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海の都で逢いましょう

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海の都で逢いましょう
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●その水着、危険につき

 目の前で柚木桂輔がぶっ飛び退場となり、ローラは単身に戻っていたが、そこへ、
「自校主催の行事なら、参加はしたほうがいいですよね、ということで」
 水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)が、鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)を従えて来たのだった。睡蓮はパーカーで膝上衣まで隠す扮装、九頭切丸は……いつもの九頭切丸だった。
「睡蓮! 九頭切丸も!」
 ローラは親愛の情をを隠さなかった。彼女らとローラには長い関係があるのだ。彼女による手厚い歓迎(ハグ)を受けながら、睡蓮は苦笑気味に言葉を続けた。
「……自校とはいえ、諸々の理由でダブっている身としては若干肩身が狭かったりしますけど」
「ダブル? 大丈夫ね、ワタシ、二人前くらい、軽く食べるよ」
「いや、そういう意味では」
 まあいいか、と睡蓮はこの話はここまでにすることにした。Ρ(ロー)と離していると、つまらないことを気にするのが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
「ところでΡは学校の指定水着なんですね」
 彼女の姿をしげしげ眺めて睡蓮は言った。魅力的なプロポーションだが、ひと味足りないと思う。
「せっかくですから私の用意した水着も来てみません? Ρの体型にはぴったりのはずです」
「いいけど、睡蓮、着ないか?」
「いえ、私は遠慮しておきますけど……その、ちゃんとした水着を持っていないので」
「水着? レンタルもあるよ」
「レンタルせずとも、あるにはあるんですよ。ですが流石に」
 ふっ、と陰影のさした表情で睡蓮は言った。
「明 倫 館 の 指 定 水 着 は 無 理 で す」
 その理由が気になる人は、マニュアル辺りで調べてみてほしい。
「いや今までは学外でΡと一緒だったり、それか襲撃する立場や悪役を演じていたから大丈夫だったって言うだけで……人前で、しかも同じ学校の生徒の前であんな水着でバーベキューなんて無理だから、無理ですから!」
「そんなに大変?」
「ええ、そんなに大変です。あの水着姿の私が公衆の面前に曝されようものなら、また暫く登校できなくなりそうです」
 睡蓮の顔の陰影は、ここでぱっ、と消え去った。
「さてそういうわけですので私の用意した水着に着替えてみましょうね。その間、九頭切丸がバーベキューを焼き焼きしながら待ちますから」
 その言葉を裏付けるように、九頭切丸は無言で腰にエプロンを巻き始めた。九頭切丸プラス、エプロン……なんだか少し可愛かったりする。
 行きましょう行きましょう、と背中を押してくる睡蓮にローラは言う。
「バーベキュー? うーん、でもワタシ、もうデザート食べたよ」
「あら、お腹いっぱいでして?」
 ところがローラは元気に答えたのだった。
「全然!」