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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

リアクション

「やはり……あれはダークサイズのようだね……」

 冬月 学人(ふゆつき・がくと)が格安の自動車【ローライダー】の助手席で目を凝らす。
 なぜか魔法少女コスチュームで運転している九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)も、

「でも、なんでこんな所にいるんだろ……?」

 と、やはりいぶかしげであるが、

「事情はよくわからないけど……やっぱ助けなきゃだよね!」

 ローズはダークサイズの方向へハンドルを切る。
 シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)は後部座席から、

「おいおいおい、捜索隊はどーすんだよ」

 と、本来の役目を忘れるなと釘をさす。

「困ってる人がいるんだからしょうがないじゃないか。ちゃんとキャラに徹するように! 名前呼ばれても答えちゃだめだぞ!」

 ローズはシンに指示をするが、その直後。

「うっ……」
「どうしたロー、あ、『ろざりぃぬ』!」

 学人が彼らの中の設定を守って、ハンドルにもたれかかるローズを呼ぶ。
 ダークサイズの戦場に近付いたため、陰陽師の呪いの影響を受けるローズ。

「これが話に聞く、陰陽師の呪いってやつか」

 ハーフマスクで顔を半分隠した『ザナドゥの墓掘人』ことシンが前に乗り出す。

「これではろざりぃぬが活躍できない。墓掘人、頼んだぞ!」

 学人がローズの肩を支えながら、シンに出陣を依頼。

「ったくしょーがねぇなー。ろざりぃぬはよー!」

 文句を言いつつも設定を守るシンは、ローライダーを飛び出して、ペンギンに夢中になっている陰陽師の一人を後ろから膝カックンする。

「!?」

 ガクリと膝を突いてちょうどいい高さになったところで、シンは陰陽師の首を脇下に挟み、身体ごと持ち上げて後ろへ倒れ、ついでに陰陽師の頭を床に打ち付ける。

「DDT……プロレスでも危険技に分類される荒技さ」

 学人が車の中から解説する。
 学人の解説通りで、いきなりの大技で陰陽師アンダーガールズたちは騒然とする。

「ど、どうしたのっ!?」
「一体何が!?」

 動揺する一人を、シンはまた捕まえて首をエプロンに挟んでパイルドライバー。
 これは『ツームストンパイルドライバー』とも呼ばれるらしく、エプロンの帯で気道が締まるという超危険技だ。

「な、なんなのよあんた―!?」
「あー、てめーら全員、ザナドゥまで落としてやるぜ」

 シンはカンペを読みながら、見事な棒読みで敵に宣言する。

「おいおい……俺様よりえげつねえ奴が参戦してきたぜ……」

 乱暴者のギャドルですら顔は狙わない紳士的な戦いをしていた中に、突然容赦なく顔を床に落とす墓掘人。
 アンダーガールズの間には、一気に動揺が広がる。
 敵とはいえ女、しかも美女、というのを呪いと共に武器とした陰陽師軍団だが、ついにそれが通用しない者が現れたのだ。

「お、恐ろしい子―!」

 強い陰陽師軍団とはいえ、彼女らは二軍。
 一軍との越えられない壁がここにあり、自分たちの美しい顔を傷つける敵、という動揺で恐れをなし、腹痛の呪いをかける集中力が切れてしまう。

「……きたっ! 行ってくる!」

 痛みの回復に素早く反応したローズは、車を飛び出して、

「マジカルぅ〜☆シューティングスタープレス!」

 前方に飛び上がりバク宙しながら自分の身体でアンダーガールズの一人にのしかかってプレス。

「よ、容赦ねえ……」

 アンダーガールズはもとより、ダークサイズにもろざりぃぬを恐れる雰囲気が生まれる。

「サンフラワーちゃーん! 見て見てー!」

 反対からは、やはり腹痛が収まった美羽機が、黄金の機体をきらめかせて飛んで来る。
 ベアトリーチェは操縦席からダイソウ達を見つけ、

「ご挨拶が遅れましてすみません、機上から失礼します。いつも美羽がお世話になっております。ベアトリーチェ・アイブリンガーと申します」

 と、機内から丁寧にお辞儀をしながら、

「後ほど改めてご挨拶させていただきますので……よろしくお願いしまぁーす!」

ベアトリーチェはボタンを押して、いきなりミサイルポッドを発射。

「きゃああーっ!」

 生身にイコン攻撃という、こちらも反則のような攻撃で、アンダーガールズは、

「じょ、冗談じゃないわ、こんな奴ら! おねえさま達に言いつけてやるっ」

 と、撤退しようとする。

「ダークサイズ入ろうよ」

 それに乗じたのか、円はアンダーガールズの勧誘を続けるが、

「嫌よ! こんな恐ろしい組織!」

 と、振られてしまった。

「ロゼー、助かったー!」

 ローズの参戦に感謝するクマチャンだが、

「ロゼではない。私は謎の魔法少女・ろざりぃぬ!」

 と、ローズは指をキラッとして見せる。

「困っている人がいたから、助けたまでのこと」
「……うんまあ、シンはともあれ、ロゼは顔まる出しじゃん」
「……」

 せっかくのかわいくてセクシーな魔法少女コスチュームだが、クマチャンが身も蓋もないことを言ってしまう。
 シンの方にはダイソウが話しかける。

「シンよ、ようやく合流できたな。ところで、これから我々はティーパーティなのだ。お前も腕を振るうがよい」
「えっ! 何だよ、そんな企画あったのかよ!」

 と、シンはダイソウの誘いに食いつくが、

「さ、ろざりぃぬに墓掘人。本来の任務に行こうか」

 学人が迎えに来て、シンは後ろ髪をひかれる思いで車に乗り込む。
 ろざりぃぬたちが颯爽と車で去っていくのを見ながら、

「学ちゃんにも衣裳用意してやればいいのに……」

 と、クマチャンが一人つぶやいた。