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リアクション
【5章】
「どうだ、清泉、追えそうか?」
三船 敬一(みふね・けいいち)は清泉 北都(いずみ・ほくと)と白銀 昶(しろがね・あきら)の超感覚を頼りに、子供を連れて逃げ去った人攫いたちを追っていた。
「任せてよ、あとそう焦らないで」
「焦ると逃がしちゃうぜ? せっかく刑事さん来てくれてるのに逮捕できないだろ」
地震有気に北都と昶は胸を張る。
白河 淋(しらかわ・りん)は何かの気配を感じ、三船に注意を促す。
「三船さん、人攫いではないですが……何かが近づいてきてます」
「僕達も感じてるよ……、モンスターが何匹も。ちょっとやっかいだね」
北都はモンスターが近づいてくるのを感じ取ると、黄昏の星輝銃を手に構える。
「あっ……あんなところに子供が! 攻撃しようにも難しいな」
昶はモンスターに囲まれているひとりの子供を発見する。傍にいすぎて、派手な攻撃はできない。
「そっちにモンスターは来ていないか?」
佐野 和輝(さの・かずき)は三船たちの方へ向かってかけてきた。
「あっちの方に、人質っぽくなってる子供がいて……」
淋は昶が見つけた方向を指さした。
「任せて、モンスター退治隊のアニスたちがやっつけるから!」
アニス・パラス(あにす・ぱらす)に続き、スノー・クライム(すのー・くらいむ)、ルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)も頷く。
わらわらとわくように出てきたモンスターに、スノーはバニッシュで目を眩ませる。
「バニッシュ! 和輝、任せたわ」
「了解です」
和輝はレガースを利用して足で思いっきりモンスターを蹴り上げる。雑魚モンスター3匹くらい一気に気絶した。
「私の歌を聴け〜! ですぅ〜♪」
ルナはバラミタ虎に乗りながら、小物のモンスターを踏み潰して行く。嫌悪の歌を歌い、仲間の攻撃力を上げた。
歌で攻撃力があがり、一撃で倒れてくれない中級のモンスターも、技一発で倒れてくれる程の効果があった。
「俺は人質の子供の方優先します、あなたがたは先に小物の方を頼みますよ」
レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)はモンスターに囲まれている子供の方に近づく。モンスターは近づいたら子供ごと失うぞと言ったように、牙をむいた。
わざと攻撃を外して注意を引かせたところで隙を付き、ディフェンスシフトを子供にかけてモンスターを光条兵器で攻撃した。一発で倒れてくれなかったから、もう2・3発続けて放つ。
「安心してください、もうモンスターは排除したから」
レリウスはモンスターを排除すると、子供に手を差しのべる。けれど子供は怖がってその手からよける。さすがに助けたあとがこれでは少し傷つく。
ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)はやれやれ、と言った顔で子供ににっこり笑いかけた。
「このお兄さんはもう怖くないからな! レリウス、笑ってやらないと子供はびびったまんまだぜ?」
ハイラルが手を差しのべると、安心した子供は抱きついてきた。
「……そういうものなのですか」
「そういうもんなの! 口の端っこ上げてはい笑ってー」
ひきつり笑いしたレリウスの顔が可笑しかったのか、子供はくすりと笑い出す。
*
岬 蓮(みさき・れん)は子供を抱えている辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)を見つけて駆け寄った。
小柄なのに何故子供を片腕で抱えられるのだろう、と疑問に思うが、今はどうでもいい。
「あ、迷子の子見つけたの? それとも人攫いから守ったとか……。まぁいいや、救護班でしょ、あっちに救護班がいるから、案内するわ」
「なぁ、子供の方ちょっと具合悪そうだぞ?」
アイン・ディアフレッド(あいん・でぃあふれっど)は心配そうに子供の顔をのぞき込む。
「いや、その必要はないじゃろ。わらわが安全なところへ連れて行くのじゃ」
「一人じゃ大変よ。アイン、その子はあなたが運んであげて」
「そうだな。自分に任せとけ」
アインが子供に手を差し伸べようとすると、刹那はさっと身を引いた。
「どういうつもりや!?」
「この子はわらわが貰った! そう簡単に渡すわけなかろう」
刹那はあくどい笑いをにやりと浮かべ、逃げ去ろうとする。
「そんなことはさせないわ! 救護班じゃないのね!? くらえっ爆炎波!」
蓮の武器から爆炎が上がる。刹那はひょいとそれをかわした。
「待ちなさい!」
爆炎波を容赦無く発射する。救出する子供やこっちに当たりそうだとアインは心配になった。
「手加減したほうがええんちゃう? 蓮、爆薬をこっちに向かって投げんなよ?!」
アインも加えて雷術を使うと、「わわっ」と声を上げて刹那は転んだ。
「仕方ない。また別の子供を探すことにするかの。……さらばじゃ!」
子供を抱えながら二人に対抗するのは難しいと考えたのか、刹那は子供を放り投げて逃げてしまった。蓮は運良く子供をナイスキャッチ。
「大丈夫? 怪我無い?」
「ん……」
目を覚ました子供はゆっくりと頷く。刹那を追いたいところだが、子供の安全が先だ。救護班の元へ向かうことにした。
*
「この子たちは任務のために必要なのだ。邪魔はしないでもらえるかな」
ジープ・ケネス(じーぷ・けねす)はくいっとサングラスをかけなおしながら、睨み付ける武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)と風森 巽(かぜもり・たつみ)に言った。
「この子たちは私が相手をする。君たちは子供を頼むよ」
「おう、そっちは任せたぜ」
ジープは人攫いたちに子供を攫うよう任せると、どうしたものかとため息を付く。
「正義の見方はそんなことさせない。昔こういう事に巻き込まれた時に助けられた。だから今度は我が助ける番だ……なんて言ったらきっと叱られるな」
ふっと笑うように巽は言う。その手を牙竜はがしっと掴んだ。
「叱られねぇよ。俺も同じ思いだ。こんな奴やっつけてやろうぜ」
「子供騙しの台詞だな、テレビの中だけにしてもらおうか?」
馬鹿にするようなジープの台詞に、二人の血管がぶち切れるような音がどこかで鳴る。許せない。
「「この野郎!!」」
ジープに向かって、巽と牙竜は殴りかかる。「おっと」とそれはよけられてしまった。
「くそっ……」
巽がぎりぃと歯ぎしりをした直後、子供の「離してぇ」という声が響く。ジープに目が行っていたせいか、子供が3人ほど奪われてしまった。
「その子たちを返せ!」
簡単に返せるか、生活かかってんだと人攫いたちは喚く。ぐっと牙竜は拳を握り締めた。
「ならば、俺の拳で教えてやるよ……!」
「あれー、君たちどうしたの」
夜月 鴉(やづき・からす)はふらふらと岩陰から出てきた。捕まっている子供たちやこの状況を見て数秒、人攫いの一人を蹴飛ばして、異様な素早さで子供たちを抱えて素早く牙竜たちの後ろに回る。
「ガキンチョ連れ戻したから容赦無くやっちまえ!」
こく、と鴉の言葉にうなずいた巽と牙竜は、「正義の味方舐めんなよ!」と言い放ち、巽は轟雷閃を、牙竜は正義の鉄槌でジープに襲い掛かり、笑撃で砂煙が巻き上がる。
「くっ……ここは退散か。毒虫の群れでもせいぜい楽しんでくれ!」
ジープは負け惜しみか、毒虫の群れをその場に放ち消えていった。
「待て! 虫が邪魔で行けない……!」