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昼食黙示録

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昼食黙示録

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 とある日の宿り木の果実、神代 明日香(かみしろ・あすか)ノルニル『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)と共に昼食を取っていた。
 先にノルンが席を確保して待っていたので明日香は席を探す手間を省けた。
 到着して、マスターに今日のお薦めと一言告げて注文を終える。
「ふぅ、お腹が空きましたね。 ご飯が待ち遠しいであります」
「あの、明日香さん。 食後に山羊ミルクのアイスを食べたいのですが、良いですか?」
「良いですよ、でもちゃんとご飯を食べ終わってからです。 残したら無しですからね」
 ノルンの希望を聞いて、ちゃんと食事を完食してからと明日香は告げると、ノルンは嬉しそうにする。
 その一つ一つの仕草が可愛く思えて、明日香は頭を撫でたくなる。
 しかしノルンは頭を撫でられることに抵抗感を見せていた。
 子供ではない、という意識が強いためで、人前でそうした子供扱いを極度に苦手としている。
 そうしていると、お薦め定食が二人前来たので、食事を始める。
 ノルンは子供扱いを嫌う、とは言いつつも小柄すぎる体では高校生用の食事量は多いようだ。
 全て食べなければアイスは無し、という言葉がノルンに重くのしかかる。
 さすがにこれを完食というのは無理があるかなぁと、明日香は内心考え始める。
 どうやらご飯を半分、おかずを少し食べたところでノルンのお腹は満腹に近くなってしまったようだ。
 段々涙目になっていくその様子に、明日香は優しく声を上げる。
「ノルンちゃん、それじゃあお味噌汁一杯飲んだらアイス食べてもいいですよぉ」
「……良いんですか?」
「はい、ですからもう少し頑張りましょう」
 柔らかな笑顔をノルンに見せて暗に許しを出す。
 理解したのか、お味噌汁を一杯飲み干して飲み終わったのを明日香に確認させた。
 そしてノルン待望の山羊ミルクのアイスを注文、注文はすぐに受理されてノルンの下に届く。
「はい、ゆっくり食べるのでありますよ」
「分かりました! いただきます!」
 高らかに頂くことを宣言するノルンは、アイスを掬って口に運ぶ。
 彼女の口の中に、滑らかで濃厚な山羊ミルクの味がノルンの何かを満たす。
 本当に好きなんだなぁと思いながら、ノルンの笑顔を嬉しそうに見つめる明日香だった。

「あの、本気で言っているのですか?」
「あぁ、本気だ。 メニュー全部頼む」
 注文に来たミリアを唖然とさせてしまう天真ヒロユキ(あまざね・ひろゆき)
 どう考えても食べきれないことは明白なのでこのまま受理していいものかと思ったが、ヒロユキは一点張りの答えしか出さない。
 仕方なし、ということでとりあえずは下がるミリア。
 ヒロユキも、まさか本当にすべてのメニューが出て来るとは思っていない。
 ありがちな、一度はやってみたい冗談の一種を彼はやりたかったのだ。
「……さて、これで何が出てくるか」
「はい、どうぞ。 日替わりの海老フライ定食です」
「……」
 先程の注文でなぜこんな普通の定食が出てきたのか、ヒロユキは分からなかった。
 そう考えても悪質ないたずらだから、てっきり無視されると考えていたのにと彼は思っていた。
 しかし料理を運んできたミリアはいつも通りの天使スマイルを置いてカウンターに戻っていく。
 ヒロユキの目の前には大きな海老フライがある。
「……ま、いいか」
 あまり深く考えても仕方がないので、今は空腹を満たす事に集中するのであった。