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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!
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ブックカフェ

「お待たせ、美羽ちゃん」
 両手には、ブーケのように大盛りにされたクレープ。
 教室の前の待ち合わせ場所にそろりそろりとそれを運んできた彼女は、片方を友人の小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)、片方をそのパートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に渡す。
「すごいね〜」
 美羽の感心した声に、高原 瀬蓮(たかはら・せれん)は、満面の笑顔で答える。
「えへへ、特別にたくさん入れてもらったんだ。これがイチゴバナナ生クリームチョコのソフトクリーム入りで、こっちがパンプキンカスタードカラメルのブラウニー入りで……」
「はい、瀬蓮の分」
 後ろからついてきたアイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)が持っていたクレープを片方、瀬蓮に渡す。
 二人のクラスの出し物はクレープ屋さんだという。
 ──そう、百合園に復学したのだ。
「ごめんね、ホントは自分で作りたかったんだけど……」
「体の方は、大丈夫?」
 ニルヴァーナでの戦いを経て、百合園に復学したという話は聞いていたけれど、激しい戦いでの消耗で彼女たちには少しの間、安静が必要だった。
「うん、大丈夫だよ! まだ激しい運動は無理だけどね」
 四人は歩きながらクレープをぺろりと平らげると、美羽お勧めのブックカフェに行ってみることにした。
 口には出さなかったけれど、ここなら歩き回らなくていいからと瀬蓮とアイリスを気遣ったのだ。
 二階にある教室のひとつ、レトロな看板のブックカフェの入り口からは、古めかしいテーブルの間を、臙脂の矢絣の和服にたっぷりフリルのエプロンを締めた和装のウェイトレスたちが行き交っているのが見えた。
「いらっしゃいませー……って、あ!」
 目と口を丸くして声をあげたのは、七瀬 歩(ななせ・あゆむ)だった。彼女も臙脂矢絣の和服エプロンで、はいからさんなウェイトレスだ。
「学園祭に来れたんだね。良かった……ね、琴理ちゃん」
 歩が声を掛けたのは、お揃いの和服姿の村上 琴理(むらかみ・ことり)だった。歩は百合園生徒会である白百合会の庶務で、会計の琴理の、役員になる以前からの友人だ。
 琴理も、隣にいた書生姿のパートナーフェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)も意外なお客さんの姿に驚く。
 ひとしきり皆で再会を祝うと、
「高原さんもアイリスさんも、お帰りなさい。またお会いできてうれしいです」
 琴理は頭を下げると、彼女たちを奥の、つい立てで半個室にしつらえた席に案内した。

 席に着いた美羽たちは、注文を済ませると、本を囲んでお喋りを始める。
 ブックカフェと名が付くだけあって、窓の下には本棚が並べられている。本棚はいわゆる絵本棚で、上部が表紙向けた陳列、下段が通常の背表紙で選ぶような陳列がされていた。
 各々興味のある写真集を引き出して、机に並べたのだが、美羽が選んだのはエリュシオンの写真集で、瀬蓮が選んだのは日本の写真集だ。
 様々な風景を見ながら、めくるたびに瀬蓮は無邪気に声をあげる。
「エリュシオンのこことっても綺麗でね。あ、こっちも一緒に行ってみたかったなぁ」「美羽ちゃんってこの辺りで生まれたんだったかなぁって。瀬蓮は日本の方が知らない場所が多いかもしれないね」
 美羽は瀬蓮の具合が悪くならないか、時折顔色を窺ったが、大人しくしている分には平気なようだ。
 アイリスも彼女たちの話に時々相槌を打ちながら、のんびりと、楽しむ彼女たちを見て微笑んでいる。
 二人とも、とっても楽しそうで良かったな、と美羽は思う。
 エリュシオンに、ニルヴァーナ。瀬蓮はその性格からは及びもつかない行動力で、ずっと戦いに身を投じていた。戦いを経て、やっと再び百合園へと帰って来たのだ。
 何でもない日常を過ごせることが、こんなに有難くて、幸せだなんて……。
「瀬蓮ちゃん、今度、一緒に紅葉狩りに行きたいね。ハロウィンやクリスマスも楽しみだね」
 話しているうちに、歩がてきぱきと、各種ケーキと、琴理の淹れた紅茶を運んできた。
 美羽がコハクがそう言えばあまりしゃべってないな、と見れば、彼は滅多に入れない女子校。周囲の殆どが女の子で、なんとなく落ち着かないようにもぞもぞしていた。
 単純に豪華な女子校の内部に興味がない訳でもないけれど、女の子たちに目移りしてるなんて美羽に思われるのも不本意なようだ。
 ──が、目の前に運ばれてきたケーキに顔を輝かせる。
 緊張がほぐれたのか彼が幸せそうに、アップルティーを置いてタルトタタンにフォークを入れるのを美羽は見ながら、彼女も紅茶研究会のオススメだというダージリンのファーストフラッシュのストレートと抹茶のチーズケーキという和風な組み合わせを楽しむ。
「瀬蓮ちゃんとアイリスは、最近どう? 百合園の新しい制服とか、もう慣れた?」
「うん。心配してくれてありがとう。色々変わっているところも多いけど、クラスのお友達も心配してくれて、優しくしてくれるよ」
「……随分長い間、百合園を離れていたからね。またこうして学校生活ができるとは思わなかったよ」
 アイリスは、一時は戻ってこれないことを──それどころか、死を覚悟していたのだ。
「それも瀬蓮を助けてくれた美羽ちゃんやお友達や、それにパラミタのことを思って協力してくれたみんなのおかげだよ。本当にありがとう!」
 瀬蓮が笑顔で、美羽の手を取って感謝を伝えれば、
「……あ、そうだ。もうちょっと元気になったら、一緒に空京のミスドに行こうね」
 コハクの言葉に瀬蓮は頷く。
 以前聖アトラーテ病院に、インテグラル化するアイリスを救けに行った時、結局持って行ったドーナツを、アイリスと食べることはできなかったから。
「うん! あと、こっちの写真に載ってるところにも行ってみたいな」
 四人はわいわいと、計画を夢想しながら、写真集を一枚一枚めくっていく。