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小ババ様の一日

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小ババ様の一日

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    ★    ★    ★
 
 ケーキを堪能した小ババ様は、お腹ごなしにカフェテラスから展望台の方へと散歩に行きました。
「こばあ?」
 途中で、のんびりとひなたぼっこをしている水橋 エリス(みずばし・えりす)ニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)を見つけて、小ババ様が声をかけようとしました。
「しーっ」
 このまま眠らせてあげてくださいと、水橋エリスが唇に人差し指を当てて小ババ様に合図します。
「こば……」
 すぐに理解した小ババ様が口を両手で押さえました。
「ありがとう」
 そうささやくと、水橋エリスが小ババ様にクッキーを一枚くれました。
「(こばー)」
 声を出さないでお礼をすると、小ババ様は先へと進みました。
 少し進むと、今度は水神 樹(みなかみ・いつき)東雲 珂月(しののめ・かづき)がひなたぼっこをしています。
「あれ、何ぃ?」
 小ババ様を見つけた東雲珂月が、水神樹に聞きました。
「小ババ様だよ。そうだ、確か光り物が好きだったはずだから、何かあげてみたら喜ぶかもね」
「うん、そうするぅ」
 水神樹に教えられて、東雲珂月が開拓者の小さなメダルを取り出します。
「ほら、これあげるよ」
 東雲珂月が差し出すメダルに、小ババ様が近づいていきました。実は、もう体質が変わってしまったので、光ものを食べたりはしないのですが、興味は持っています。
 ところが、小ババ様が近づくと、東雲珂月のツインテール近くに生えているハエトリソウが、きしゃーっと牙をむきました。そう、東雲珂月は、ハエトリソウの花妖精だったのです。
「こばあ!!」
 驚いた小ババ様は、あわててその場から逃げだしていきました。
 
    ★    ★    ★
 
 やっとのことで展望台に辿り着くと、そこではノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)がテーブルでのんびりとお茶をしていました。
 周囲には、ノーン・クリスタリアがテーブルの上に撒いたケーキの破片を目当てに、たくさんの小鳥たちが群れてさえずっています。
 ノーン・クリスタリアは、ときたま小鳥たちのさえずりに合わせてハミングしながら、のんびりとお茶を飲んでいました。
「また、おにーちゃんが映ればいいのになあ」
 テーブルの上に銃型ハンドヘルドコンピュータをおいて、そこに影野 陽太(かげの・ようた)が映らないかなとちょっぴり期待しながらノーン・クリスタリアが言いました。
「ほう、いい歌声ですね」
 そこへ、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)に案内されて座頭 桂(ざとう・かつら)が現れました。イルミンスールに来てまだ日が浅いので色々な所に連れていってもらっているのですが、ノーン・クリスタリアのハミングに惹かれたようです。
「一曲奏でてもよろしいどすか?」
「いいですよお」
 座頭桂に訊ねられて。ノーン・クリスタリアが快く承諾しました。
「あ、でも、桂さんは歌わないでね」
 九条ジェライザ・ローズが、一言添えました。
「なぜどすかあ」
「いや、あの、たくさんで歌ったら、小鳥が驚いて逃げちゃうからだよ」
「はあ、まあいいどすけど」
 座頭桂の琵琶の腕はそこそこですが、歌声は超破壊的なので、ここでそれを披露されてはたまりません。九条ジェライザ・ローズが止めたのは賢明な判断です。
 座頭桂が琵琶を奏で始めると、ノーン・クリスタリアがそれに合わせて歌い始めました。珍しいコラボです。
 小ババ様は、面白そうにそれを聞いていました。
 
    ★    ★    ★
 
 しばらく二人のコラボを聞いていた小ババ様ですが、やがて飽きたので、展望台の端から景色をながめることにしました。
 広い展望台の端には、なぜかルイ・フリード(るい・ふりーど)が仁王立ちしていました。手摺りの上には、緑茶の入った紙コップがおいてあります。
「おや、小ババ様ではないですか。どうです、一緒に御覧になりますか?」
「こば?」
 ルイ・フリードに言われて、小ババ様が手摺りの外を見てみました。
 すると、一番下の方の枝に、ノール・ガジェット(のーる・がじぇっと)がいます。なんだか、全身にごてごてとしたブースターがついている気がするのですが。
「よろしいですよ、ガジェットさん。今こそ、その秘めたる力を解放するのです。さあ」
 ルイ・フリードに言われて、ノール・ガジェットが身構えました。いったい何が始まるのかと、小ババ様が身を乗り出します。
「Go!!」
 叫ぶなり、ノール・ガジェットが四機の加速ブースターを全開にしました。まるっこちいノール・ガジェットの身体が、もの凄いスピードで加速していきます。
「うおお、曲がれませんであります!」
 一気に枝を走り抜けたノール・ガジェットでしたが、幹にぶつかりそうになって、なんとか方向を上にむけて衝突を回避しました。そのまま、凄い勢いで幹をかけ上がってきます。
「うおおおおおお、ガジェットさん!」
 あわててルイ・フリードが幹の方にむかって走りました。勢いに飲まれて、小ババ様も箒に乗って追いかけます。
 ぎりぎりで幹に到着したルイ・フリードでしたが、猛スピードのノール・ガジェットを捕まえることはできませんでした。それどころか、小ババ様がノール・ガジェットに引っかかって、そのまま一緒に世界樹を駆け上っていきます。
「こ、こばああぁぁぁぁ!!」
 目が回りかけた小ババ様が、やっとのことでノール・ガジェットから離れました。ふらふらと箒に乗って世界樹に避難すると、そこはてっぺんの展望台でした。
 一方のノール・ガジェットは、ブースターが止まって落下していきます。
せいやあっ!
 下から、ルイ・フリードの気合いを入れる声が微かに聞こえてきました。なんとか受けとめることができたようです。