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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

リアクション

 
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「今のところ、誰かが活動しているという痕跡は残っておらぬな」
 ときおり地面の様子を調べながら、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが言った。
 誰かが定期的にここで何かをしていれば、その移動経路が獣道のような形で痕跡として残っているはずだ。あるいは、住み着いている獣がいても、同様に何か生活の跡のような物があるだろう。
「いいえ、こっちに来て」
 何かを見つけたらしく、ローザマリア・クライツァールがグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーを呼んだ。
 下生えに、二本の並行したすじが残っている。グラススキーの跡のようにも見えるが、とりあえず野生生物の物とは考えにくい跡だ。
「辿ってみましょう」
 ローザマリア・クライツァールは、その跡を辿っていった。
 
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「さあ、早く遺跡を探しましょう」
 ゴチメイたちとはぐれてしまっても、神和瀬織はめげずに積極的に先頭に立っていた。
「こういうときこそ、まとまって行動しなくちゃだめだぞ」
 はぐれたら大変だと、神和綺人が注意する。
「殺気は感じられませんから大丈夫だとは思いますけれど、メカ小ババ様のような機械だと殺気は感じとれませんから注意してください」
 周囲に気を配りながらクリス・ローゼンが言う。
「うむ……」
 嫌な予感を覚えつつ、それが杞憂で終わるように祈りながら、ユーリ・ウィルトゥスがクリス・ローゼンの反対側に注意を配りつつ神和瀬織の後を追った。
 
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「参ったな、せっかくもっとゴチメイの人たちと仲良くなれるかと思ったのに、こんな所ではぐれるとはな」
 油断なく周囲を索敵しながら、三船敬一がぼやいた。
「あの状況ではしかたないであろう。無事辿り着けただけでもよしとしなければな」
 同じく敵に備えて進みながら、コンスタンティヌス・ドラガセスが言った。
「まったく、これじゃ、せっかくの飛空艇も役立たずですね」
 軽く地上から浮かせた飛空艇をなんとか引っぱっていきながら、白河淋が言う。
 この霧の状況では、迂闊に上空に飛びあがると、知らないうちに島の外に飛び出してしまって二度と戻れないということもありえる。それに、上からでは地上を調べられそうにもなかった。しかたなく、ときおりコンスタンティヌス・ドラガセスが剣で道を切り開きながら、三人は進んで行った。
 
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「なに、こんなのがいるなんて聞いてないわよ。よっぽど、この先に何か都合の悪い物があるようね」
 突如として遭遇したメイドロボから攻撃を受けて、メニエス・レインは顔を顰めた。敵がいるのは分かっていたが、見たことのない敵は、初手に困る。
 ミストラル・フォーセットが、盾となってメイドロボのビームを耐光防護装甲でかろうじて弾く。その後ろで、メニエス・レインがすっと手を挙げた。呼び出された雷が、メイドロボの上に降り注いだ。
 白い霧を青い閃光で染めた雷光が、すぐに、炎上するメイドロボの赤い炎と黒い煙で霧を汚した。
「無粋な。私に楯突いた報いね。それにしても、ここには地球の殴殺寺院の基地でもあるのかしら。まあいいわ。進むわよ、ミストラル。この先に何かあるのなら、それはすべて私の物よ」(V)
 二体のレイスを先導させながら、メニエス・レインは進んで行った。
 
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「下がって、クレア」
 メイドロボに襲われた安芸宮和輝は、クレア・シルフィアミッドを安芸宮稔に任せると、視界の悪い霧の中を一気に突っ込んでいった。
「私だって、役にたちますわ」
 光条兵器のツクセヨシノを取り出すと、クレア・シルフィアミッドはその大きな箒をブンと振り回した。青白い穂の部分が霧を薙ぎ払い、瞬間周囲の視界がクリアになる。
「助かります!」
 はっきりと姿が見えるようになったメイドロボに、安芸宮和輝が轟雷閃を纏わせたライトブレードで致命傷を与える。切り口からスパークをあげたメイドロボが、反撃しようとしてボンと爆発して下半身だけになった。
「次が来ないうちに移動しましょう」
「そうですね。できれば、誰かと合流したいですから」
 クレア・シルフィアミッドを気遣って、安芸宮稔と安芸宮和輝は、急ぎその場を離れることにした。
 
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「何か、あちこちで爆発音が聞こえなかったかい?」
 メニエス・レインや安芸宮和輝の戦いの音を微かに聞きつけて、神和綺人がみんなに注意するように言った。
「殺気は感じられませんが……」
「邪気もないですね」
 殺気看破とディテクトエビルで周囲を調べたクリス・ローゼンと神和瀬織が言った。
「いや、来る!」
 禁猟区に危険を感じて、ユーリ・ウィルトゥスが叫んだ。
 彼と神和瀬織の使い魔コウモリが、霧の中に潜む何かを感知して、チチチッと鳴いた。
「何者だ!」
 神和綺人が、サイコキネシスで周囲の霧を払った。
 連続してバネを弾くような音をたてながら無限軌道で進んでくるメイドロボの姿が顕わになった。
 間髪入れず、バーストダッシュで飛び出したクリス・ローゼンが、雷光を纏ったクレセントアックスでメイドロボを十文字に切り裂いた。
「問答無用で破壊してしまいましたが、これはなんでしょう?」
 メイドロボの残骸を見下ろして、クリス・ローゼンが言った。
「蒼空学園で、メカ小ババ様と一緒に暴れたメイドロボのようです」
 銃型ハンドヘルドコンピュータで、事前に仲間たちと共有しておいたデータを検索した神和瀬織が答えた。
「すると、この先にメカ小ババ様の基地でもあるんでしょうか」
「よし、行って確かめてみよう」
 放ってはおけないと、神和綺人は先へと進んだ。
 
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「何もありませんねえ。これじゃあ、今晩のおかずが……」
「うーん、食料調達もするつもりだったんだが、この感じだと長期滞在はかなりの準備が必要だなあ」
 予定と違ってきてしまい、少しおろおろとする翌桧卯月に、日比谷皐月が答えた。
 現地調達が難しいのであれば、食料を始めとする生活用品は空京などから運び込まなければならなくなる。ここを基地にするにも、遺跡などの研究地にするにしても、結構やっかいだ。
「まあ、まだ肝心の遺跡が見つかっていませんけれども……」
 先は長そうだと、雨宮七日が小さく溜め息をついた。
「しっ、静かに」
 ふいに、日比谷皐月が、雨宮七日を黙らせる。
 何かが近づいてくるような機械音が微かに聞こえた。禁猟区が、危険を知らせる。
「卯月!」
「はいっ!」
 呼ばれた翌桧卯月が、両手足の鎧となって日比谷皐月に装着された。同時に、ふわりと、身体の前後を隠すサーコートと、全身をつつむオーバーコートが舞い降りるようにして日比谷皐月をつつみ込んだ。
「そこですか!」
 雨宮七日が、音のする方に光球を放った。フラッシュと共に、霧の中に女性の人影が浮かびあがる。同時に、その人影の胸からミサイルが飛んできた。
「危ない!」
 とっさに、雨宮七日がサイコキネシスでミサイルの軌道を変えた。狙いの外れたミサイルが、日比谷皐月の背後で爆発する。
「敵か!」
 日比谷皐月は、ライトニングランスを使って、メイドロボを仕留めた。
「いったい、この先に何があるんだろう」