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美少女サンタのプレゼント大作戦!

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美少女サンタのプレゼント大作戦!

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第一章 ―ゲームスタート―

・ゲーム開始時間:19時00分

「人もたくさんいるし、手分けして探そうよ」
「いいえ、二人で探しましょう。空京にこれだけ人がいるのですから、むしろ固まってた方がやりやすいです」
 本物のサンタがプレゼントを配るという物珍しさからサンタ探しを始めた菅野 葉月(すがの・はづき)とそのパートナー、ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は、どうやって探すかを話していた。葉月としては手分けをしたかったのだが、方向音痴であるパートナーを一人にしておけないということで、一緒に探すことにしたのである。
「それにしても、サンタ姿の人が多いです。どれが本物かこれじゃすぐには分かりませんね」
 クリスマスイブの夜ということもあり、街ではサンタ姿で働いている者が多くいる。見ただけでは本物と判別するのは難しいため、彼女はその姿をした人一人一人に尋ねることにした。
「あの、サンタさんですか?」
 ちょうど近くにいたサンタ服の女の子に声をかける。その子は同じく本物のサンタを探していたメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)だった。
「私も本物サンタさんを探してるんですぅ」
 彼女は本物のサンタがパラミタに居ると聞き、子供の頃のお礼をしたいと考えていた。しかしまさか自分がサンタに間違われるとは思ってなかった。
「そうだったんですか。やっぱりこれだけサンタ姿が多いとなかなか見つかりませんよね」
 三人はそこでサンタ探しについて話した。メイベルのパートナーも近くにいたようで、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)の二人もその場に集う。五人でサンタ探しについて話をしていると、
「あの、皆さんサンタを探してるんですか?」
とさらに声をかけられる。「サンタ探しをしている人」を探していた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)であった。たまたま近くで彼女達の話を聞いていたのだ。
「そうなんですぅ〜。あなたもですかぁ〜?」
「ええ、でもプレゼントのためじゃなく、ちょっとパラミタに来てるっていうサンタがどんな人か気になったもので」
 この言葉に対し、彼女達は身近なものを感じた。葉月もメイベルもお礼をしたい、という思いが共通していて、プレゼント第一ではなかったからである。
「僕達も、一番の目的は会う事なんですよ。プレゼントは、あわよくば、です」
 葉月が答える。
「それじゃ、ご一緒して構いませんか? この人数で手分けすれば、手掛かりも見つけやすいと思います」
 遙遠の提案に、その場の者達は頷いた。

 同時刻、地上。特にサンタ姿が多い空京駅から繁華街の間にもゲーム参加者はいた。
「『攻撃されたら私の身もそうですが、プレゼントが傷付いたら大変』ということは、本物のサンタは目立ちやすいプレゼント袋を持ってるのですよ」
「それだけでなく、その文を考えたら女性という可能性もあるだろう。しかも、狙われた際の対処を知らないということは、かなり若い」
 藍澤 黎(あいざわ・れい)はパートナーのゆる族、あい じゃわ(あい・じゃわ)と駅前でサンタの特徴を考察していた。彼が参加を決めたのはじゃわがプレゼントを欲しがっていたからだ。
「おそらく、このサンタの中に紛れていることだろう。女性を中心に声をかけるのがいい」
「本物はきっと宣伝用の看板も名前もないはずです。シンプルに大きな袋を持ってる人を探すのです」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)は繁華街にいた。彼女も黎とじゃわの二人と同様の事を考えていたため、人の多いこの場所に来たのだ。
「美海ねーさま、サンタコスの女の子ばっかり見てないで聞き込みを始めるよっ」
 街中のサンタ姿を眺めているパートナーの藍玉 美海(あいだま・みうみ)と共に情報を集めようとしてた。その時、
「ねえねえ、一緒にサンタさんを探さない?」
 沙幸に迫る人物がいた。どりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)である。彼女もサンタクロースを探しに繁華街に来ていたのだった。そこで目に留まった、サンタ姿を目で追っていた沙幸に声をかけてみたのである。
「どり〜むちゃ〜ん…あたしと一緒に…」
 二人で探そう、と脇でせがんでいるのはパートナーのふぇいと・てすたろっさ(ふぇいと・てすたろっさ)だ。
「やっぱり探すんなら人数は多い方がいいよ。その方が早く見つかるって」
 沙幸は一瞬戸惑ったものの、今は何人かで行動した方がサンタに近付けると踏んだ。四人は繁華街での捜索を開始する。
「サンタさんがいっぱいなのです!」
「あれは偽者だ」
「そうなのですか?(しょぼーん)」
「本物は多分大きな袋を持ってるし、きっと分かりやすいところにいるはず。人混みに紛れるような事はしないさ」
 駅や繁華街からほどなく離れた広場で出雲 竜牙(いずも・りょうが)と彼のパートナー、ドラグニュートの出雲 たま(いずも・たま)は話していた。近くにはケーキやおもちゃの宣伝をするサンタ姿が多くいる。中にはサンタの姿ではあるが、何かを探しているような人もいた。
 獲狩 狐月(えがり・こげつ)もまた広場にいる人の一人だ。彼女もサンタが分かりやすい場所にいると考えていたのだ。
(本物ならあえて人混みに紛れるなんてことはないよね)
 彼女は今いる場所から、プレゼントを配っているサンタ姿に焦点をあてて探し始める。
 
その頃、中心部へと続く大通りを二台の軍用バイクが疾走していた。それに乗る三人はサンタ服、なかなかシュールな光景である。
「サンタクロースを手伝ってやりたいが……一体どんなヤツだ? 分かるのは服装くらいなものだ」
 グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)はゲームの存在を知った時から疑問だった事を口にした。
「一人でプレゼントを配ろうとしてるんです。きっと優しい方なんでしょう」
「それだけの事をしようとしてんだ。根性あるぜ、きっと強いヤツなんだろうぜ」
 彼のパートナー、機晶姫のソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)と英霊、李 ナタ(り・なた)の二人は思い思いのサンタ像を描いているようだ。
 まだ情報を集めていない彼らにとって、サンタを特定するのは至難の業だった。だからこそ、街に着いたらまずやる事は決まっていた。
「サンタ姿を見つけたら、まずは確かめなければならないな。俺達もそうだが、今日はこの姿が溢れかえってるはずだ。手分けしていくぞ」


一方、空京の上空。こちらにも地上を見渡しながら本物のサンタを探そうとしている者達がいる。
 郊外の住宅街、一見夜空に紛れて姿は見えないが、一艘の小型飛空艇が待機していた。黒く染められいるため、遠目からでは視認し難いのである。
(まだサンタらしき姿はなし、か)
 その主はカルナス・レインフォード(かるなす・れいんふぉーど)、彼は息をひそめてただじっとサンタの到来を待ち続けていた。
 空を駆ける飛空艇は彼のものだけではない。安芸宮 和輝(あきみや・かずき)クレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)の二人もサンタクロースを探していた。
「聖者ニコラスがなぜ現れたのか、いや、それだけじゃなくなぜあのような事をしかけたのか、興味深いですね」
「そうですわね。後世の人間の作った伝承に従ってる理由……気になることはありますわ」
 この二人はサンタクロースではなく、「聖ニコラス」という存在に対しての興味が強いらしい。もっとも、当人達はそれが本人ではなく、その孫娘であるという事はまだ知らない。
 さらにもう一組、ハーポクラテス・ベイバロン(はーぽくらてす・べいばろん)クハブス・ベイバロン(くはぶす・べいばろん)もであった。
「……ゲームにもなりませんね、こんなお遊び。簡単すぎる」
 少し前、クハブスはパートナーであるハーポクラテスよりも先にサンタの正体に見切りをつけていた。
「私と言ってることから、おそらく女性でしょう。しかも元気な口調かつ、体を使ったゲームをやりたがるということは、かなり若いです。また、本物ならば当然サンタクロースの服を着ているだけでなく、プレゼントを運べる大きくて丈夫そうな袋を持っている事でしょう」
「なるほど女性か。薔薇の学舎の生徒としては、困っている女性は見過ごせないよな」
「それにこれほど特徴的なら、空から探した方が分かりやすいでしょう」
 このようなやり取りがあったため、二人は上空にいたのである。ただ、まだサンタはその姿を見せてはいなかった。
「サンタクロースの配達方法も私が知らないうちに変わったようですね」
「粋な人じゃないか。もしかしたら若い人だったりして」
 十倉 朱華はパートナーのウィスタリア・メドウ(うぃすたりあ・めどう)と共に上空から街を見渡している。
「こう見ると、やっぱり空京って広いんだなー」
「一度降りてみてはどうでしょう? 声を掛けるのなら、どっちにしても降りる必要があります」
「そうだね、街の近くに降りれる場所があったはずだから、そこで降りて片っ端からサンタ姿に当たるとするよ」
 こちらの二人は街の中心部へと向かっていった。

 手段は小型飛空艇に限った事ではない。箒に跨っているのはベルナデット・アンティーククール(べるなでっと・あんてぃーくくーる)、後ろにはパートナーであるトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が乗っていた。彼らはちょうど繁華街の上空に差し掛かっていた。
「意外とサンタクロースは若いかもしれないなんて思ったけどよ、若いサンタ多過ぎじゃねーか?」
「サンタクロースじゃ、たくさんおるのう。本物は一体誰じゃ?」
 トレジャースキルを頼りに来たものの、目の前の光景にトライブは戸惑った。ただ、近くにはいるはずである。一方の吸血鬼、ベルナデットは無邪気にはしゃいでいる。
「近くにはいるんだが、これじゃ分からねーな。よし、いっちょやるか!」
 ちょうど街中から箒で空に上がってくる姿もあった。神代 明日香(かみしろ・あすか)である。彼女は最初地上で探していたのだが、収穫がなかったのだ。
「居場所の手がかりがないですぅ〜……」
 いざ街に来たものの、見渡してもコスプレらしきサンタ姿しか見つからない。
「ならば……学生にはゲームを持ちかけたみたいだけど、子供には普通に届けるでしょうからそこを押さえましょう〜。子供のいそうな家を探してくるから、ちょっとだけ待ってて下さい〜」
 サンタのコスプレをしているパートナー神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)に告げ、ちょうど飛び立っていくところだったのである。夕菜の方は一緒に飛べないため、その場でしばらく待つ事になった。
「こんなにいるとはね。でも、勝負には負けられない!」
 如月 玲奈もちょうど繁華街の上空に差し掛かっていた。下を見ればクリスマスのイルミネーションと無数のサンタクロースが見える。

 夜空にはそりを引くトナカイの姿もあった。だが、これは本物のサンタクロースが乗っているもではなかった。
「一か所にやたらとでかい反応があるな。しかも街の中心部からも郊外へ向かってる……こりゃチャンスだぜ」
 トレジャーセンスでプレゼントらしきものを捉え、移動中なのは国頭 武尊(くにがみ・たける)である。
「どうやら他にも空に参加者がいるみたいだが……まだ気付いてねえな。待ってろよ、サンタぁ!」
 スピードを上げる、その際に同じようにサンタのトナカイに乗った人物とすれ違った。サンタの格好をしていたため、一瞬気を取られたが、反応は無かったためにすぐに顔を戻す。
「わ、びっくりしました。今のトナカイ、凄い勢いでしたよ」
 そのすれ違った人物は思わず声に出してしまう。ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)、彼と同様に本物のサンタを探していゲーム参加者であった。
(サンタさん、まだ街中にいるんでしょうか?)
 彼女は武尊とは逆方向、空京の中心部へと向かっていった。
(それにしても、今日は空にも人が一杯です。皆、サンタさんを探してるんでしょうかね?)
 かくいう彼女もサンタ姿であるため、ゲーム参加者が見たら声を掛けてくる可能性は大いにある。
(とりあえずは、ボクも急ぐとしますか)



 ゲームに参加している人達が各々の行動を開始し、サンタを探している中、フレデリカはちょうど中心部と郊外の住宅街の間にいた。時間はまだ夜の九時を過ぎたくらいだが、良い子は寝ている時間でもある。慎重に一軒一軒回っていき、プレゼントを配っていく。まだプレゼント配達も序盤、これからが本当の勝負だった。
「ふう、大変なのはこれからだね」