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2023年ジューンブライド

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リアクション

「パパーイ! ブライダルフェアーここでやってるんだって〜」
 とある高級ホテルの前を通ったセシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)が、ホテルを指差してはしゃぐように言った。
「全く、シシィが外出を急かすから、何事かと思いましたら……こんなイベントですか」
 大きく溜め息をついて、アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)はセシリアへと向き直る。
「パパーイの格好いい新郎姿、わたし写真だけでもいいから見たいな〜と思うんだけど……だめ?」
 セシリアはアルテッツァの溜め息も気にせず、言葉を続ける。
「あ、せっかくだからすばるさんもドレス着てみない? わたしも見立てるから!」
 六連 すばる(むづら・すばる)は、
「多分他のパートナーだと断られてしまうからという事で、スバルを呼び出したんですね」
 睨みつけるような目でセシリアを見るアルテッツァ。
〈あの、マスター……〉
 すばるが、精神感応でアルテッツァに話しかける。
「……スバル、キミにも迷惑をかけてしまったようですね、すみません」
〈ええ、シシィは『ボク達の結婚写真』が見たいんだと思います……彼女のために撮ってあげたいと思うのですが……〉
 アルテッツァは口で謝りながら、すばるに精神感応で答える。
〈理由は分かりますが……それに、乗ってあげても良いかと思われます〉
「……セシリアさんが、着るなら、ワタクシも、ドレス、着ます! そうでなければ、ワタクシは、着ません! ……いいですかっ?」
 すばるがキッパリと言い切る。
「…え? ちょ、ちょっとまってすばるさん、わたしまで何で?」
「シシィ、スバルがこだわる事は珍しいですよ。余程シシィ、貴女と一緒に着替えがしたいようです……お願い、聞いて下さいますね? 聞いて頂けたら、早速ボクも衣装を変えてきましょう」
「むー……わかったわよパパーイ! ……すばるさん、じゃ、一緒に着替えに行こ!」
 そう言って、セシリアはすばると共にホテルの奥へと入っていった。


 ホテル内の写真館の前に立っている、濃いグレーの3つ揃えタキシードを着たアルテッツァの元に、すばるたちがやってきた。
「マスター、お待たせしました……動きづらいですが、とても、綺麗です……ね?」
 すばるは、ビスチェ型でAラインスカートのウエディングドレス。パフスリーブの付け袖にショートグローブ、白百合のブーケを持っている。
 セシリアは、ホルターネックのマーメイドラインのウエディングドレスだ。ロンググローブをして、マーガレットのブーケを持っている。
「じゃっじゃーん! すばるさんより背がちっちゃいわたしだけどヒールを履けばそんなの関係なくなるもんね!」
 自分のとセシリアのドレスを交互に見るすばると、偉そうに言うセシリア。アルテッツァは、2人の衣装を感慨深く眺める。
「……そうですね、2人とも美しいです」
 アルテッツァは、セシリアの携帯に視線を送った。
「シシィ、スバルと一緒に写真を撮ってあげましょう」
「セシリアさん、一緒に映りましょう?」
 すばるに促されて、セシリアとすばるは二人で並んで写真を撮ってもらった。
「……次はシシィ1人だけで、こちらを向いて、笑ってみましょうか?」
「え、わたしはいいわよ! パパーイ達が先なの!」
「ほら、とっても綺麗なんですから……見せたい人に写真送ったら如何ですか? ワタクシ達は最後でいいんです」
〈マスター、これがワタクシ達の遺影にならないように、何とかしましょう……まだ、未来は定まっていないと、思いたいですね〉
 セシリアの写真を撮るアルテッツァの隣で、すばるが話しかける。
〈そうですね……。未来に抗う……、ボクらしくもない生き方ですが、命あってこそのパラミタですから……今回は徹底的に抗ってみますか〉
「きちんとしたスチルも、プロの手で撮って頂く事にしましょう。3人の写真は、大切ですからね」
 ひとしきりセシリアの携帯で写真を撮りおえると、アルテッツァはそう言って写真館の中へと向かった。
〈後でタイチにわたしの写真送っても……大丈夫よね?〉
 セシリアの前を歩いていくアルテッツァとすばるの目を盗んで、セシリアは太壱の携帯に画像ファイルを送信した。