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【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 後編

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【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 後編
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■□■2■□■ イルミンスールのカニ養殖作戦

切り株となったイルミンスールにて。

現在のリネン・エルフト(りねん・えるふと)は、
ソーセージ入手のため、
エリザベートやアーデルハイトに異なる過去や未来に送ってもらえないか相談していた。
「ソーセージが必要ないような平和な世界なら、
この世界にもらってくることができるかもしれないわ。
多少、問題があったとしても……『可能』なら
私はあきらめない」
現在・リネンが真摯に語る隣で、未来・リネンが現れ言う。
「別の時代に行くこと……私も立候補するわ」
「……!」
現在・リネンは、未来・リネンの様子に驚く。
静香に逆らい、市中引き回しの刑を受けていた未来・リネンは、生きる意欲を失っていたが、
現在・リネンが行動を起こすと聞いて駆けつけたのだった。
「もう一度だけ……信じてみるわ。私も、先の事を」
未来・リネンは、現在・リネンに微笑を浮かべる。
現在・リネンは、未来・リネンの手を取るのだった。

「ソーセージが1本では皆が幸せになれませんわ!
せっかく『時間がある』のですから、活用いたしましょう!」
現在の狭山 珠樹(さやま・たまき)は、カンガンガニを過去の世界に持ち帰り培養し、
金色のカニを冷凍保存するのを提案した。
「今、未来の我が、カニのことを調べてくれていますわっ!」
「未来の珠樹ですかぁ?」
ボンキュッボン美少女のエリザベートは首をかしげる。

★☆★

静香の宮殿にて。

宦官になったふりをしてスパイとして宮殿に潜入していた未来の珠樹は、
決死の覚悟で「蟄居」の部屋に潜入していた。
未来・珠樹は「宦官ではない」のだから、カンガンガニに襲われたら一大事である。
「きっと、つるぺたの子どもには大人しいとか、何か弱点があるに違いありませんわ!」
(万一、危なくなったら、部屋からカニを溢れさせてやりますわ。
そうすれば、張角も牽制できるでしょう)
未来・珠樹は魚肉ソーセージでカニをおびき寄せ、カニがソーセージを切り刻んでいる間に、
部屋の奥にあった秘伝の飼育書を入手していた。
「やりましたわ!
……それにしても、痛い光景ですわね」
未来・珠樹は古い本を手に、ソーセージをメッタ切りにするカニ達を見てつぶやくのであった。

★☆★

再び、イルミンスールにて。

「コピーというかクローンっていうか、
そういうのは今のボクが読み取れる範囲にも見かけられたから、
それで金色甲羅のカンガンガニを増やせば……」
現在の峰谷 恵(みねたに・けい)は、
金色のカンガンガニの甲羅を入手して、未来の自分とともにクローンを作り、
ソーセージを量産しようとしていた。
「ああ、魔道書作った人は体が欠損したときの保険に研究してた奴ね」
未来の恵はつぶやく。
魔法生命体作成に応用しているため、未来・恵にとって、
クローン作製はお手の物であった。
「それで、ソーセージを量産して、必要な人に配れたらと思うんだ」
現在・恵は言う。

★☆★

そこに、現在のエル・ウィンド(える・うぃんど)が現れた。
「ラズィーヤ様は、
『宦官の男の娘が元に戻れる、カンガンガニのソーセージには、100万匹に1匹しかいない、
金色の甲羅のカンガンガニを混ぜないといけないのですわ』
『ソーセージが1本だけでは、元に戻れるのは1人だけですわね……』と仰いました。
これってラズィーヤ様は金色の甲羅のカンガンガニ1匹から
ソーセージは必ずしも1本しか作れないとは言ってないですよね。
ならソーセージをでっかい容器に入れてたくさん作ればいいじゃないですかー。
足りなければアーデルハイト様に頼んで、
魔法で金色の甲羅のカンガンカニだけを増やせばOK!
HAHAHA、ボクの黄金の脳細胞が怖いぜ!」

なお、現在・エルは、前回、静香のスカートをめくったことを謝罪している。
「HAHAHA、静香校長、申し訳ございません!
今度こそ、未来を救うよう頑張りますので信じてください!」
とさわやかな笑顔で言い、
「スカートの中は見てませんので! スカートの中は見てませんので!」
と、周囲の反応は無視して強調していた。
なお、静香本人は、
「もうお婿に行けないかも……」
と涙目だったが、エルは気づいていない。

「でっかい容器でソーセージ作るというのはさすがに難しいと思うが、
私の魔法でカニやソーセージを増やすのは可能じゃのう。
それに、クローンの技術で増やす作戦も併用すればよいじゃろうて。
さらには、タイムトラベルも使えば、
ソーセージを十分な数入手するのに成功する可能性が高まるじゃろう」
アーデルハイトはソーセージを増やそうと集まった一行を見渡していう。
「わたしの魔法で危険なことはないので、安心するがいいですぅ」
エリザベートも、二人のリネンに言う。

★☆★

世界樹の切り株の上で団子を食べていた月谷 要(つきたに・かなめ)は、
ボンキュッボンになっていた未来のエリザベートを見て驚いていた。
「なん……だと……」
一緒にいた未来の要は、驚いても団子を落とさない過去の自分を見て言う。
「僕らしいですね」
未来・要は、魔剣士の傭兵としてイルミンスール付近で活動中であり、
主な依頼主はワルプルギス一家や王 大鋸(わん・だーじゅ)の孤児院であった。
時々襲ってくる盗賊化したパラ実生などを相手に
「情熱思想理念頭脳気品食欲貪欲さ、そして何よりも──愛が足りない!」
と豪語しつつ、
過去の要からは考えつかないほどの剣の腕で敵をなぎ払うのであった。
武器は片手剣と楯で、
銃はいざという時のためにデリンジャーだけ持っているらしいが、
メインアームは銃から剣に完全に移行している。

「ええっ!?」
二人の要は話し合い、未来の要がなぜ今回の依頼を受けたのか聞かされて、
現在の要は驚く。
未来の要はパートナーの悠美香と結婚しており、5歳の娘がいる。
エリザベートの依頼を受けた理由は、
イルミンスールの復権後に一定の権力とポジションを約束されているためであった。
自分だけならそんな依頼は受けないが、
出産の影響や強化人間手術で体が弱った妻や娘、
他のパートナー達を養うため依頼を受けたのであった。
なお、この理由を聞いたために現在の要は未来の要に協力することを決めたのである。

「黄金の甲羅のカンガンガニを混ぜないとソーセージに効力はない。
逆をいえば、黄金の甲羅のカンガンガニを混ぜれば効果がある。
ならいっぱいカンガンカニを倒して、
その中に細かくすり潰したオウゴンカンガンガニを混ぜて、
でっかいソーセージを作って皆でわければいいんじゃないかな?」
現在・要の提案に、未来・要もうなずく。
「ソーセージを奪うより、ここで作るのを護衛する方が効率がよさそうですね」

★☆★

二人の恵は、クローン作成を行い、
現在・エルはアーデルハイトと一緒にカニを増やす。
そして、二人の要はソーセージ作りを手伝う。

そして、未来・珠樹の決死の行動で、カニの飼育方法が判明したのを受けて、
二人のリネンと現在・珠樹は、過去へ行ったのだった。

★☆★

現在のイルミンスールにて。

「金色じゃないやつは、じゃたちゃんにあげますわ」
現在・珠樹は、ジャタの森の精 じゃたに、普通のカンガンガニを渡す。
「カニうまいじゃた」
じゃたは、甲羅もハサミも残さずバリバリ食べる。
「これで少しはソーセージの本数が稼げるというもの。
上手くいけば、未来のエリザ様にご褒美がもらえるかも?」
現在・珠樹はそんなことを考えていたが、ふと手を滑らせてしまう。
「今、培養水槽に落としたのって……」
現在・リネンがたずねる。
「……きっとだいじょうぶですわ」
(培養水槽に、間違ってスベスベマンジュウガニを入れちゃった。
ま、いっか)
しかし、この時の現在・珠樹の行動により、
後に大きな事件が起こることは誰も知らない。

★☆★

一方、未来のイルミンスールにて。

さらに、未来・エルも、爆発から奇跡的に生還してやってきていた。
「HAHAHA、アメリカ合衆国大統領を舐めてはいかんよ!
諸君、並びに静香校長よ、これで世界は救われる!」
未来・エルは、アーデルハイトにさらに未来に飛ばしてもらい、
平和な世界から金色カンガンガニを入手してきていたのだった。

「それじゃがな、今、カニはもうこんなにおるぞ。ほれ」
アーデルハイトが、魔法で増やしたカニと、
二人の恵がクローン技術で増やしたカニ、
過去の世界で培養したカニを見せる。
「ええーっ、じゃあ、ボクがヒーローになったことによる、
金色の像はどうなるんですか!?」
現在・エルにアーデルハイトは言う。
「まあ、多分、建てられるじゃろう。
一応、アメリカ合衆国大統領じゃしな」
なお、この件でも、さらにひともんちゃくあるのだが、それは別の話である。