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リアクション
巨大蟻と退治していた小夜子が、竜司に叫ぶ。
「ここは彼女たちに任せて・・私たちは女王蟻を!」
「だな、あの子ら、つえーな」
二人は、巨大な岩の裂け目に飛び込んだ。
坑内、光学迷彩で身を隠しながら先を歩く竜司。
「私も微力ながらお手伝いしましょう」
小夜子は控えめだ。
ともにトレジャーセンスを持つ二人は、迷路のような蟻の巣を女王蟻にむかって一直線に進んでいく。
ほとんどの蟻は外にいるようで、ずんずん進むことができる。
小部屋がある。
幼虫の寝室のようだ。
「かわいそうですが・・・」
轟雷閃を打つ小夜子、幼虫が一瞬で殲滅する。
どこに隠れていたのか、成虫のジャイアントアントが竜司に牙を向く。
外骨格と外骨格の隙間をシャープシューターで狙いを定めて攻撃する竜司だが、蟻は倒れる一瞬の間に酸を吐いた。
竜司の腕を掠める。
小夜子が、ヒールを使い竜司の怪我を治す。
「すまねえぇ」
「いいんです、それより」
目の前には、巨大な空間が広がっている。
地面には、ごろごろと蟻の卵が転がっており、中央にはひときわ巨大な蟻が産卵の最中だった。女王蟻だ。
その女王蟻を取り囲むように、何対もの巨大蟻が口を開け、酸を吐きながら威嚇している。
一体が小夜子に飛び掛る。
鉄甲で殴り付けて応戦する小夜子。
壁にたたきつけられた蟻を竜司がシャープシューターで狙撃する。
他の蟻もじわじわと間合いをつめてくる。
蟻の卵がごろごろと転がってくる。慌てて拾い袋にしまう竜司。
「何してるのです?」
「つい。食いもん見ると・・・」
その間にも蟻は近寄ってくる。
「どうしましょう」
「ちきしょー、卵は勿体無いが、焼き払うぞ!」
顔を見合わせると、小夜子は轟雷閃を空間に打つ。広がる炎。
竜司は、スプレーショットを天井に向け乱射した。砂壁は崩れ落ち、女王の寝室は閉ざされる。
「逃げましょう、早く」
「先に行け!」
二人は、出口に向かって、走る。
途中、竜司は、トラッパーを使って罠を仕掛けた。生き延びた蟻がいても外に出るのには時間がかかる。
巨大岩の裂け目、蟻退治を終えた有栖とヴァーナーが覗き込んでいる。
「出てきましたわ」
有栖が手を差し伸べる。その手に小夜子がつかまる。ヴァーナーと二人で小夜子を引き寄せる有栖。
竜司は自力で登ってきた。
竜司、小夜子、ヴァーナー、セツカ、クレシダ、有栖、ミルフィの7人は、持てる力を終結して、蟻の巣を焼きつくす。
地を這うような音がする。集落の方角から別働隊の傷ついた蟻がやってくる。
身を隠す7人。
蟻たちは迷わず炎を上げる巨大岩の裂け目に身を投げてゆく。
「アリって実は栄養豊富だって。食べれるか調べて、出来るなら幼虫とかサナギとかを持って帰って食料にしたらいいかもって考えていましたけど、みんな燃えちゃいました」
ヴァーナーがぼそっと呟いた。
「いや、卵ならあるぞ」
竜司は誇らしげに袋を開いた。
4.子供が来る前に
蟻退治に関わったものたちは、それぞれが集落に戻り休息をとっている。
その間にも、子供たちを迎える準備は着々と進んでいる。
イルミンのザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)と強盗 ヘル(ごうとう・へる)は、孤児院周辺に柵を作っている。
全身真っ黒でぴっちりした着ぐるみを着たゆる族のヘルは、元孤児だ。
「俺は孤児院の設立が夢だからな、同じ境遇の子を助けたいし是非手伝わせてもらうぜ。」
傷を負って休む大鋸に、ヘルは告げた。
ザカコとヘルは、スキルや能力を使って皆が孤児院の周りに掘った壕の内側に柵を建てている。
「子供たちが怯えずに寝れるようにしてやんねーとな」
ヘルは、今までも様々な孤児院にお金が貯まると寄付をしている。
「なあ」
杭を打ちながら、ヘルがザカコに話しかける。
「孤児院、うまくいくといいな」
「そうですね」
汗をぬぐうザカコ。
「これが終わったら本棚を作りましょう。子供たちへのプレゼント、喜んでくれるといいですが」
二人は、黙々と作業を続けている。
5.お引越し
そのころ洞窟にすむ子供たちの元へは、和原 樹(なぎはら・いつき)とフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)が訪れていた。
孤児院建設を聞いて、引越しの手伝いに来たのだ。小型飛行艇で洞窟にやってきた樹を見て、レッテは大騒ぎする。
「なぁ、乗せてってくれよぉ、肉をよぉ、大鋸に食わせたいんだ!」
魅世瑠らと鳥を狩った子供たちは、その肉を大鋸と一緒に食べることを望んでいる。
しかし、大鋸は巨大蟻退治にいっていて戻ってこない。
「新しい家に引っ越す前に、荷造りと掃除をと思ってきたんだけど・・」
樹は困惑して、シー・イーを見る。
「大鋸なら蟻退治は終わったころダろう」
そこに、大鋸からの知らせが届く。
「やっぱり、蟻がいない間に来いといってるヨ」
洞窟の前には、小型飛行艇が並んでいる。
「そうだな、一度子供たちを運んで戻ってくるか」
「シーはどうするんだ」
フォルクスはシーを乗せていこうと思っている。
「残るヨ、ここをきれいにしたいヨ」
樹がうなずく。
「俺たちも同じ気持ちさ」
レッテがシーの袖を引っ張る。
「駄目だよ、一緒じゃなきゃ。シーがいないとみんな泣くっ!」
レッテの真剣な目に、シーの心が動く。
迎えに来た小型飛行艇とともに、樹とフォルクスは孤児院を作る集落まで移動する。
ザカコが隊列を組んで飛行してきた樹たちに手を振っている。
樹はザカコに子供たちとシーを渡すと、フォルクスと共に洞窟に戻っていった。
「ありがとネ!」
シーが手を振っている。
「立つ鳥後を濁さずって言葉もあるし、なるべく生活の跡は消しとこう。」
樹は洞窟の中に立っていた。
「・・・樹、この絵はどうする?」
フォルクスは絵に見入っている。
「・・・ああ、この壁画は壊すには勿体無いな・・・。また見に来たい人もいるだろうし、これくらいなら残しといても平気かな?」
ナガンが作った家具や武尊が持ってきた鍋を運びやすいように縄をかけたりまとめたりしながら、樹がボソッと呟く。
「自然の洞窟ならこの先、動物の住処になったりするかもしれないな」
「ああ、そうだな。獣の住処になっても、壁画をまた見に来たいな」
「みんなで快適に住めるようリフォームしたんだ、また誰かが住みつくかもしれないよ」
荷造りをしながら、洞窟内を見回す二人。
天井の穴はふさがれ、窓のようなものまで出来ている洞窟だ、誰かが住むことはありえそうだ。
洞窟の外で、夕焼けが始まっている。
「さあ、急ごう。日が暮れる前にこれを孤児院に運ぶんだ」
「そうだな」
二人も、黙々と作業に没頭している。
その夜、樹たちの頑張りで生活必需品が届いた集落では、蟻退治に加わったものと柵作りに従事したもの、他にも孤児院建設に加わったものたちで、ささやかな宴会が開かれた。メインは勿論カモ肉である。
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