っていますか?
また、そのパートナーであるラズィーヤ・ヴァイシャリー様をどのように思っていますか?
一寸曖昧なので補足すると、
公人、或は私人としての静香様やラズィーヤ様をどう思ってるか、ですね。
……とのことです」
「厳密には私はOGですが元百合園生としてお答えします。
ラズィーヤ様、静香様ともに敬愛しています。
叶うならば、お二人の一助となりたいのです」
「ほんとーですか?」
「ええ、ほんとーです」
トッドさんと野々は笑顔を交わした。
「では、
出演者全員に、
国頭 武尊さんから。
契約者になる前は、地球で普通に学生やっていて
争い事なんかにゃ無縁だった人も居るだろうから敢えて聞くけどよ。
やっぱ、契約者になってその活動期間が長くなると
人を傷つけたり、時には殺めたりする事に、
抵抗感や不快感を持たなくなるのかね。
すっげぇ答え難い質問だと思うから、無視してもらっても構わないぜ。
とのことです」
「確かに、抵抗感や不快感は多少緩まります。
ですが傷つけあい、殺し合うような争い事は大嫌いという性分ですから、
持たなくなることはないですね」
野々はきっぱりと答えた。
「では、やはり、出演者全員への質問です。
渋井 誠治さんからです。
好きな食べ物は何ですか?
割とありがちな質問だけど、番組の中で時間があれば答えてくれると嬉しいな。
出身地が違うと食文化も違うだろうし、皆がどんなものが好きなのかちょっと気になったんだ。
パラミタだと地球の料理はなかなか食べられないかもしれないけど、
ここでアピールしておけば空京で流行っていつでも食べれるようになるかもよ?
なーんてね」
「お蕎麦と梅干と手羽先が好きです。
三つの中から選ぶならお蕎麦ですね」
「大和撫子らしいお答えでしたね」
トッドさんが続ける。
「青葉 旭さんから、出演者全員に質問です。
自身の所属校ってどの程度大事に思っている?
質問がアバウトですが、極端な例を挙げると、
王国が滅んでも学校を守る。
他の学校を全部潰して自分の学校1校だけにしたい。
友達よりは大事だけど、恋人よりは大事でない。
嫌い、早く転校したい。
全く大事でないどころか明日にでも破壊したいくらい嫌い。
といったところかな。
自分の学校のこういう点が改善されたらもっと好きになれるのに、
というのがあったらそれもお願いしたい」
「厳密には私はOGですが元百合園生として……と、さっきも言いましたね。
そうですね。
『百合園女学院という入れ物』はそこまででもないですね。
校舎の形や生徒会が変わったりだとか、
そういう外身ではなくて気風だとか空気とか、
そういう概念的な『百合園女学院』という、
私を育ててくださった存在は、とても大事です」
ラズィーヤや静香はもちろん、大切な友人や仲間も多くいる。
野々が野々として今あるのは、
その「百合園女学院」のおかげと思えるのだ。
出番が終わりに近づき、
野々は、改めてトッドさんとカメラの方に向き直った。
「あ、そうそう。今日この場でお話したことはすべてほんとーのことですよ?
それでは、ありがとうございました」
「こちらこそ、どうもありがとうございました。
また、お会いしましょうね」
野々は再び、来た時のように一礼すると退場したのだった。
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