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こどもたちのハロウィン

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第3章 みんなで、パーティだよ!

「かわいいふく、たくさんあるわね」
 ログハウスの衣裳部屋の隣の部屋に、衣装を持ち込んで、6歳のりなちゃん(雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった))は、自分に合せてみていた。
 ふりふりした可愛い衣装や、キラキラした石が沢山ついた衣装がとってもお気に入りだ。
「きがえてみようかしら〜」
 今来ている、黒系のお姫様のドレスも大好きだけれど、黒妖精や黒天使の衣装もいいな、なんて思ったり。
 背中には、蝙蝠の羽根をつけているけれど、これも妖精や天使の羽根にしてみたい気もして。
 一人楽しく、鏡の前で遊んでいた。
 ぎゅるるるるる……
 そのりなちゃんのお腹の虫が可愛く鳴き出した。
「……みんな、おかしもらってるのよね」
 でも、りなちゃんはここから出れない理由がある。
 それは――。鈴子お姉さんの存在だ! 
 りなちゃんは、子供の姿を鈴子お姉さんに絶対、ぜーったい見られなくない。
 子供になってしまったせいで、理由はよくわからないのだけれど。
 今の姿は、可愛い洋服にきゅんきゅんしている自分は、消したい過去。のはずなのだ。
(こ、このすがたを、あの人に見られるのはまずい……!)
 りなちゃんがこの部屋に一人でいるのは、隠れているからなのだ。
 そのお部屋の中に……。
(く、くっきーのにおい! おなか、おなかがたえきれなーい!)
 甘いあまーいクッキーの匂いが充満していった。
 しばらく我慢していたりなちゃんだけれど。
「も、だめー」
 ついに、我慢しきれなくなって、部屋から出ると、匂いのしてくるキッチンの方へと走った。
 匂いがしたのは――そう、オーブンで焼いていたからだ。
 だからまだ、お目当ての品はオーブンの中だ。
 りなちゃんはすぐにクッキーを発見することができなかった。
 その代り。
「あ……ふふ、りーな、ちゃん」
 降ってきた女性の声に、ぎくっと、りなちゃんは立ち止まり、そろおりと顔を上げる。
「……!!!」
 そこには、にこにこりなちゃんを見下ろしている鈴子お姉さんの顔があった。
「お、ほほほ、ま、また会ったわねお姉さん……とうっ!!」
 ジャンプして逃走しようとするりなちゃんだけれど。
「可愛い格好で、お転婆しないの。いい子にしていましょうね。うふふ」
 両腕でキャッチされて、胸の中に抱きしめられてしまう。
「クッキー焼けましたわ。大人しく座って待っていて下さったら、一番にさしあげますわよ?」
 言って、鈴子お姉さんが、椅子の上にりなちゃんを下ろすと。
「むー」
 ちょっと膨れながらも、りなちゃんは大人しくクッキーを待った。
 オーブンから取り出したばかりのクッキーをお皿に乗せて少しさました後で、鈴子お姉さんは、りなちゃんに味見どうぞと、お皿ごと渡してくれた。
「かんぜんに子どもあつかいされてる……」
 りなちゃんはぶつぶつ言いながらもクッキーをぱくぱく食べていく。
 鈴子お姉さんは、りなちゃんをお母さんのような微笑みで見た後、次の料理のために、流しに向かっていく。
「……!」
 りなちゃんは、突然クッキーを掴むと、鈴子お姉さんの後を追った。
「りなちゃん? どうかしましたか」
「ふふ、リナちゃんはもう大人なの」
 そう言うと、りなちゃんは小さな手を鈴子お姉さんにぐいっと伸ばした。
「はい、鈴子さんにもおかし! あーん」
 鈴子お姉さんはちょっと驚いた後、微笑みを浮かべて『あーん』と口を開けた。
 その口の中に、りなちゃんはクッキーを入れてあげる。
「……うん、美味しくできているようですね」
 そう言って、鈴子お姉さんは、りなちゃんの頭を撫でた。
「こどもじゃないんだからね!」
 りなちゃんは、近くの椅子の上にのっかる。
「よくできました」
 そして、鈴子お姉さんの頭をなでなでする。
「うふふふ、りなさんってば……ふふ」
 そんなりなちゃんが可愛すぎて、鈴子お姉さんは声を上げて笑った。

「みにゃしゃん、こたといっしょに、おかし、つくいましぇんか?」
 コタローちゃん(林田 コタロー(はやしだ・こたろう))が、遊んでいる子達に呼びかけている。
 コタローちゃんは、子供化する薬を飲んでいないけれど、元々7歳のゆる族の子供だ。
 今日は着ぐるみの上に、ふりふりのエプロンをして、頭にはおっきなリボンをつけて、お菓子作りをしている。
 コタローちゃんはキッチンではなくお外で、リーアに借りた発電機や、調理器具を使ってお菓子を作っていたから。
「こたおねーちゃん、こんばんはー」
 沢山の子供達がお菓子を貰いに集まってきていた。
「ぽっぽこーん、ちょうだい」
 にぱっと笑みを浮かべて、言ったのはエプロンメイド服の衣装を纏った3歳のしほちゃん(騎沙良 詩穂(きさら・しほ))だ。
 しほちゃんは、コタローちゃんがポップコーンを作っていると聞いてやってきたのだ。
「はーい、ではつぎの『ポップコーン』作うれすお」
「つくるの? できたてたべれるの? わあい、わあい」
 しほちゃんは手を叩いて喜ぶ。
「作うんれす。ふかーいおしゃらの『ホットプレート』に、ばたー入れれましまろ、入れうれす」
「ん〜?」
 コタローちゃんがバターとマシュマロを入れていく様子をしほちゃんは不思議そうに見ている。
「……あっちゅいから、さわるの、めーれすお?」
「うん」
「ここい、ぽっぷこーんのたね入れれ、よーくまじぇまじぇすうれす。あとは、ふたして、まってるらけれすお!」
 コタローちゃんが入れていく物を見てしほちゃんが「えっ」と声を上げる。
「これがぽっぽこーんなのー?  ちほ、これみたことあるー、とうもろこしっていうんだよぉ」
「ふらん食れてる『とうもろこし』とはちょっとちあうんれすお」
「ちょっとだけちっちゃくてかたーいとうもろこしなんれすね」
 感心しながら見ていると。
「あっ!」
 ぽん、ぽん。と中身が跳ねて、音が響いてきた。
「すごい、すごい。ぽっぽこーんができてきたよ♪」
 音と一緒に、しほちゃんは跳ねて喜ぶ。
「どんどんでてきくるよ♪ こたおねーちゃん、まほーつかいしゃんみたいれしゅぅ!」
「そうれすか〜? うあ、でも大へんれす」
 コタローは、ポップコーンの出来具合をみて驚く。
「作いすぎたったれす! こぼえてるれす〜。かご、かご」
「かご、かごかご〜」
 コタローちゃんとしほちゃんが辺りを見回して、籠を探していると。
「かごです。どうぞです」
 近くにいた桜色の着物姿の4歳のふれんじすちゃん(フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら))がテーブルから籠を持ってきてくれた。
「あいあとれす。入れるうれすお!」
 熱いから触っちゃダメだよと子供達に言いながら、コタローちゃんは紙ナフキンをしいて、ポップコーンを籠の中に入れていく。
「ほわほわなにおいです」
 ふれんじすちゃんは「えへへー」と笑みを浮かべる。
 豆柴のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら、生えている耳を立てて、しっぽを振り振りする。
「かわいい、しっぽれすね」
 コタローちゃんがそう言うと、ふれんじすちゃんはもっと嬉しそうに笑って、全力で尻尾を振った。
「わたしのみみとしっぽは”きんろーたん”なのです。わんちゃんじゃないのですー」
「きんろおたん?」
 しほちゃんが首をかしげてる。
「はい、そーなのです」
 にこにこ、ふれんじすちゃんは嬉しくて嬉しくて、尻尾を振り続けた。
「おねーたん、このふしぎな”からくりおもちゃ”もっとつかってほしいのです」
 そして、ふれんじすちゃんはコタローちゃんにお願いをした。
「あ、ちほもおねがいれしゅ、ちほねー、きゃらめるちゅがーのあじにしてほしいの☆」
「きゃらめるれすかー」
「そうなの。いっしょうけんめーかきまぜると、ぽっぽこーんがきゃらめちゅがーのおあじになるのね☆」
「わかったですお! みんなで作いましょお!」
 コタローちゃんがそう言うと、ふれんじすちゃんは尻尾を振り振り。しほちゃんは、ぱっと笑顔を浮かべる。
「うん」
「やった☆」
 そして、3人で一緒にポップコーンに味を付けていると。
 すごくすっごく美味しい匂いが周りに充満して。
「なにつくってんの?」
「おかしちょうだい!」
 子供達がさらに沢山集まってきた。
「ついは、『ホットケーキ』をみんなで作おーね!」
 コタローちゃんが言うと、子供達から「うん」とい元気な声が返ってきた。
「ちほね、まほーつかいしゃんからぽっぽこーんをもらったよ☆って、みんなにおしえてくりゅね」
 しほちゃんは、出来上がったポップコーンを袋に入れてもらうと、大切に両手で包み込んで。
 お友達が集まっている場所に駆けていって教えてあげるのだった。
 そうして、子供達はどんどんコタローちゃんのところに集まってきて、美味しいお菓子を一緒に作っていくのだった。