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リアクション
(1)ツァンダの街にて
「大丈夫でしょうか…」
ツァンダの街で、アクセサリー職人は心配していた。
つい先ほど、月雫石採取の依頼に集まった人たちが出発したばかりだったからだ。
「ハイドラにパラ実生、片方だけでも厄介なのに…いえ、心配してもしょうがないですね」
「それはどうかな」
アクセサリー職人が振り返ると、いつの間にか工房に入ってきていたジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が立っていた。
「レティーシアお嬢様たちでは荷が重かろう。どうだ、俺に任せてみないか?」
何か含みのある笑みを浮かべながら、ジャジラッドは職人を見つめていた。
「いいえ、結構です」
「なんだと?」
ジャジラッドは驚く。
「レティーシアさんや、集まってくださった方たちは約束してくださいました。必ず、月雫石を採ってきてくれると。だから、信じることにしたんです」
そう言って彼は、窓の外を見ていた。彼女たちが出発していった、山岳地帯を見ていたのである。
(2)咆哮
そのころ、レティーシアたちは山岳地帯を進み、いよいよあと少しで採掘場に着くというところだった。
「もうすぐですわね、落ち着いていきましょう。どこかにパラ実生が潜んでいるかもしれませんわ」
「はい!」
「そうですね、気をつけましょう」
レティーシアの言葉に、一緒に歩いていた霧島 春美(きりしま・はるみ)、本郷 翔(ほんごう・かける)達も気を引き締める。
「どうかよろしくお願いしますね、皆さん。ほんとに困ってまして…」
今回、採掘場の責任者が同行していた。元は採掘場で働いていたのだが、今はハイドラが住みついて仕事にならないらしい。
「もちろんです。月雫石も手に入ることですし、頑張りますよ!」
春美が元気に答える。
「月雫石が欲しいのは私だって同じです…でも、ほんとにこれでいいのでしょうか?」
赤羽 美央(あかばね・みお)の言葉で、レティーシア達は足を止めて振り返った。
「どういうこと?」
レティーシアの近くにいた、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)がたずねる。
「ハイドラのことですよ。怪物とはいっても、倒すのは身勝手なんじゃないでしょうか?」
美央の言葉に四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)もうなずいた。
「そうよ、勝手に住み着いたとはいえ、殺すのはかわいそうだわ」
「確かに、そのお気持ちはわかりますわ…でも、私たちはハイドラと話し合うこともできません、どうすればいいのでしょう?」
「それは……」
レティーシアの言葉に、美央や唯乃は考える。その様子を霊装 シンベルミネ(れいそう・しんべるみね)が見守っていた。
「たとえば…音楽とかで、落ち着かせられないかしら?」
唯乃の思いつきに、相田 なぶら(あいだ・なぶら)が賛成した。
「ああ、やってみる価値はありそうだね。俺も自分達の都合だけでハイドラを傷つけたくはないもの」
「そうよ、やってみましょう!」
サンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)も唯乃の案に賛成だった。
「そういうわけで、攻撃するのはちょっと待ってくれないかな?」
なぶらがレティーシアにたずねると、彼女はうなずいた。
「わかりましたわ」
そのとき、遠くから地響きが聞こえてきた。
「な、何の音ですか!?」
美央が驚いて音の方角を見る。
音は採掘場から聞こえていた。山を揺るがすかのような大きな足音である。
アリアや唯乃たちは、急いで採掘場へと向かった。
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