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リアクション
第5章 その頃の蒼空学園
クイーン・ヴァンガード特別隊員である優斗と、そのパートナーの諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)は、蒼空学園で留守番をしていた。
万が一の事態に備えて、クイーン・ヴァンガード隊員で救出部隊を編成し、待機中は強化練習をしておこうと試みるも、集まったのは自分とパートナーの2人だけであった。
孔明は作成したカリキュラムを手に、ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)の意見を聞いておこうと、優斗を引き連れて、校長室へと赴く。
ノックをすると中から間もなく返事が聞こえてくる。
「失礼します」
優斗たちが入っていくと、ミルザムは環菜の代わりに依頼の書類を纏めているようであった。
「有事の際の救出部隊のための講習カリキュラムです。目確認していただきたく、持って来ました」
孔明が纏めたプリントを差し出すと、ミルザムは受け取って目を通し始める。
「この講習を受けていれば、有事の際は安心ですね」
一通り目を通せば、プリントを孔明へと返しながら、告げる。
彼女が孤独感に苛まれ続けているのではないかと、優斗と孔明は暫し校長室で彼女と話をすることにした。
「要塞に乗り込んだ仲間と連絡を取るようにしているんです。ミルザムさんもお茶会の様子、気になりますよね。連絡取ってみましょうか」
携帯電話を取り出しながら、優斗が訊ねる。
「お茶会の様子を、ですか。それは確かに気になりますね」
お願いします、とミルザムの返事に、優斗は乗り込んだ仲間――隼人の携帯電話へと発信する。
けれども、電波の届かないところにいる、という携帯電話独特のアナウンスが流れ、繋がらない。
「おかしいですね……」
それこそ何かあったのではないかと不安な思いをさせてしまった。
「連絡が取れたら、また報告に来ます。行きましょう、孔明」
「はい」
いつでも救出部隊として出向くことが出来るよう、2人は校長室を後にした。
入れ替わりで校長室へとやって来たのは神代 師走(かみしろ・しわす)だ。
「あんた、お茶会行けなくて残念だったねぇ」
「そんなことはないです。ティセラに呼ばれたのは環菜さんですし、代わりに校長室を任されるという大役を請けましたから」
入ってきた師走に、ミルザムが答える。
「そう? まあ、ささやかながら、私からお茶会のお誘いだよ」
告げて、師走はローテーブルの上で、お茶の準備を始める。
「どうぞ」
用意したお茶を勧めながら、師走は携帯電話を取り出す。
茶会の様子を彼女へと知らせるために、パートナーから連絡があるはずなのだが、一向に着信する様子がない。
こちらから発信してみても電波が届かないところにいる旨を告げるアナウンスが流れるだけだ。
「空京ミスドであんたを攫った男から伝言」
会話を伝えるのは後回しに、そう告げると、ミルザムが強張った様子になる。
「『何を聞いても、お前だけはティセラを見捨てないでやってくれ。お前達が手を取り合って歩む未来を、オレは信じてる』……だって」
「手を取り合って……?」
敵対している相手と、そのような未来があるのだろうか。
ミルザムが首を傾げると、師走は「伝えたからな」と席を立つ。
「それじゃ」
茶器の片付けはミルザムに任せて、彼女は校長室を去っていった。
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