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学園鬼ごっこ!!

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学園鬼ごっこ!!

リアクション

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 駒姫ちあきは勇介にぴたっとくっ付いている。
「なんだ、お前?」
「なんだ、お前じゃないよ。この私を知らないって言うの?」
「…………知らねぇ」
 何故だか勇介の言葉にはトゲがあった。
「ねぇねぇ、勇介君。あっちから千鳥がくるよっ! 早く逃げよう」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)もぴたっとくっ付き、勇介を誘導しようとしている。
「あのな、俺はもっとこう男と男同士の戦いというかだな……そういうのがしたいの」
 なんだって、巨乳美女2人に囲まれているんだ俺は。どこのギャルゲの主人公だ。そんな疑問が頭を過ぎる。
 ちあきが男だということには決して気付かない勇介。
「男が必要なら俺が失礼しようか」
 3人が振り返るとそこには赤月 速人の姿。その腕には【風紀委員】と書かれた腕章が。
「あんた、誰よ?」
「あんた、誰ではない。私は風紀委員です。赤月 速人と申します」
 風紀委員と聞いて、バッと沙幸は勇介の前へ出て盾になった。
「ちょ……ちょっと、勇介君だけは絶対撃たせないんだからね!」
(勇介君を撃っていいのは、千鳥だけなんだからっ!)
「待ちなさいよ。ほら、カーチェ! あんたも盾になって」
 カーチェはちあきに背中を押され、強制的に勇介の盾になる。
「ホントちあきさんは人扱いが荒いんだからなぁ……」
「な、なんなんだよ。本当にお前たちは……」
 厳重に守られている自身と、とっさに目の前に盾としてでてきた沙幸とカーチェにまたも疑問を抱く。
「あんた、本当に何も分からないの。どんだけ鈍感BOYなの?」
「なんのことだよ!」
「もぉ! 面倒くさいわね! 今、こんなことになってるのは千鳥もあんたも素直にならないからなんだよ?」
「は? 俺と前田?」
 ちあきが本当のことを言う。
「もうこの際、好きとか嫌いとかハッキリした方がいいと思う」
「……な、なんのことだか」
「そういうことだ」
 速人もちあきに続いて勇介に説得をしはじめる。
「それよりもお前はなんなんだよ、風紀委員じゃなかったのか?」
「いや、まぁ一応風紀委員側といったところだが、ペイント銃は捨てた。この通り持っていない」
「一体、何しにきたんだよ」
「お前を説得しに。早く千鳥の元へ行け」
 速人の言葉にハッと笑うと、
「なんだって、わざわざ敵陣に行かなきゃなんないんだよ。俺は縛られるのが嫌いなんだよ」
「千鳥があんなにも一生懸命追いかけてるのは勇介君と一緒に卒業したいからなんだよー!?」
 沙幸がシビレを切らす。しかし、そんな沙幸の言葉にもつっけんどんに「俺は強くなりたいだけなんだ」と漏らす勇介。
「強くなれば、あいつを守ってやれるから」
「え?」
「……あいつって……」
 沙幸とちあきが目を合わして、キョトンとする。 
「強くなりたかったんだ、ミッションをこなせば強くなれる。俺はそう信じてる」
 真っ直ぐな眼差しに胸打たれるちあき。……だったが、その刹那、大きなため息をもらす。
「ほんっと、どうしょもないくらいに不器用なんだからなーあんた達は」
「そうだよ〜、気持ちは言葉に出さないと何も伝わらないよ」
 沙幸もくすぐったい気持ちでどうしようもない様子。
「だから、今は勉強よりも鍛えたいんだ」
「それをそのまま千鳥に伝えればいい。彼女は何も知らないから、あんなにムキになるんだ。今すぐ行ってやれ」
 速人の言葉に珍しく素直に頷くかと思いきや……
「や、でもそれとこれとは違うからな。勝負は勝負だぜ。俺は本気で逃げる」
 ちあきと沙幸は「なんか、難しいなぁー……」と呆れるものの走る勇介についていく。
「まぁ、俺ができることはやったかな、あとはあのお嬢さんが素直になれるか、だな」
 速人は去っていく3人を見つめていた。
 



■■■

 カンナは澪の言うとおり、暗く液晶だけが光るモニター室で校内の様子を見ていた。
「さすが澪センセ!」
 カンナ追跡隊はドアの隙間からその中の様子を伺っていた。カンナの見つめるモニターには、トラップにかかってしまった生徒や、追いかけっこをしている男子生徒と女子生徒の姿が。
 にぎやかで、愉快な光景。
 しかし、それをモニター越しに見ているカンナの瞳はどこか寂しげに見えてどうしようもない気持ちになる樹月 刀真(きづき・とうま)
「これから、どういたしましょうかぁ〜。聞きたいことがあったのだけど、なんだかあの真剣な面持ち。声かけられそうにないですねぇ。困ったわぁ」
 澪が左手で頬を触りながら、そんなことを言うと
 比島 真紀は手を打つ。
「こんなにたくさんの人が一斉にカンナ様へ押し寄せたって、話し合えるとは限りませんから自分が質問を受け付けるであります!」
「なんでだよっ」
 早速、シルバが噛み付く。
 パートナーの夏希も「……それでは、ここまで来た意味がありません」と静かに反抗する。
「まぁ、いいと思いますよ。あまり僕らで騒ぎを大きくするのもかしこいとは思えないですし。ここで一度、皆の質問をまとめるのも」
 菅野 葉月(すがの・はづき)が真紀の提案に賛成する。
「さ、左様でありますか!」
 葉月は頷く。シルバはふんと目をそらした。
「では、早速質問を受け付けるでありますが……! まずはどなたからで……」
 その言葉に、待ってました! と言わんばかりに手をあげたのは、エルミル・フィッツジェラルド。
「はいっはいはいはいはーーーいっ!! あの、あの! カンナ様の髪はズラなのですか?」
「は!?」
 ……緊迫とした雰囲気がガラガラと音を立てて崩れ去っていった。
「エルミルさん……君、今なんて?、」
「え? だから、あれはズラなのかしら? って。だって明らかにおかし……」
「まー却下だな、そいつは」
 横からシルバが口を出す。そして、エルミルの頬をふにっとつねる。
「ぶ〜ケチですわーー!」
 むくれるエルミルに、葉月のパートナーミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)はエルミルに耳打ちする。
(「あれはズラだよっ。もうぜったいぜったいぜ〜ったいズラなんだから!」)
 大好きな葉月が今回カンナのことばかりを考えているため、カンナへの嫉妬120%のミーナは憎しみを込めて言う。
 エルミルがおかしなことを言ったため、真紀のパートナーのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)がエルミルの腕をつかんだ。
「おまえは危ないから、しばらくこうさせてもらうぜ」
「やぁーだぁーです〜〜!」
 自分よりも遥かに大きなサイモンにつかまれ、半泣き状態のエルミル。
「愉快じゃのう♪」
 その様子を、漆は手をポンと叩いて笑う。
「他、質問を受け付けるであります!」
「カンナは恋人は作らない?」
 刀真のパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が聞く。
「お前らは小学生かっ」
 思わずシルバはまたも口を出してしまう。
 そして、またも漆はにこにこ笑う。「愉快じゃ愉快じゃ〜♪」
「私は真剣だったのに……」と玉藻 前(たまもの・まえ)に抱きつく月夜。
「月夜、鬱陶しいから放せ」
 前はいつものことながら、抱きついて離れない月夜にため息をついた。
「他に質問は?」
「はい」
「どうぞであります!」
 声の方へ振り返ると、そこには腕を組んだカンナが……。
「盛り上がってるところ、申し訳ないんだけど……少し静かにしなさい」