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リアクション
第3章 山の上からこんにちわ
森の中へ進出してすでに三日、そろそろしびれをきらしてきた面々の前に動きが現れたのは12月も下旬に入ろうかという20日であった。主力陣地の方では毎日きちんと配給の食事があるが、最前線でしかもある意味待ち伏せを狙っているA遊撃隊はそうはいかない。敵の偵察を警戒して火を使うこと自体制限している。そのため、ここ数日は缶詰やカップ麺ばかりでうんざりしていたところである。
「よし、ようやく出番ね」
「うむうむ、敵を翻弄するのは我らが役目、存分に働いてくれよう」
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)とウィルフレッド・マスターズ(うぃるふれっど・ますたーず)はようやく来た出番に早速準備を始める。
「こらこら、ちょっと待て」
それを押し止めたのはクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)である。殺せる、殺せる、と目をぎらつかせる二人を危惧している。
「二人とも、こちらからすぐ撃つわけではないんだから、慌てるな」
「こちらから撃つのではないの?」
「挑発して引き込むのではないのか?」
首をかしげる二人。
「今回の作戦は演技力が必要になる。森に潜んでいるところを敵に発見させるようにしないとならない。撃つのは敵がかなり近づいてからだ」
いかに挑発目的とはいえ、それだけが目的ではない。
「わははははははは、いいですねえ」
そこにゴトゴトと野戦機動車(スタッフカー)で志賀が小声?で高笑いしながらやってきた。さすがに森の中を走るのは難しい。
「どうですか?」
「どうやらこちらに敵軍が近づいているようです」
「それは僥倖、まだ攻撃掛けていませんね?」
「は」
「結構」
志賀はにんまり笑ってシュミットの方に向いた。
「敵も馬鹿じゃないでしょうから、森に近づけば偵察を出すでしょう。そいつだけを狙ってください」
「示威籠城戦ですか」
「そ」
敵にこちらの存在を知らせ、近づいてくる偵察員のみをまずは倒す。敵から見ればこちらがいることは解っているが、実態が不明である。一方、こちらからはむやみに攻撃しない。偵察しようにも少数では狙撃でやられる。だとすれば、敵は遠巻きに押さえの戦力を置くか、ある程度まとまった戦力で森に掃討を掛けなければならばくなる。どちらに転んでも第3師団側の有利である。
「参謀長、何で前線まで」
ややあきれた顔なのは大岡 永谷(おおおか・とと)だ。
「いやあ、一番面白そうな所ですから見逃してなるものか!……というのは冗談でぇ、作戦の要な以上、確認しないと寝覚めが悪い」
一瞬本音が垣間見えたような気がするのは気のせいか。
「問題はこちらの実数を悟られずにできるだけ多数の人数を引き込むことです」
「参謀長は敵を森に引き込むつもりと聞いたが、それはその後の集積所に関わることか?」
「ほう、どうしてそう思うのですか?」
「……いや、航空部隊の朝野がそう言っていた」
やや口ごもる大岡
「ほう」
「参謀長は航空部隊を脅威に思わせるつもりだと」
「ほうほう」
「そして敵集積所を森の中に移動させるつもりだと」
「ほうほうほう」
「その上で発見しやすくするつもりではないかと」
「大変に結構でございます。そう考えていただければ素晴らしい」
どうやら、朝野、大岡の考えは志賀の作戦と一致しているらしい。
「そうやって状況を考えることを学んで欲しいわけですよ。そうすれば敵がどう動くか、それに対してどう考えるか、そうやって考えられるようになれば、下手に軍事の知識なんていりませんから」
志賀は結構大胆な事を言っている。
「一見、航空部隊からも地上部隊からも攻撃しにくい森の中、そこに敵の集積所を設けさせる。そしてそこを叩けるようにするということか?」
「そのとお〜り。捜索範囲は森の中に絞れる、そうすれば全体を探すより発見しやすいでしょ?その上で叩ける方法さえあればいい。航空部隊、といいましたよね?」
「う、ああ。そうです」
「いいですねえ。貴方は騎兵部隊。航空部隊と騎兵部隊が連携しているってのはこの場合、最高ですよ。一人でできないことは二人でやればいい。簡単な事ですが意外とこれが出来ないんですよねえ」
そう言って志賀は口の両端をつり上げた。そこにシュミットが気がついた様に言う。
「そうなると、今の段階で集積所の位置を確認するのはあまり意味がないのでは?」
「そうですね。肝心なのは捜索範囲を絞り込めるようにしてから、確実に発見する方法ですから。今集積所を発見しても手も足も出ません」
「手も足も出ませんか?」
大岡はやや疑問気味だ。
「敵が馬鹿でないなら、集積所に二千くらいは防衛に貼り付けておくでしょう。騎兵が回り込んで叩くには少々多すぎますし、航空部隊にしても、二千丁の小銃に狙われたら堪りません。貴重な航空部隊ですからそれなりに『叩ける状況』を作ってやらないと。航空部隊だって万能ではありません」
まもなく敵が近づいてくる。当然、森の方を警戒するらしい。
「どうだ?」
「もうちょっと」
マスターズの言葉にスコープをのぞき込んだクライファールは狙いを定める。じりじり接近する敵の偵察兵をゲット。
「ぬふふふふふ」
一撃!
敵偵察兵はもんどり打って倒れた。
「他の者は迂闊に撃つなよ」
シュミットが言って回る。闇雲に狙撃でぱらぱらと撃ち始めると数が少ないのがばれてしまう。この場合、凄腕の狙撃兵が一人いるのだ!と言う風に見せつけた方がいい。少数と侮ると痛い目に遭う、と相手にいかに思わせるかである。大軍に見せかけるというのはこれでなかなか難しい。
敵の反応は素早かった。数名がやられるとすぐに一軍が森へ向かって進出してくる。
「思ったより早いなあ」
「敵も進撃急いでいるんでしょ」
すぐにわーっと森の中に入る。
「おおっと、来たなあ」
黒乃 音子(くろの・ねこ)が喧噪を聞きつけた。
「それじゃ、準備はいい?」
フランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)が合図すると、一団が一斉に森の中で発砲を開始した。黒乃達としては大体一個小隊くらいに分かれ、入れ替わり立ち替わりあちこちから撃っては逃げ撃っては逃げ回り込んで攻撃を続ける。
「例の蠍が出てこないが?」
「連中も虎の子を簡単に投入するつもりはないようであります」
アルチュール・ド・リッシュモン(あるちゅーる・どりっしゅもん)が言った。ワイフェン側から見れば大蠍は要するに戦車である。森林地帯は動きを制限されやすい。連中は正面の突破戦力として大蠍を使うつもりなのであろう。一方でリッシュモンは森林で騎兵突撃を行うつもりであったがこれは不可能である。森林を普通に移動はできるが直線でチャージできないため、騎兵突撃ができないのだ。そもそも志賀が騎兵大隊をこちらに回しているのは退却時の脚を確保するためである。
概ね、強襲偵察大隊が下がると、今度は別方向から下車した騎兵大隊が攻撃を掛ける。
騎兵大隊の重騎兵中隊には機関銃装備のサイドカーがある。集中火力はかなり高い。重騎兵中隊の連中が射撃するとばたばたと敵は倒れていく。敵も負けてはいない。何しろ数が多い。あちこちで教導団兵も撃たれている。
「敵は上手く引き込めているのかなあ?」
けなげにもカービンで援護する熊猫 福(くまねこ・はっぴー)は敵の足元を狙っている。少しでも敵の進撃を遅らせていらいらさせることである。
「悪くはないなあ、二千、いや三千くらいは引き込めているはずです。このまま粘ってもっともっと敵を引きずり込みましょう」
しかしながら戦力差は歴然としている。森林で防御なので有利だが、こちらの戦力は千に満たない。
「思ったより負傷者が出ています。引き際を誤らないようにしないと」
負傷者を担ぎながらハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)が戻ってくる。
「そろそろまずいか?」
シュミットはちらりとそちらと敵の方を交互に見る。
「少し時間をください。軽傷はすぐ治療できます」
「解った。こっちは次のラインまで下がれ!負傷者を確実に回収しろ」
騎兵大隊も交互に下がっていく。ヒーラー系が手早く直すので上手く時間を稼げれば戦力の低下は最小限にできる。ある意味無敵モードである。
再び強襲偵察大隊が攻撃をする。
「はぁんまぁぁぁぁ!」
アデライード・ド・サックス(あでらいーど・どさっくす)は巨大な光条ハンマーを振り回している。光線兵器に撲殺されるというのは屈辱の極みであろう。しかしながらそうなると敵も群がってきて大変である。森の中は近接戦闘向きではあるが、こちらは数が少ないので厳しい。
「ちいっ、撃ちにくい」
ロイ・ギュダン(ろい・ぎゅだん)は長物のライフル型光条兵器を持ち出してきたが森の中では振り回すのも楽ではない。武器の威力頼みでは所詮どうにもならない。
「そろそろ、こちらも引いた方がいいよ」
シンシア・ランバート(しんしあ・らんばーと)がクライファールに言った。
「結構難しいわね」
狙撃は意外と使用状況を限られる。一番いいのが森の中から外を狙う場合だが、森の内部での戦いになると途端に役に立たなくなる。
「それ、これでもくらえ」
マスターズが手榴弾を放り投げる。これはこの状況では足止めに効く。爆発を背にすたこらさっさと後退する。
「どのくらい、引きつけた?」
後ろで支援していたファイディアス・パレオロゴス(ふぁいでぃあす・ぱれおろごす)が答えた。
「詳細は確認できませんがね。四千は超えているはすでしょう」
あまり本気で戦うつもりはないようだ。
双眼鏡で様子を見ているのはマリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)だ。
「敵接近、各員は直ちに戦闘態勢!」
「来た来たきたよお〜」
カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)も声を上げる。150高地の山頂からは接近してくる敵軍が見えている。B遊撃隊は砲撃部隊と航空部隊で敵を引きつける第二段階だ。
「こちら『クレーエ』、JG301各小隊攻撃準備」
(こちら『シュヴァルベ1』、了解)
(『レルヒェ1』了解)
小隊と言っても現状では二つしかない。爆撃部隊編成なので三機ずつ二個小隊だ。幸い、通信状態はいいようだ。
「油断はできない。発煙弾準備は?」
「いいよお。まかせて!」
スポルコフの元気のいい声が返ってくる。万一、通信が危なくなった状態に備えて煙で知らせる準備はできている。
「総員に通達、敵戦力150高地まで概ね一キロちょい。まもなく予定地帯に入る。注意するであります、例の蠍が出て来た」
150高地ははげ山とは言わないが高い木などが生えていないため視界は良好だ。また、敵から見て上り坂になるため、敵としてはまず突破戦力として大蠍を投入してきたようだ。
「150高地に向かって敵部隊近づいております」
ランカスターは150高地の頂上から見ているため概ね十キロ四方が見える。敵の部隊がわらわらと接近してくるのがよく見えている。今後、航空部隊との管制連携は重要になるため、今回の通信も重大である。
(了解、シュヴァルベ小隊、攻撃を開始する」
早瀬 咲希(はやせ・さき)少尉は上空からちらりと下を見る。ここからは豆粒に見える黒い影が山の斜面を登ろうとしている。
「小隊、急降下。同時急降下爆撃にて、敵の度肝を抜く!」
(了解)
(了解)
返答と共に三機のワイヴァーンは一気に降下をかける。黒点にしか見えなかった物が次第に大きくなってくる。
「投下!」
三機のワイヴァーンは同時に爆薬樽を放し、放り投げた。その勢いのまま地面に激突し、派手に土煙の柱を出現させた。土煙に混じって二匹の蠍が宙を舞う。
山頂の砲撃部隊からは歓声が上がった。実際の所、威力はそれほどでもないのであるが、敵にとっては空中から現れたワイヴァーンによって起こされた土柱は見たこともない様なものである。敵の先陣は頭を伏せて右往左往している。これにより、敵は多いに『びびった』わけだ。この一撃は効いた。敵はしばらく態勢を立て直すのに苦労する。そこに迫撃砲が火線を開いた。
エリー・ラケーテン(えりー・らけーてん)が弾を砲に入れる。鈍い破裂音がして飛び出した迫撃砲弾は山なりの軌道を描いて敵陣に着弾する。
「座標E4からF5まで射撃」
「了解」
ロイ・シュヴァルツ(ろい・しゅう゛ぁるつ)の声にラケーテンは再び迫撃砲弾を入れる。あらかじめランカスターが測定していたお陰で砲兵部隊は標定射撃(ある一定の範囲を座標で区切って目標を射撃する方法。効果的だが事前に綿密な測定が必要になる)ができるようになっている。
もう少し近くまで敵が来れば光条兵器をぶっ放したいところだが、距離がありすぎる。また砲兵部隊の場合、光条兵器の射程に入るくらいならすでに撤退していなければならない。砲兵部隊では光条兵器はほとんど役に立たない。
とにかくも砲撃で敵の頭を押さえ、蠍は空爆で撃退する。ぽろぽろ漏れてくる歩兵を護衛している連中が射撃で食い止めると言う形である。
「よし、いくわよおおお!」
レルヒェ1、朝野 未沙(あさの・みさ)准尉が降下態勢に入る。まず早瀬が敵を驚かせたので大分攪乱できている。これからの航空部隊は突破しようとする大蠍を急降下爆撃で食い止めることになる。
「とにかく、徹底的に航空部隊で脅かして、ワイヴァーンを脅威と思わせなきゃ」
ワイヴァーンを脅威と認識すれば敵は空爆を恐れて集積所を森の中に移す、それこそがこちらの付け目だ。多くの者は武器の威力に頼って勝とうとする。所詮武器頼みでは、もし敵がより強力な武器を持ちだしてきたら手も足も出ない。これが解っている者は案外と少ない。なればこそ、敵を致して敵に致されず、主導権を握る必要があるのだ。
斜面をよじ登ろうとする大蠍に向かって急降下する。翼を閉じ、そのまま降下、地面近くで翼を広げてブレーキを掛けるようにして爆薬樽を離す。目の前で大蠍に命中、鋏や脚がばらばらになって吹き飛ぶ。そのまま地を滑るように飛びながら勢いを利用して急上昇する。空戦の基本の一つは運動エネルギーの有効利用である。位置エネルギーと運動エネルギーを効率よく、無駄なく変換する。高度が高いと有利と言われるのはこのためだ。高度は速度に、速度は高度に変換できるからだ。
手前でそれなりの損害を出した敵側は怒り狂ったのか、あるいは山頂の部隊を障害と見たのか、次々と斜面をよじ登ってくる。それをまた、砲兵部隊と航空部隊で叩いていく。ワイヴァーンは現状六機しかいないため、フル回転だ。
150高地のこちら側、仮設航空部隊陣地。戻ってきた朝野機が着陸すると、直ちに次の出撃の準備がなされる。
「お姉ちゃん!」
朝野 未羅(あさの・みら)が駈け寄るとストロー付きのペットボトルを差し出す。朝野はそれを咥えて一口飲むと、150高地の方を見て言った。
「状況は?」
「いまは早瀬少尉、シュヴァルベ小隊が爆撃中だけど、少しずつ敵に近づかれているよお」
「まずいわね。後退支援を急がないと、爆装急いで!」
向こうでは朝野 未那(あさの・みな)がモモンガ兵と一緒に爆薬樽をごろごろ転がして来る。
「ワイヴァーンに水は?」
「口からペットボトルで流しこみましたぁ〜」
それを聞いた朝野はすぐにワイヴァーンに跨る。未那がしゃがんで樽のピンを抜く。
「安全装置解除」
「安全装置解除了解、出るわよ!」
再び翼をはためかせて飛び立つ。
150高地ではすでに砲兵部隊の撤収が始まっている。半分は迫撃砲を解体し、担いで山を下っている。次第に砲兵火力が弱まるとその分、敵の進行が早くなる。
「ほーら、どんどん来い。その方がこちらには助かる」
国頭 武尊(くにがみ・たける)はのぼって来る敵兵を見て手元のスイッチを二回、カチカチと動かす、途端に爆発が起こり、十数名の敵兵が吹き飛ぶ。
「何発も仕掛けられないんだよなあ」
爆薬に小石や釘をつけて疑似クレイモア地雷(小型の散弾をばらまき、兵員を殺傷する爆弾)をよっこらせとこさえて仕掛けておいた。近年、いわゆる対人地雷として削減対象になったりしているため、正規のクレイモア地雷は持ち込まれていない。
「ああ〜こりゃ、そろそろかな?」
国頭はライフルを構えるとそのまま山頂の方へ上がっていく。
「おいちゃん、こっちこっち」
スポルコフが手を振って撤退方向を示す。
「おいちゃんじゃない!俺ぁまだ若い」
最後に残った砲兵は運びきれない迫撃砲に手榴弾放り込んで敵に鹵獲されないように破壊する。
最後に残った殿軍が牽制しながら後退するが、この場合、危険度が高いので懲罰部隊の役割だ。
「くそったれがぁ!……」
ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)は怒っていた。懲罰部隊から原隊復帰するはずだったのだが、書類がそうなっていないため、いまだ懲罰部隊のままである。
「あのアマ……書類改ざんしやがったな」
ライフルを構えて撃ちまくりなが目尻をつり上げている。
「生き残ったら……。押し倒してひんむいて(以下倫理規定検閲済み)してやるうぅぅぅ!ヒァッハッハッハァ〜〜〜〜〜」
そう言いつつ律儀に後退している。案外真面目らしい。敵も山頂付近に達している。JG301は引き続き爆撃を続けているがさすがに限界である。
山頂によじ登ってきた敵をげしげし蹴りながら一斉射すると、すぐに後退にかかる。しかし、そこにさらに後ろから射撃が加わる。
「うおぉわぁぁっ!」
やや下側では水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)がアサルトカービンを構えている。
「あらあら、撤退が早すぎるんじゃないのぉ〜、ちゃーんと殿軍してくれないとあたっちゃうじゃないのぉ〜」
そう口で言いながら表情はあからさまに、ちぃっ、当たらなかったかと言う表情だ。
「てめぇ!何しやがる!」
「(お仕置きがまだ足りないようねえ……。せっかく書類改ざんしたのに)」
聞こえないように言って水原はカービンを構え直した。
「あっらあ〜。ちゃんとしないと突破されちゃうわよね」
と、そう言っていたとき、何やらひゅるるるるる……とのんびりした風切り音が聞こえた。次の瞬間、山頂に爆発が起こった。
「どわわわわっ」
「ひうぁいいい」
敵側が投石機で遠距離射撃してきたのだ。攻守所を変えて敵側の攻撃圧力は急速に上がっている。懲罰部隊はそのまま転がるように、というか文字通り斜面を転がってそのまま撤退していった。