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アリスからの緊急連絡

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ガーゴイルとバンダースナッチ


 ジェラルド・レースヴィ(じぇらるど・れーすゔぃ)は何よりもまず実際にバンダースナッチに襲われた山葉 涼司(やまは・りょうじ)に頼んで、美術室のガーゴイルの外見と似てるかどうかとか見てもらう。
「間違いねえ。こいつが俺を襲ったモンスターだ。しいて言えば首の長さが違うが、まず間違いない」
「そうだね……間違いない暗くてよく憶えてないけど……こいつ」
 アシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)もそう言う。
 彼女は女子寮の屋上で魔物を蹴り飛ばしたという。
「とにかく、夜まで待とう」
 月詠 司(つくよみ・つかさ)シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)はガーゴイルと美術室の写真を撮影している。
 ガーゴイルが映る鏡もご所望通りあったのでそれに写ったガーゴイルも撮影してみる。ご所望の結果が出るかどうかは時間がたたないとわからないが、アリス、バンダースナッチと言えばジャバウォックの詩と鏡と考えられるからだ。
「「フギン」と「ムニン」、お願いね」
 シオンは使い魔の「フギン」と「ムニン」を上空に飛ばすと変異があったらすぐ知らせるように言いつける。
「まず、呼び出し場所の美術室の最近の変化で最大のものはガーゴイルで間違いないだろう。
 故に実はバンダースナッチの正体がそのガーゴイルではないか、またその正体を掴むことがアリスの正体を知る重要な手掛かりだと考える」
 神裂 刹那(かんざき・せつな)がそう推理を告げると賛同者が数名現れ、彼らと共に調査をすることになった。
 クロウ・グランツ(くろう・ぐらんつ)もその一人である。
「僕も美術室に運び込まれたガーゴイルと「アリスからの緊急連絡」には関連性があると思います。
 刹那とほぼ同意見だったため推理の出番を失ったが、彼の考えが間違っていないという確認がされたわけでもあった。
「事件に関係ある時間帯、7時頃から深夜まで、に美術室内で見張りをさせてもらえないでしょうか?」
「ああ、いいぜ」
 刹那の言葉に校長からフリーハンドを貰っている涼司はそう答えた。
「それと、出来れば夜になる前に蒼空学園内において発掘した時の状況・発掘の経緯・発掘した遺跡について調べておきたいのですが?」
「いいけど、あまり意味ない気もするなぁ」
 その言葉に刹那はむっとする。
「意味があるかどうかは私が決めます。許可を!」
「あ、ああ……いいぜ」
 涼司の許可を得ると刹那は協力者と共に調査を始めたのだった。
 そしてそのパートナーのルナ・フレアロード(るな・ふれあろーど)は朝の内からイルミンスールの図書館においてガーゴイルが発掘された遺跡・ガーゴイル本体について、または同様の現象が過去になかったかどうか調べていた。
「どうせガーゴイルには封印でもかかってて、それが夜の間だけ弱まるとかそんな話なんでしょう?」
 東間 リリエ(あずま・りりえ)はそう身も蓋もないことを言うと、準備室で監視の準備に入った。
「もしかしてアリスの外見がバンダースナッチだったら、行かなかった人が襲われるのは、なんで来てくれないのーとかいう八つ当たりだったりして……電話がかかって来る理由は自由になりたいから……?」
「それはない。アリスとバンダースナッチは全く違う外見だ。アリスは見たことねーが、強いて言うなら、バンダースナッチと一緒にくっついてるやつだろうな」
 ガーゴイルは醜いが、その背中に寄り添うように少女の像がくっついている。おそらくこれがアリスだろう、とは場の誰からともなくでた意見だ。
 そしてアリスを残してバンダースナッチのみを破壊することは難しい。
「それならアリスを調べたい私としてはアリスが動き出すまで待つしかないわねえ。眼鏡君大丈夫?」
 美術室で貼りこみをしたいという意味らしい。
 涼司はオーケーと伝えると四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は美術室に貼り込むことにした。
「アリスを名乗る存在、目的はイタズラか恨みか、メッセンジャーか? とにかくファイリア様に被害が及ばないよう配慮しなければ」
 ニアリー・ライプニッツ(にありー・らいぷにっつ)は携帯に電話がかかってくるまで待っているという広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)の代わりに現場に出て調べていた。
「アリス・リリに関しての文献を当たってみるべきでしょうね。調べ物に関しては私が得意分野ですので」
 そう言って調べ物を始めるニアリー。
「ま、いいけどね。邪魔にならなきゃ」
 とは涼司の弁。
 一連の事件の事を噂で知り、真相を知る為パートナーの魔道書と蒼空学園を訪れていた神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)
「このままここで待っているのも退屈ですね。そうだ、蒼空学園の寮にお邪魔して電話を待ちましょう」
 と言って寮に押しかけていった。同じことを考えている連中は何人もいるらしく寮はちょっとした宴会状態になっていた。
「助けてくれ! 蒼空学園美術室に閉じ込められた! 夜10時までに蒼空学園美術室myrvc」
 そんな涼司からのメールを受け取って慌ててはせ参じたのはリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)であった。
「んもー、悪戯でよかったよ」
 どうやら何者かが涼司の携帯からそんな文章を打ってよこしたらしい。おそらくアリスだろうと想像する。
「でも、他人の名前を使って悪戯するなんて! 許せない!」
「でも、他人の名前を使って悪戯するなんて! 許せない!」
 そう同時に言ったのはリアトリスとそのパートナーのベアトリス・ウィリアムズ(べあとりす・うぃりあむず)である。
「まあ、涼司くんのことは僕が」
「まもってあげるよ」
 二人が異口同音に言う。
「おう、頼りにしてるぜ!」
「美術室に運び込まれたガーゴイルと「アリスからの緊急連絡」には関連性があると思う。ちょうど時期も近いしね。それは間違いない」
「おう、そうだな。それは間違いないだろうな」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)の言葉に涼司が答える。
「ただ、古代シャンバラ王国には謎が多いし、……もしかしたら呪いとかあったりして?」
「呪いかよ。それは勘弁してほしいぜ」
 涼司が呆れたように言うと北都はふふふっと笑った。
「僕は張り込みますよ……」
「おお、カンナスキー。頼んだぜ」
「なにを言っているんですか!」
 影野 陽太(かげの・ようた)は涼司の言葉に抗議しつつも「迷彩塗装」で気配を絶ち「不寝番」で眠気を抑え「セルフモニタリング」で怖さをグッとこらえる。
「さて……っと……」
「物理的、魔力的トラップはないようです。これは、時間まで待つしかないですね」
 リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)が象を調べながらそう言う。
「眠りと関係しているのなら試しに寝てみましょうか? あまり関係があるとも思えないですけど……」
 リオンは他人事のようにそう言う。
「あとは時間と場所ですか。10時に美術室……なにがあるんでしょうね?」
「何かありと見るほうが妥当なんだろうな……」
 リオンに涼司はそう答える。
「私は件のガーゴイル像の発見された遺跡を探索してきます!」
 そう告げたのは藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)
 根回しノウハウで蒼空学園の事務の方に接触。ガーゴイルの発見された遺跡の場所を聞き出し。怪異の解決のためと説明して、探索当時のレポート等の写しの閲覧も頼む。
 スパイクバイクで件の遺跡に直行。トラッパー・殺気看破で周囲を警戒しつつ、「博識」で調べなおしてみまる。アリス、バンダースナッチ、夢魔、電話連絡等の、遺跡の調査隊の意識には無かったはずの情報を念頭に、引っ掛かるものがないか調査をする。しかしその調査は空振りであった。
 ダンジョン中を隈なく探索しても得られるものは何もなかったのである。
「そんな〜」
 優梨子は悔しそうに学園に戻る。ちょうど夜8時だった。
「これでも、一応男です警備の手伝いです」
 山南 桂(やまなみ・けい)が憂いを秘めた表情で呟く
「でも、一日に何回も襲撃は、無いんですよね?」
「しらんな。でも、一匹倒せば終わりじゃねーの?」
 涼司はつれない。
「ふぅん、そっか、山葉と小谷は親しいのか。お互いの電話番号を知っているぐらいだものな……」
 朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)は羨むようにそう言う。
「なっ、馬鹿、俺とあいつは特別な関係じゃねーぞ!」
「確かに、それは今回の件とは関係ないな。不問にしてやる。それはともかくバンダースナッチ=ガーゴイルという線は確かにありそうだな。
 真偽を確かめるには、バンダースナッチが現れる時間までに美術室に行ってガーゴイルを探し出し、何が起こるのか確認すればいいだろう。時間になれば、アリスも姿を見せる可能性もあるしな」
「そうだな。それが一番賢いと思うぞ……」
 話題がそれて安心する涼司。
「バンダースナッチ……不思議の国のアリスに登場する怪物ですわ。
 長い首という部分では原作と共通する部分はありますけど飛行型かどうかは不明ですわ。
 描写がないので……羽があるという点はガーゴイルも一緒ですから、美術室にあるガーゴイルがバンダースナッチの正体かもしれませんわね。
 石のガーゴイルが動き出して人を襲うというのは定番ですし……やはり、ここはガーゴイルを調べる必要があるように思いますわ。
 暗くなる前に美術室に入って部屋を明るくして待機しましょう」
 イルマ・レスト(いるま・れすと)がそう言って美術室の明かりをつける。彼女は暗所恐怖症だった。
 やがてルナがイルミンスールから戻ってきて刹那と合流した。