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リアクション
「って、待って下さい! 危険です!」
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は『神速』を用いて。武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は『バーストダッシュ』を駆使してセイニィを追った。サバゲーのルールに則るなら星剣『星双剣グレートキャッツ』は防御にしか使えない、これは彼女にとっては不利にしか働かない。
「あ〜っ! セイニィちゃん見つけ〜!」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が飛び出してきた。詩穂はいきなり襲いかかってきた。
「会いたかった。ずっと探していたんだよ」
「ちょっと待って! 今はそれどころじゃないのっ」
詩穂は『神速』を使って近接格闘を挑んだが、それでも避ける事に徹したセイニィの身のこなしにはついて行くことは出来なかった。
「うぅ〜、それならっ!!」
一か八かの大勝負。追いつき来た唯斗と牙竜の止まり際、そしてセイニィの動きを『先の先』で予測して。
「え〜いっ!」
『鎖十手』をブン投げて、空中で『サイコキネシス』を唱えて操る。
「危ないっ!」
「お、おいっ!」
避けようとした事が互いに邪魔をする結果となりて、更にはセイニィも急には止まれなかったようで―――
唯斗と牙竜がサンドイッチ。『鎖十手』に絡め取られ、2人の胸板がセイニィをがっしり挟んでいた。
「んぁっ、ちょっ、とォ」
セイニィが熱い吐息を濡らす度に唯斗も牙竜も全身を硬直させた。動けないのだ、『鎖十手』に絡め取られているので動けないのだ、小さくて柔い温もりを噛みしめている訳では決してないのだ。
「なっ……」
当人たちよりも顔を赤らめて、いや、血色に染まるほどに怒り滾らせているのはティセラだった。
「あんな……男2人でセイニィに抱きつくなんて……」
背丈ほどもある星剣が振り上がってゆく。その様はプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)の頬に冷や汗を流させた。
「あらあら、これは……」
危惧していた事が現実になろうとしている。怒りで我を忘れたティセラを止めるは容易に非らず。その力を抑えることなく振るわれたらゲームなどと言っている場合ではない。ティセラ樹上の枝に跳び移りて戦場を見下ろすと、血管が浮き出る程に力強く星剣を握りしめた。
「みなさん! 逃げて下さい!!」
プラチナムの声に幾人かが気付いた。それでも今すぐに退避するに至る者は少なかった、そう思わせるよりも先に―――
「今すぐ……」
ティセラは星剣を掲げるその腕を、
「今すぐセイニィから離れなさいっ!!」
力一杯に振り下ろした。
高圧縮されたエネルギーが空を裂く。斬撃は轟音を伴いながら戦場に襲いかかった。
「えっ、ちょっとこれ、動けない―――」
セイニィは瞳を見開いた。彼女は今もなお、絡め取られたままのままであったし、迫り来る斬撃は10mをゆうに越えている。どうにか直撃を避けた所で、斬撃が地盤を斬り抉る衝撃に、吹き飛ばされてしまうだろう。
それでも避ける? このまま身を守る? 『鎖十手』を解いて地に足が着いた時には、斬撃は彼女のすぐ頭上に迫りきていた。
―――避けられない。
セイニィが覚悟を決めた時、斬撃は頭上で衝裂した。
激しい衝突音。直後には嵐のような衝撃波が駆け広がり、辺り一面の木々も地をも吹き飛ばした。
一瞬にして、巨大なクレーターが出来上がっていた。
その中央に居て、セイニィの足は、今も地についていた。恐る恐る瞳を開けると、そこには紫青の長髪が舞い揺れていた。
「パッフェル…?」
「……セイニィ。ケガはない?」
首だけで振り向いて彼女は言った。パワーランチャーの銃口はティセラに向いている。
「あたしは平気。って! パッフェルこそ! ティセラの攻撃を受けたんでしょ?」
「……撃墜した。問題ない」
顔を戻し、視線を向ける。その先でティセラのそれとぶつかった。
「……ティセラ」
銀色の髪が揺れている。不気味なほどに着こなしている野戦服も、今は似合っているとはとても思えなかった。
「……どうして……どうして邪魔をするの?」
「あなたを連れ戻すためですわ」ティセラは荒い声を抑えつけてから、静かに言った。
「さぁ、一緒に帰りましょう」
彼女はパッフェルに事の重大性を説いた。とにかく今は一刻も早く学園に戻る事が最良の策であることも。
「もう十分に楽しんだでしょう」
「……まだ、決着はついてない……」
パッフェルは辺りを見回した。森は原型を失い、地肌は露出してしまっている。「……まだ、決着はついてない……まだ時間もある、だから! ……帰らない」
「パッフェル!!」
「これはみんなのサバゲーなの。邪魔しないで!!」
パッフェルが叫んだ。サバゲーに参加した仲間たちはさっきの衝撃から各々に身を守ったようだった、つまりティセラさえ排すればサバゲーを続行できる。
再びに銃口がティセラに強く向けられた。
「どうしても続けるというのなら、力づくでもあなたを止めます」
「……サバゲーのために」
ティセラの言葉にも彼女の瞳は揺れることなく。
「みんなのために、私は……負けない」
「ちょっと待って! パッフェル! ティセラ!!」
銃口が輝き、発を成す。直径にして5mを越える波動の砲撃がティセラに向かいて放たれた。
ティセラは大剣の切っ先を砲撃に向けると、そのままに正面から砲撃を受けた。
流れる川に居座る巨石のように、大剣は砲撃を裂いて防いだ。周囲の空気は一瞬で塵になりゆくが、ティセラの体は傷一つ負うことはなかった。
ティセラが砲撃を捌ききった時だった。
「サバゲーがしたいのだろう?」
鬼崎 朔(きざき・さく)がパッフェルに飛びかかった。
「なら、最後まで実銃は使うな!」
エアガンを見せつけるようにしてから構えた事で、パッフェルは一度は向けたパワーランチャーを下ろしてモデルガンを手に取った。
「そうだ! サバゲーはまだ終わっていない! あくまでもサバゲーで決着をつけようじゃないか!!」
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