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リアクション
■□■3■□■ スラムの戦い
「ここが、俺の墓か……」
姫宮 和希(ひめみや・かずき)は、
悪と戦うシャンバラ解放の勇敢なレジスタンス戦士として死んだらしい、
未来の自分の墓を訪れていた。
未来の和希が、
「困った時には俺に聞きに来い」
という言葉を、レジスタンスの同胞達の間に残していたため、やってきたのだ。
墓に祈りをささげようとひざまずくと、墓石が動かせるようになっており、
地下のスペースに降りることができた。
その中は戦士の試練の場になっており、襲いくる罠を抜けた和希は、棺の間へとたどりつく。
「これは……!?」
棺には遺体はなく、生前に和希の集めた強力な武器や、
レジスタンス活動に役立つ装備が詰められていた。
棺の裏側にはメッセージが彫られている。
「未来は自分達の手で切り開け」
和希が、墓から武器を持って帰ってくると、
スラムのパラ実生達が歓声を上げる。
「生徒会長!」
「実は生きてたんだな!」
こうして、和希はパラ実生を集めて、各地の勇士と協力して連合を組んでいった。
【紅桜】のリーダー未来の鬼崎 朔(きざき・さく)とも連絡を取り、協力することにする。
★☆★
「うーん、どうにも資金不足ですぅ」
教導団残党のレジスタンス組織の倉庫係になった、現在の皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)は、
兵站面から組織の立て直しに協力しようとしていた。
「各種物資の在庫確認、
横流しや勝手な持ち出しがないかどうかのチェック、
毎日の食糧の消費のチェックと……。
計画的な消費と無駄遣いの削減のための計画を作ってみたものの、
根本的に資金が足りないですぅ。
それに、重要物資は宦官達とその配下の軍隊に独占されていますからねぇ」
そこに、未来の皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)が現れる。
「見つけましたよぉ、過去の私」
「未来の私? ずいぶん羽振りがよさそうですぅ」
未来の伽羅は、死の商人になり、銭ゲバに拍車をかけていた。
静香もレジスタンスもお客様であり、
公的部隊の物品横流しは日常茶飯事、賄賂に付け届けは当然として、
ヴァイシャリーの豪商として君臨しているのだった。
「過去の私なら、番頭役としてうってつけですぅ。
もちろん、相応の報酬は払いますよぉ」
現在の伽羅は、二つ返事で未来の自分の提案を受け入れるのであった。
★☆★
未来の神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)は、
本来、貴族階級としての地位が約束され、
またパートナーのミルフィとの結婚を間近にも控えていたが、
未来の静香とラズィーヤを止め、ヴァイシャリーを元の平和な街に戻すために、
あえて反旗を翻し、
レジスタンス組織【アリスの剣】の一員としてミルフィと共に活動していた。
現在の有栖は未来の自分に出会い、事情を説明し、助力を仰ぐ。
「こんな『未来』は、間違っています……!
私も協力します。
現在の……過去からやってきた静香校長のお力になってもらえないでしょうか?」
「もちろんです。
ちょうど、鬼崎 朔(きざき・さく)さんや志位 大地(しい・だいち)さんの
【紅桜】とも協力して、一斉蜂起の準備を進めているところでした。
過去の私が来てくれれば心強いです」
未来の有栖は、現在の有栖をアジトに案内して手料理をふるまい、
協力を宣言した。
★☆★
「戦争ですぅ。
戦争の始まりですぅ」
【アリスの剣】や【紅桜】達、レジスタンスに、
大量の武器や食料を売り、未来の皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)は銭ゲバであった。
★☆★
(未来のオレはモテモテハーレム三昧してるんだろうぜ、グヘヘ。
宦官だか何だか知らねぇが、良い気になるんじゃねぇぞォ)
吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、
パラ実生のすみかであるキマクを取り戻すため、宦官静香と戦おうとしていた。
まずは、仲間を増やすためスラムで歌うなどのパフォーマンスを行う。
「お、おい、【メガトロール】が歌を歌い始めたぞ!」
「違うぞ、あれ、色違いじゃねえか!?」
「そんなことはどうだって……ぐあああああ」
スラムの人々がバタバタ倒れる中、
緑色の肌の巨漢が現れた。
未来の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)であった。
自分がモテないのは「まだイケメン度が足りないから」と悟った竜司は、
キマク沈没前にパラ実改造科で「超イケメン改造」を施したのだ。
しかし改造は失敗、容姿はほぼそのままで肌だけが緑色に変色してしまった。
そのため、【メガトロール】と呼ばれるようになったが、
宦官の支配により、モヒカンやブサイクが虐げられるようになったため、
ブサイク達から「この中で一番ブサイクだ」という事で祭り上げられ、
スラムに【メガトロールの塔】を作り、スラムの一部を支配しているのだった。
「すげえイケメンが超美声で歌ってると思ったら、過去のオレじゃねェか」
「未来のオレ、ますますイケメンになりやがったな、グヘヘ」
二人の竜司は意気投合し、静香を一緒に倒すことにした。
さらに、姫宮 和希(ひめみや・かずき)と二人の竜司は、パラ実のよしみで同盟した。
★☆★
そんな中、現在の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は、
「スラムの暴動を抑えるよう」命じられたので、兵を率いてスラムへやってくる。
適当に報告する予定の亜璃珠であったが、
そこでは未来の国頭 武尊(くにがみ・たける)が暴れていた。
未来の武尊は、
ヴァイシャリーのスラムの一角で、
パラ実生達を取りまとめ、「童帝」を名乗りひとつ上の男になる事を目指していたが、
「童帝」を名乗る資格が無かった事が露見して部下に背かれ地位を追われたのだった。
「スーハー、スーハー……。
新鮮なパンツをよこせええええ!!」
新鮮なパンツを餌に悪の大宦官、桜井静香の忠実な僕になった未来の武尊は、
パンツを頭にかぶり、さらに覆面にして、
レジスタンス狩りを行っていた。
「おのれ、【パンツを被った悪魔】め!」
「【パンツドランカー】だー!」
「【大宦官の逸物】だー!」
レジスタンスが逃げ惑う。
未来の武尊は、捕縛したレジスタンスからパンツを奪う事はあるが、
中身には手を出さない紳士のため、「処置済み」なのでは? と疑われている。
「って、いいかげんにしなさい! この変態!」
「女の子に迷惑かけてんじゃねえぞ!」
「「パンツより大事なものがあるだろうがー!!」」
未来の武尊は、現在の亜璃珠と、和希と、二人の竜司によってぶっ飛ばされた。
「トロール!!
君だってモテないだろおおお!?
なぜだああああああ!!」
未来の武尊は、そう二人の竜司に言い残し、
いつのまにかもぎ取った亜璃珠と和希のパンツを手に、お星様になった。
「あいつ……次に会ったらブチ殺す!!」
「野郎……俺のパンツを奪っただと……」
亜璃珠と和希は、今度会ったら未来の武尊を殺すと誓うのであった。
★☆★
レジスタンス【紅桜】の、3日間の襲撃作戦は着々と進む。
現在の鬼崎 朔(きざき・さく)は、
貴族のための食料や生活必需品を備蓄している倉庫を焼き討ちして逃走する。
最後の挑発文として、
「散る桜」
と書かれた紙も置いていく。
挑発文を集めると、
「花の宴 酌み交わす酒 散る桜」
となり、
桜井静香の圧政を終わらせるという意味になるのである。
「うまくいったな。
後は、一斉蜂起だけだ」
未来の朔は言う。
★☆★
しかし、【紅桜】の襲撃作戦がうまくいっているのには理由があった。
「ここから出してください!」
現在の七那 夏菜(ななな・なな)は、鍵のかけられた扉をたたき続ける。
未来の自分によって、屋敷に監禁されてしまったのである。
「未来のボク……どうしてこんなことを」
夏菜は疲れて扉を背に床にへたりこむ。
一方、レジスタンスのアジトにて。
未来の七那 夏菜(ななな・なな)は、
パートナーがレジスタンスとの戦いで、
自分を守ろうとして重傷を負い永い眠りについたため、復讐のため宦官になったのである。
まだ男の娘とバレていない過去の自分と入れ替わり、
服を奪って、レジスタンスの本拠地に案内してもらい、
反抗作戦の情報を流しているのだった。
(すべては、ねーちゃんを傷つけた人達に復讐するために……。
僕を守ろうとしたねーちゃんに……罪なんてなかったんです……)
過去の純粋な夏菜は、「宦官」という言葉の意味も理解していなかった。
(純粋なだけでは、大切な人を守れないんです……。
正義を語るレジスタンスの人達だって、ねーちゃんを殺した……)
未来の夏菜は、【紅桜】はじめ、レジスタンスの本拠地も、
静香に伝えていた。
襲撃作戦がうまくいったように見えたのは、
未来の夏菜が事前に伝えていたために、静香が対策を打っていたのだった。
一斉蜂起の作戦も、すでに静香側にバレている。
未来の夏菜は、暗い笑みを浮かべて、部屋の隅から
勝利によろこぶレジスタンス達をみつめた。
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