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リアクション
「よろしい」
女帝の一言で、佑也はメイド姿に変わった。
「おおっ!」
「似合うぞ、兄者」
化粧などの女装しているわけではないので、なんというか、さばさばしていて体育会女子のようだ。
ドサッ。
城内の巨大なキッチンでは、料理上手のメイドたちが思い思いの料理を作っている。
キッチンに落ちてきたのは、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)だ。百合園の制服が、パステルピンクのフリル満載メイド服に代わっている。
そこにメイドを引き連れた女帝がやってきた。
「ここにも穴があるのか、なんといまいましい。あの黒ウサギ、戻ってきたら丸焼きにしてやるわ」
女帝はかなり怒っている。
あわててヴァーナーが挨拶する。
「ボクはヴァーナー・ヴォネガットです。女帝様、はっぴ〜にゅ〜いや〜です(ぺこり)」
鷹揚に頷く女帝。
「何か困っていることはありませんか?ボクが女帝様のおてつだいをします!」
ヴァーナーの言葉に女帝はにやっと笑った。
「まずは乾杯じゃ、皆に良い料理を作ってもらいたい」
料理人の一人ひとりにトランプ兵が持参のグラスを渡す。
「乾杯!」
女帝の合図で、皆がグラスに口をつける。
「飲んじゃ駄目!」
女帝に付き添ってきたメイドの冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)がヴァーナーに小さく声をかける。
しかし、もうグラスは空だった。
「そち・・・」
女帝がヴァーナーを見やる。
ヴァーナーの目はとろんとしている。
「わらわを手伝うといったな」
頷くヴァーナー。
「黒ウサギの代わりがいる」
女帝がヴァーナーに指先を向けると、ヴァーナーがヴォン!!ピンクウサギに変身した。
「そちが後釜じゃ」
ピンクウサギがぴょんと跳ねると足元に小さな足跡が残る。
「そのうち大きな穴が開けられるようになろう、兵、このウサギをウサギ小屋に連れてゆけ!」
ホホホーーーーーーー
笑い声と共に去ってゆく女帝。
兵に囲まれるピンクウサギ。
「待って、私が連れてゆきます」
小夜子がそっとピンクウサギを抱き抱える。ぶるぶる震えていたウサギは安心したのか、小夜子の腕の中で眠ってしまった。
「これはナンなんだ?」
メイド姿が板についてきた佑也がウサギを抱えた小夜子に問いかける。
「あなたは飲まなかったのですね。良かった・・・これを飲むと女帝のいいなりになってしまうのです。ほら、彼女たち・・・」
小夜子の目線の先には、二人のメイドがいる。
レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)とネノノ・ケルキック(ねのの・けるきっく)だ。
「女帝様のために、おいしい料理を作るのだよ、ワハハハハッハー」
二人は仁王立ちで料理人をせかしている。
「来たばかりのころは可憐でしたのに・・」
「じゃ、あの二人も飲んだのかな」
佑也が見たのは、桐生円と桐生ひなだ。
二人はなにやら悪臭漂うものと格闘している。
「さあ・・・でも、もともと・・・」
小夜子は言葉を濁した。
ケーキ作りを任命された円とひなが作っているのは、勿論ケーキだ。
スポンジ作りは終わり、円がどこで調達したのか、内蔵系のレバーとモツやハツをスポンジの間に挟んでいる。
マヨネーズ好きのひながその上からマヨネーズを生クリームの代わりに載せてゆく。
「・・・薬を飲んだと思いたい」
佑也がつぶやく。
ひなと円が作るケーキの余りの怪作ぶりに、他の料理人も手をとめて二人を見ている。
ドサッドサッ。
百合園の生徒、神代 明日香(かみしろ・あすか)と神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)は着ていたメイド服のまま落ちてきた。
場所は小さな部屋だ。
細くドアを開いて、外の様子を伺う明日香。
「誰もいない…いきますぅ」
そっと外に出る。
夕菜は、潜入のためハンドガンをスカートの中に隠してある。
途中警備のトランプ兵に女帝の居場所をさりげなく聞きながら、大広間までやってきていた。
「いきますよっ」
二人はそっと、メイドの軍団に紛れ込む。
夕菜のスカートがゆれるたびに、ハンドガンの銃身が見え隠れしている。
ドサッ。
教導団の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)とリース・バーロット(りーす・ばーろっと)が落ちてきたのは、アイリスの目の前だ。
「あのウサギ、落とす場所を決められるようです」
腰をさすりながら小次郎はアイリスに話しかける。
「アッ!」
小次郎は声を上げる。体がトランプ兵に変えられているのだ。腰がない!
「あのウサギは今何をしている」
アイリスは、またも両腕を出し落ちてきたリースを受け止めていた。
「落とし屋ですわ」
ありがとう、お礼を言うと守護天使のリースは腕からすべり落ちる。
「おとしや?ですかぁ?」
メイベルが小首をかしげる。
「喫茶店に看板を置いて、商売をしていますの。穴から落ちた人を救いたい人からお金をとって、ここに送り込むんです」
小次郎は、一緒に落ちてきた荷物から爆竹とライターを取り出した。
「作戦を考えてきました・・」
そっとアイリスに耳打ちする。
メイベルは空を見上げた。
「それでは、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)とフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)ももうすぐ来るのかしら」
パートナーの二人を気遣う。
ドサッドサッ。
セシリアとフィリッパが落ちてきたのは、城内の回廊だ。二人とも愛らしいメイド姿だ。
「僕はメイベルのところにって頼んだのに」
二人は周りを見回すがメイベルの姿はない。
「セシリアがウサギを捕まえようとするからですわ。意地悪されたんですわ」
「だって、あいつを捕まえたほうが便利じゃん」
「ロープでぐるぐる巻きにされたら、誰だって怒りますわ、結果逃げられてますし」
「とにかく、やるよ」
セシリアは一緒に落ちてきたバッグからロープと油を取り出す。
回廊の真ん中に油をまいてゆくセシリア。
「女帝って真ん中を歩くと思うんだよね」
そのころ城内では、パーティの飾り付けが急ピッチで行われていた。
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は、正気を保っているが失った演技をしている。教導団らしく手際よく仕事をこなしている。有能さが認められ飾り付けの責任者になっている。
鴉の濡れ羽のような黒髪の映える真っ白なメイド姿だ。祥子の美しさにぼっとなるメイドも多い。
「メイドの経験はあまりないの、女帝様に失礼があってはいけないし教えてくださる?」
祥子は言葉巧みにメイドを誘導して小部屋に連れてゆく。彼女たちの動きを奪って、自らの手下とするために快楽を与えてゆく。
「女帝より私のために働くのよ」
女帝の薬で自我の失われているメイドたちは、あっけなく祥子の技に落ちた。
「少しでも女帝の味方を減らして、アイリスを助けてあげたいの」
祥子が本当に狙っているのは、女帝の信頼を得ているメイドだが、まだ近づけないでいる。
ドサッドサッ。
菅野 葉月(すがの・はづき)とミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は黒ウサギに頼んで、人気のない城の小部屋に落としてもらった。
二人ともメイド服だ。葉月は少し憮然としている。
「どんな格好で落とすかは黒ウサギが決めるみたいだよ、さっき聞いたんだ」
「おなかの辺りがすーすーする」
葉月はミニスカートの裾を思いっきり引っ張っている。
「トランプ兵だと動きにくそうだから、メイドにしたんだよ、大丈夫、似合ってるよ」
足音がする。
ミーナが隠れ身をつかって、二人の姿を隠す。
入ってきたのは、トランプ兵だ。
「誰かいますかぁ」
トランプ兵は、穴から落ちてきた人々を回収するためにあちこちの部屋を回っている。
そっと後ろに回りこむ葉月、トランプ兵の首筋に一撃、倒れる兵。
心配そうにミーナが覗き込む。
「大丈夫、気絶しているだけです。ベッドに寝かせましょう」
二人で兵を運ぶ。
「もうすぐアイリスさんたちが城を攻撃するはずです。それまでに女帝の戦力を減らさなければ」
頷くミーナ、二人はそっと部屋を出てゆく。
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、正気を保っている。超ミニのメイド服で頭には大きなリボンがついている。
モップをかけながら城の様子を探っている美羽。
掃除しているフリをしながら、瀬蓮を探している。
ドサッ
志位 大地(しい・だいち)は庭に落ちた。勿論トランプ兵の身なりだ。
「この体は、紙?」
自分の体を触ってみるが、判断がつかない。
「火が付くと大変ですね」
ブラックコートを羽織ると、持ってきた袋から、ダイナマイトと花火を取り出す。
「あとはタイミングですか」
コードを地中に埋めながら、ダイナマイトを埋めてゆく。
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