|
|
リアクション
「ハッピーバレンタインー!」
校長室に飛び込んできた神代 明日香(かみしろ・あすか)を見て、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は目を丸くした。
「いったいなんですかぁ?」
「バレンタインですよ、バレンタイン~B今日はチョコケーキ作ったので食べてください~v
明日香は用意してきたチョコレートケーキと紅茶を並べて、エリザベートを誘った。
「さ、一緒に食べましょう~v
「ふむ。では、いただくとしますかぁ」
エリザベートは誘いに乗り、一緒にチョコケーキを食べた。
「手作りですかぁ。よく出来てますねぇ」
「エリザベートちゃんはいっぱいチョコレートもらいましたか?」
「もらいましたぁ。大ババ様も含めて、チョコが積みあがっているのですぅ」
その返事を聞き、やっぱりエリザベートは人気があるのだなあと思いながら、明日香は手を伸ばし、ぎゅっとエリザベートを抱きしめた。
「な、なにですかぁ?」
ビックリしたエリザベートがもがいたので、明日香は嫌がられたかと思い、手を離した。
しかし、そうではなく、エリザベートは驚いたのだ。
「きゅ、急に何なのですかぁ」
前に明日香がエリザベートの手を取ったときは、人ごみで手が離れないようにと言う理由があったが、今は何の理由もなく急にだったので、エリザベートは意味が分からなかったのだ。
「ごめんなさい~Aバレンタインの雰囲気にあてられちゃったのですぅ」
「なるほど。雰囲気にってあるものですかぁ」
嫌がられたわけではないと分かり、明日香はエリザベートに尋ねた。
「エリザベートちゃん。私のこと、明日香って呼んでくれませんかぁ?」
「明日香?」
「はい~v
小首を傾げた後、エリザベートは了承した。
「分かりましたぁ。では、これからはそう呼びます。明日香」
「ありがとうございます~B大好きです、エリザベートちゃん♪」
明日香はニコニコとうれしそうにエリザベートにお礼を言ったのだった。
その頃、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)はルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)を迎え、ルルールの持ってきた手作り苺チョコを食べていた。
「ふむ、これは美味じゃ」
「でしょでしょー? でも、ワルプルギスの大老様が気にいってくれて良かったー♪」
ハートを飛ばしそうな勢いで、ルルールが喜ぶ。
引率でついてきた夢野 久(ゆめの・ひさし)は2人の様子を見ながら、よくそう簡単に招き入れてくれたものだと思った。
ルルールはいかにも魔女らしい格好をした魔女だが、所属自体はパラ実だ。
パラ実とイルミンスールはあまり交流はない。
交流と言う点で言うと神楽崎分校のこともあるので、パラ実と百合園が協力的と言えるのだが、同時に関係で言うならばパラ実は教導団の敵である。
そして、イルミンスールは教導団と関係が良好なので、パラ実はイルミンにとって仲の良い側の学校ではない。
だから、アーデルハイトはよく入れてくれたものだと久は思っていたのだ。
同時にもう一つ、ルルールが機嫌がいい理由があった。
きっとアーデルハイトは忙しくて、どこかでちょっと会って、苺チョコを渡すだけで、少しでも話せたらそれで幸運くらいに思っていたのだ。
それが、こうしてアーデルハイトと一緒に紅茶を飲んで、一緒に苺チョコを食べることが出来た。
ルルールは感激と言うくらいに喜んでいたのだ。
「新米の頃からワルプルギスの大老様のファンだったのよー! まあ、魔女とか魔術師ならば当たり前だけどー」
ミーハーといわれようと、ルルールはアーデルハイトが好きだった。
「綺麗だし、かわいいしー、ああんもう、食べちゃいたい!」
「……私のスペアボディを作るときに、妙なものを混ぜるでないぞ。それから」
「うん、それから?」
「大老というほど、私は老けてはおらん!」
「あら……気に入らなかったならごめんねー。それじゃ呼び方変えるね。何がいいかな~今度までに考えておくね!」
「ふむ、それならまあよい」
大ババ様と呼ばれると怒るアーデルハイトなので、年寄り扱いは好きでないらしい。
「ねね、それじゃちょっと聞いていい? ご趣味とかないの?」
「趣味はイルミンスールの生徒を捕まえて、あれこれくどくど説教することじゃ」
「へえ、それじゃ、今は何のシャンプー使ってるのかな?
アーデルハイトの髪にルルールが手を伸ばしかけ、久は警戒したが、触れる前にその手が止まった。
「どれということもないし、贈り物でもらったものも使っておるが、香りの良いものが好きじゃ」
「そうなんだー。3月にお誕生日だったよね。プレゼントを渡せる機会があるといいな」
ルルールはアーデルハイトの話を楽しみ、アーデルハイトが時計を見て時間を確認したのに気づいて、何か用があるのだろうと察して、退出した。
帰りに久はルルールに尋ねた。
「あわよくば手篭めにしたい! とかひでーことを喚いてたわりに大人しかったな。いや、良い事ではあるんだが……何で今回に限って自重したんだ? 流石に面と向かったら萎縮したのか」
警戒していた久は拍子抜けしたように言った。
すると、ルルールは肩を竦めた。
「そりゃ抱きついたり揉んだりしたかったけど……隙がなかったのよ」
「なるほど、流石だねえ」
久とルルールは感心しながら、イルミンスールから帰ったのだった。