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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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 第6章

 時は2024年10月、どこが滅ぶという心配もしなくて良くなって少しした頃。
 幾分か暑さが和らぎ、過ごしやすくなった日和の中、久世 沙幸(くぜ・さゆき)桐生 ひな(きりゅう・ひな)はザンスカールの町を歩いていた。
 向かうところは――
「最近ご無沙汰だったし、そろそろ楽しいことしちゃってもいいよね?」
「ですねー。2人で限界も臨界も軽く超えまくっちゃいましょー!」
 ムッキー・プリンプト(むきプリ君) の工房だった。遂にイルミンスールの寮を離れて独立し、むきプリ君は薬屋『プリンプト工房』を開いたのだ。堂表向きは普通の薬屋だが、沙幸達は工房がアレを売っている事を知っている。堂々と売らないのは、しょっぴかれる可能性があるからだろう。
 その、健全とは言い難いアレとは。
「むきプリ君、ひっさしぶり〜! ちょっとお願いがあるんだけど……もちろん、わかってるよね?」
「おお! ホレグスリだな!」
 ホレグスリである。
 ドドーンと工房へ突撃し、上目遣いで言う沙幸のお願いをむきプリ君はノータイムで把握した。
「際限なく飲みまくりたいのですー! ここならいくらでも飲めますよねっ。気兼ねなく飲むためにも、実験協力ということにしたいのですがどーでしょー?」
「む? 実験協力か……」
 ひなの提案に、むきプリ君は少し考えてから1枚の紙を出してカウンターに置いた。
「お前達になら渋ることもないのだが……」
 まあ誰にでも割かしほいほいと渡してしまうが。
「俺も開業したばかりだしな。一応手続きは踏んでおくか。実験協力というのなら、この書類だ」
「なんだか小難しい書類だねー。開業したとなると、色々あるんだね」
「ここにサインすればいいんですねー。実験内容にいくつか種類がありますねー」
 ペンを取ったひなは、何種類かある項目から『実験内容:摂取した薬を被験者から抽出した際の効能確認』を選んで丸をした。名前を書いて、沙幸にもペンを渡してサインしてもらう。
「本当に実験しちゃっていいですよっ。ギブアンドテイクは大事ですからー」
 ひなは書類を返し、それを受け取ったむきプリ君は「これでいいのか?」と確認した。
「面白そうだから選んだのですっ、どんなになっても無問題なのですー」

「薬はここにあるからな! 好きに飲んでいいぞ!」
 案内された部屋には、様々な高価そうな機械が置いてあった。いくら借金したのだろうか。コンロの上にはピンク色の液体がたっぷりと大鍋が、壁に並ぶ大きい瓶の中にもやはりピンク色の液体が入っている。小瓶に入れる前の状態のようだ。以前のむきプリ君の部屋と違うのは、他にもカラフルな薬が沢山置いてあることだ。
「じゃあ、俺は店に戻るな!」
「ありがとー、むきプリ君! そうそう、覗いてもいいけど手を出すのは無しだからね?」
「ああ、俺は素晴らしい快楽をくれる相手を得たからな! 安心しておけ!」
 沙幸の言葉にむきプリ君はさりげなくのろけ、部屋の戸を閉めて戻っていった。
「さゆゆ、早速お楽しみタイムのスタートなのですよー。豪快に頂きましょー」
「そうだね、鍋から直接取って……」
 なぜか持ってきているビールジョッキを出して薬をなみなみと注ぎ、2人は寄り添いながらジョッキ同士を打ち付けた。
「かんぱーい!」
「かんぱいですよー! 一気にフルスロットルですっ」

 ――部屋の隅に、服や下着が脱いだままに放置されている。
 沙幸とひなの肌を隠す布はもう1枚もなく、一糸まとわぬ姿で絡み合った彼女達は、口に含んだホレグスリをお互いに口移しで飲ませ合った。
「ぅん……ひな……」
「もっと、もっとですよー……」
 2人の唇から、ピンク色の液体がとろりとろりと零れ落ちる。頬を火照らせ、瞳に熱を込めて何度も何度も口付けながら、床に置いた鍋からホレグスリを手で掬い取り相手の身体にこすりつける。鍋の中に、机に置いてあった別の薬が落ちて混ざったことには気付かない。
 ピンク色の液体まみれになった全身を、合体してくっついちゃうんじゃないかというくらいに押し付け合う。
「ホレグスリが足りないねー……」
「まだまだ序の口ですよ〜。もっともっと飲みまくるのです〜」
 ジョッキを使って、鍋や大瓶が空になる勢いで、お腹がパンパンに膨らむまで、歯止めを効かせずに飲みまくる。体を激しく擦り付け合い、どこまでもどこまでも、快楽の頂点の更にその先を求めて――

 肌がちょっと触れるだけでびんびんに気持ちよくなった頃、とろとろになりながら、ひなは言った。
「むぐぐ、むぐぐぐ〜(さゆゆ、仕上げに入っちゃいましょー)」
「むぐ?(えっ、そろそろ仕上げ?」」
 ひなの視線の先にあるのは、やけに大きい円形の機械だった。いつの間にか何かの台の上に乗っていた2人の下で、機械はすごいスピードで回転している。こちらもいつの間にか、スイッチを押していたらしい。
 口が塞がっていてひなが何を言っているのかは分からなかったが、アイコンタクトだけで何となく、沙幸は察した。
「むぐむぐむ〜(あの中に落ちるのですよ〜)」
 身体をぴったり重ねてディープキスしたまま、2人は機械にダイブした。沙幸は分かった。それは、遠心分離機であると。
(な、なんかすっごい勢いで回転してて圧力がヤバイのですよっ)
(あわわ、なんかものすごい勢いで回されて大変なことに?)
 口が接着して、全身くまなく密着して、あらゆる水分が抜けて、身体が潰れてきて、肌も唇もとっても、とっても、超絶的に快感で。
「気持ち良いのが止まらなくな……るの……です〜……」
「……わたしたち、どうなっちゃうんだろう?」
 ――これで……どんな薬品が抽出されちゃうんだろうね?

「どうだお前達? 俺の自慢のホレグスリの効果は……ん? いない……?」
 暫くして部屋に入ってきたむきプリ君は、がらんとした室内に首を傾げつつ入室した。数歩進んだところで彼は、遠心分離機のスイッチが入っていることに気が付いた。
「スイッチを切り忘れたか……お?」
 回転が緩むと共に見えてくるのは、いろんな水分を根こそぎ搾り取られてぺったんこになった、すっぱだかの沙幸とひなの姿だった。完全な搾り滓と化した2人を、むきプリ君はそのまま(2人がくっついた状態のまま)摘み出す。それをぺりぺりと剥がしていくと、彼女達の快楽に溺れたとろんとろんな顔が現れる。
「よく生きてるな。これがコメディ補正というやつか……! とりあえず、水分を……」
 むきプリ君は剥がした2人を机の上に置くと、「…………」と考えてから余っていたホレグスリを2人にかけた。紙みたいになっていた2人が、だんだん肉感的になってくる。
「おお……しかし、なんでこんなに小さくなってるんだ?」
 手のひらサイズの2人を見下ろし、むきプリ君は首を傾げる。そして理解した。
 新作である「小人になれる薬」の瓶が、ホレグスリの鍋の中に落ちていたのだ。
「ま、まあ……せっかくの申し出だし、抽出された成分を実験に使うか」
 納得した彼は、普通の大きさの遠心分離機から成分ごとに分かれた液体を回収する。彼が別の部屋で実験を始めた頃――
 水分を取り戻した沙幸とひなは夢心地になりながら遠心分離機にまたダイブし、飛び込んだ拍子にスイッチが入った機械は、再び回転を始めるのだった。