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リアクション
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、和服を着て、鼠の妖怪、旧鼠に、
セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)は、巫女服に猫耳と二本の尻尾の猫又に仮装していたが。
「本当に変身するとはな……」
(俺、食われそう)
そんな言葉は飲み込んで、牙竜は、セイニィをまじまじと見つめる。
「な、何よ」
セイニィが怪訝な顔になるのに対し。
「いや、巫女服が似合ってるな、と思って」
「……」
セイニィは目を逸らした。
「……いきなりそういうこと言ってくるのズルくない?
だいたい、こんな格好、牙竜が言わなければあたしは、もっと、普通の……」
ぼそぼそとつぶやくセイニィの顔を、
牙竜が覗き込む。
「ん、どうした?」
「なんでもないわよ!」
どうやら、セイニィは変身したことが恥ずかしいようだった。
本物になった耳がぴくぴく動いている。
「そういえば、『旧鼠』は『ネコを食べるもの』もしくは『子猫を育てる』と言われているが、
『猫又』は『人家で飼われているネコが年老いて化ける』だったな」
そんなふうに、妖怪の伝承を思い出しながら、
牙竜はふと思う。
(確かにセイニィとの関係を他の人から見たら
『ネコ(セイニィ)を食べる(セイニィの恋人になった)』と言う意味では間違ってない気がする……。
ネコとネズミは切っても切れない関係だし、これから先の関係をある意味的確に表してる気がする)
そんなことを考え、
牙竜は思いついたことを口にする。
「ところで、『旧鼠』は『子猫を育てる』ということらしいが……。
これってつまり、結婚して、子どもを育てるということだな」
「はあ!?」
真っ赤になったセイニィに、牙竜は続ける。
「セイニィさん、男の子と女の子どっちがいい?」
「ななななな、何言って!
気が早すぎるでしょ!」
「じゃあ、そのうちそうなることは考えてくれているんだな」
「ちょ、別にそんなこと言ってないんだけど……!?」
「じゃあ、逆がいいか?」
牙竜は、セイニィに、そっと顔を近づけた。
「かわいいセイニィを食べてしまいたい。俺はそう思ってる」
「ばばばばばばばばば、馬鹿ッッッッッッ!!」
これ以上ないほど真っ赤になったセイニィは、
らんらんと輝く目で牙竜を睨みつけた。
「あれ? セイニィさん、肉食獣のような目でこちらを見てませんか?」
「フシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「うわああああああああああああああああああ!!」
両手から爪をむき出して、
襲い掛かってくるセイニィから、牙竜は逃げ出した。
「たーすーけーてー!!」
「待ちなさい、牙竜!」
どたばたと会場内を走り回った2人だが、ついに牙竜はセイニィに追い詰められてしまう。
猫のように跳躍して、
セイニィは牙竜に覆いかぶさって引っかいた。
「まったく……」
セイニィは眉間にしわを寄せたまま、倒れた牙竜の上に乗っている。
二本の尻尾が、不機嫌そうにバタバタしている。
「まだ付き合い始めたばかりなのに、
そんなこと考えられるわけないでしょ!
もっと、いろいろ、ゆっくり恋人らしいことを楽しみたいんだから……」
また、真っ赤になって、セイニィが言った。
「そうだな」
牙竜が笑って言った。
「セイニィの尻は敷かれ心地がいいな」
「バカ!」
セイニィは、もう一度、牙竜をどついたのであった。
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