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はっぴーめりーくりすます。4

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17


 クリスマスイブである今日、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)宅にはヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)以外誰もいなかった。他のパートナーたちは、各々用事があると言って出ていったのだ。
 雰囲気抜群の日に、示し合わせたように出ていかれたものだから、なんだかお膳立てされた気がしないでもない。が、乗ってやろうとも思った。きっかけが欲しかったのは、事実なのだ。
「ふたりだけでクリスマスを過ごすのは何年ぶりですかねぇ」
 のんびりと、ヴェルリアが言う。確かにいつぶりだろう。
「毎年みんなで、だったからな」
「ねぇ。他の人たちとばっかりでしたから、だいぶ久しぶりです」
「嫌か?」
「嫌でしたら、私も出かけてますよ」
「それもそうだ」
 他愛のない会話を交わしながら、買ってきたケーキとワインをテーブルに並べた。互いに注ぎ合い、切り分けたケーキを食べる。
「今年も一緒に過ごせて嬉しい」
「私もです。……あ、そうそう。真司にプレゼントがあるんですよ」
 ヴェルリアが、言って包みを渡してきた。クリスマスカラーの包装紙とリボンでラッピングされている。開くと、中にはマフラーが入っていた。
「ありがとな。早速明日から使わせてもらうよ」
「ふふ。ちょっと気恥ずかしいですね」
 いつもなら、ここで終わりだった。
 クリスマスを共に過ごすことができて嬉しい。来年もよろしく。
 それで、終わりだったけど、今年は違う。
「こっちもプレゼント渡さないとな」
 呟きに、ヴェルリアがきょとんと目を開いた。
「真司からもあるんですか?」
「ああ」
 頷いて、ヴェルリアの右手を取る。掴んだ右手に、自分の右手を重ねた。ヴェルリアは、期待と好奇の目で真司の手を見ている。
 手には、物質化・非物質化で隠し持っていたものがある。出現させたそれを、渡してやる。
「メリークリスマス」
「え……?」
 開いた手に載せられていたものに、ヴェルリアが一層目を大きく見開いた。
「これって……指輪……?」
 そう。真司がヴェルリアに渡したのは、ダイヤの婚約指輪だった。
 ぽかんとした顔で指輪を見つめている彼女に、真司は言葉を重ねた。
「これからもずっと一緒にいてほしい」
 ヴェルリアの視線が、ぱっと真司に移った。頬が赤い。返答までの間が、緊張する。
「えっと……それってプロポーズですか?」
「そのつもりだが。嫌か」
「嫌だったら、……ううん」
 ヴェルリアがかぶりを振った。嬉しそうに笑い、指輪をつける。
「嬉しいです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「……ありがとう」
「なんで、真司がお礼を言うんですか」
「嬉しかったから、かな。……嬉しい。ありがとう」
「どういたしまして。……ふふ、これからも一緒、ですね」
 はにかむ彼女はとにかく可愛らしくて、真司は、一生この人を護っていこうと心に決めた。