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第1章 乙女は準備も抜かりなく!
灼熱の太陽が、乙女たちの白い肌を小麦色に変えるべくさらに力を入れ始める、そんなシーズンの始まり。
海辺に色とりどりの愛らしい華や、艶やかな華が咲く様子は、パラミタ内海の海開きに相応しい光景であると言えるでしょう。
本日は、待ちに待った海開き……もとい、シャンバラ1の大和撫子を決定する“ミス・百合園”コンテストの日です。
もちろん参加するのは、可愛い女の子たちばかりです。
はたして“ミス・百合園”の栄冠は誰の頭上に輝くのでしょうか!?
「静香さん。今日はまた、一段と可愛らしいお姿でございますわね」
ピンク色のふりふりのホルターネックセパレーツに、腰に大きなリボンのついた段スカートの水着姿の百合園女学院校長・桜井 静香(さくらい・しずか)に、紺色のビキニとロングパレオ姿のラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)がそっと白いパーカーを肩にかけてあげながら声をかけます。
「良い天気になってよかったですけれど、日に焼けてしまいますわ。テントの方へ参りましょう」
「うん、今日は楽しみだねっ!」
静香は『審査員席』として設けられた、白い台の上に幾重にもレースを重ねて作られたような豪奢なテントと、その奥に見える今日の出場者の控室と更衣室がある、仮設とは思えないほど頑強な作りをした建物を、大きな目を細めるようにして見つめ
「早くみんな準備出来ないかなっ!」
と弾ける笑顔でテントに向かって歩き出しました。
「うふふっ、、お嬢様、お肌もお綺麗ですわ、、♪」
今回の出場者の一人であるミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)は、更衣室の中の一室で、恥ずかしがってなかなか着替えようとしない神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)の洋服を、楽しそうに剥ぎとっていました。
「あ、、やあぁっ、そんなに見ないで、、」
頬を赤らめて抵抗する、有栖のそんな反応はますます、ミルフィの気持ちを掻き立てます。
「お嬢様のお胸、ちっちゃくて可愛いですわ。フリルのビキニですもの。気になりませんでしょう?」
「ミルフィの胸、、おっきい、、」
有栖はタンクトップ風のビキニを着ていても尚目立つ、ミルフィの胸を見つめました。
「有難うございます。さ、お嬢様、水着にお召し替え致しますわね♪フレアスカートも、可愛いですわ♪」
「や。ふぁっ、、くすぐったいです〜っ!」
更衣室には、いくつかの個室があるものの、大半の女の子たちは、もじもじと、あるいはバーンっと潔く、ロッカーの前で着替えを行っています。
そんな乙女たちを不埒な輩から守るため、更衣室では、有志の生徒が警備をしています。
(あっ!あのおねーさま。めっちゃステキっ!!)
警備担当の姫野 香苗(ひめの・かなえ)は、警備をするフリをしながら、しっかりステキなおねーさまたちのチェックを怠っていませんでした。
こっそりチェックではなく、堂々とおねーさまたちの生着替えを見る事が出来るこの仕事は、彼女にとっては正に天職!棚からぼた餅!いやむしろ、絵に描いた餅が本当のお餅になったくらいにラッキーなことです。
まさか不埒な輩から乙女たちを守るための警備の中に不埒な考えの乙女が混ざりこんでいるとは誰も思いません…?
(さって、今日一番の可愛い娘はどこかしら?)
崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)はランスとムチを携えて、更衣室内を物色中です。
(静香様も粋なイベントをなさるものですわ。ミス・百合園の称号に興味はないけれど、可愛い女の子は守りがいがありますわ)
…更衣室の警備には、なんだか一抹の不安を感じます。
しかし、もちろん、不埒な輩を捕まえるために闘志を燃やしている人もいます。
冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、百合園学園から借り受けた、白いビキニを身につけ、静香様からいただいた地図をじっくりと眺め、どこから侵入者や覗きがありえそうか、考えています。
警備がこれくらいしっかりしていれば、安心ですよね。
時々、近くの可愛い女の子を見ているのも、安全警護のため、ですよね…?
可愛い乙女で溢れかえる更衣室で、思わずニヤけそうになる顔に気をつけながら、エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)は、稲場 繭(いなば・まゆ)に『4-2 いなば』と名前を縫い付けたスクール水着を手渡していました。
「繭は可愛いから大丈夫よっ!練習した成果、見せてね。ワタシ、先に席に行ってるわ♪」
出場者は、舞台の前にセッティングされたテーブル席(ビーチパラソル付き)で、みんなのパフォーマンスを見ることが出来ます。
また、パートナーも男性でなければ同じ席に着くことが許されています。
それ以外の方たちは、観客席と呼ばれる特別に作られたスタンド席で応援を行うこととなりますが、乙女のやわ肌を守るため、特別に屋根やさまざまな機能が設えられていますので、皆様ごゆるりと乙女たちのパフォーマンスをご観覧ください。
エミリアが足取りも軽く繭用に指定されているパラソル席へと向かうその頃…、桐生 円(きりゅう・まどか)は、みんなとはまた別の準備を行っていました。
赤いタンクトップにベージュのハーフパンツの水着は、水中に潜るのにはあまり適しているとは言えないようです。
(本当にこんなことして大丈夫かな…。でも、マスターが大丈夫だと言うならきっと大丈夫なのだろう)
円は一抹の不安を覚えながらも、マスターであるオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の言葉を思い出します。
「大丈夫よ〜、たぶん平気よ〜、特に根拠はないけど面白いし」
こんな言葉で実行してしまうのは、やはりマスターであるオリヴィアへの深い愛のなせる技であると言えるでしょう。
円は、水面に出ると、マスクとスノーケルを外して一息つきました。
(急がないと。イベントに間に合わなかったら元も子もないわ)
そんな波間でキラリと光った不穏な光を見逃さなかった人物がいました。今回の警備を買って出た、見張り人プロフェッショナルことシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)です。
彼女は静香様から会場全体の見取り図や今回の出場者一覧などの資料をもらって、そのすべてが頭に入っています。
しかし、その光もあくまでも一瞬のこと、遠くの波間での出来事ですから、ただ魚が跳ねただけかもしれません。
あんなに遠くで、何かが行われる予定も特にないはずですしぃ〜…?
ま、ともかく今は乙女のお着替えタイムなんですから、しっかり覗き魔撃退と参りましょうかぁ。
会場の設営はばっちりですが、参加者たちは各々がパフォーマンスの準備に忙しいようです。
とくに「技」部門のお料理は時間制限内で作るために下準備は欠かせません。
また「体」部門ではさまざまなパフォーマンスが行われるため、大道具の搬入・準備が少々遅れ気味のようです。
もちろん、出場する乙女たちはどの娘たちも自分の身支度に余念がありません。
入念に進められた海開き…もとい、“ミス・百合園”コンテスト、いよいよ開幕します。
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