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【カナン再生記】黒と白の心(第2回/全3回)

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【カナン再生記】黒と白の心(第2回/全3回)

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終章 歯車となりて

 遠く――巨大飛空艇の影が去りゆくのをモートは眺めていた。
 すでに戦いは一区切りの終わりを見せていた。砦を脱出したシャムスたちは、いつの間にか待ち構えていたエリシュ・エヌマに載って戦線を離脱したのである。
 巨大飛空艇を追う力が消耗した砦軍に残されているわけでもなく、今は更なる進軍を起こしてニヌアの地を制圧に向かっているところだった。おそらくそれは確実のものとなるだろう。
 今の南カナン軍を相手ではニヌアの地を制圧することなど容易い。まして――こちらにはエンヘドゥという駒がある。ニヌアを失意のどん底に墜としてやろうではないか。
 ただ、気がかりなのは……
「まさかあれが出てくるとは……予想外でしたね」
 巨大飛空艇、エリシュ・エヌマ。
 驚愕と困惑が混じりあったような声を発すモートを、来栖は珍しそうに見やっていた。この男がこれだけ動揺を見せたとは……一体?
 だが、やがて……モートは元の不気味な笑みを取り戻した。
「……ひゃひゃっ……しかし、余計に面白くなってきましたねぇ。そうですか、エリシュ・エヌマですか。あれを見るのも何百……いや、何千年ぶりでしょう……」
 何千年……?
 その言葉に、来栖は並々ならぬ畏怖を感じざる得なかった。一体、この男は何を考えているのだろう。もはや人とすら思えぬ目の前の化け物は、舐めるように唇を裂いて、彼にしか見えない何かを嘲うのだった。



「古来より永劫の時を生きるその獣は、影よりいずる闇の使者なりて。全ての心を飲み込まんとする口を持ち、魔竜のごとき翼と肉体を得ている。ただ唯一抗う手段があるとすれば、それは心の影に支配されぬ強さを持つしかない」
 ぱたんと、本が閉じられた。
 そこは、誰もいない村の一室だった。カナンがネルガルに支配されたとき、真っ先に襲われたのだろうか。もはや朽ち果て、捨てられた土地となっていた。
 そんな村の一室で、黒崎 天音は文献を膝元に置き、外を眺める。
「さて……どうなるかな」
 獣か、人か、はたまた別の何かか。遠く空の向こうで飛行する飛空艇を見やって、彼は呟いた。

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
シリーズシナリオ「黒と白の心」第2回、いかがだったでしょうか?

GAや陽動における作戦など、さまざまな個性あふれるアクションが多かったかと思います。
自分も驚かされるようなアクションが多く、楽しんで執筆させていただいた印象です。

結果的に、南カナン軍は敗北して撤退を余儀なくされましたが、決して皆さまのアクションが悪かったから! というわけではありませんので、そこはご安心ください。

エンヘドゥは“白騎士”となり、シャムスたちの前に立ちはだかることに……。
そして、ついに起動した巨大飛空艇エリシュ・エヌマ。
敵軍から難を逃れた南カナン軍はどこに向かうのか。
「黒と白の心」は次回で最終回となります。
クライマックスに向けて、自分も皆さまと一緒に頑張りたいと思います。

それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加ありがとうございました。

※02月25日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。