葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

暴走の眠り姫―アリスリモート-

リアクション公開中!

暴走の眠り姫―アリスリモート-

リアクション

 
 ―― 天御柱学院校内

「せっかく、人が気持ちよくイコン洗ってたのに……!」
 不満をたれ、斎賀 昌毅(さいが・まさき)は機晶姫を【禍心のカーマイン】で殴りつけた。銃の台座は機晶姫の頭をカチ割ることは出来なくとも、十分にダメージを与えられる。
 イコンデッキでの整備中に突如乱入した機晶姫によって、またイコンを洗い直さないといけない。それどこか、飛散したコンクリートや瓦礫でボディーに傷が付いているし、ワックスだって塗りなおしだ。これ以上自分のイコンに何かされたらたまったものじゃない。
「お前ら全員狩りきってやるから覚悟しやがれ!」
 面倒だが、イコンに手を出されるほうが鼻持ちならない昌毅は、イコンデッキ並びにプランとへ進行するであろう、機晶姫たちを止めることにした。
「そうだな。それが彼女たちのためであろう。彼女たちが誰かを傷つけてしまえば、その後の立場も悪くなるだろうし」
 阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)も昌毅に加勢する。敵の死角に入りつつ、機晶姫の急所であるコアを【ハンドガン】で狙う。彼女たちと同じ機晶姫だからこそコアの位置も予測できる。彼女たちのため、と言っておきながらも助ける気はない。
 同じ機晶姫である那由他は後の自身の心象を考えてのことだ。何が原因か知らないが、機晶姫が暴れたとなっては、那由他もまた他種族からいい目で見られなくなる。猫かぶりな性格としてはそれは何としても避けたい。
 そんな那由他の心情を察知してか、彼女をマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)が《ミラージュ》でアシストする。機晶姫たちの攻撃が
那由他の幻影に向く。その隙をついて昌毅が《シャープシューター》し、那由他本人は《隠れ身》で身を顰める。
 しかし、3人だけでは対処しきれない敵も出てくる。例えば、【機晶キャノン零式】を搭載した奴とかだ。
「機工士をなめるなよ!」
 それを放とう『SPチャージ』する機晶姫に宙野 たまき(そらの・たまき)が挑む。チャージ仕切る前に、近づいて、至近距離からの《放電実験》で回路をショートさせる。機械の体である機晶姫には効果絶大だ。
「こいつら、狙いはイコンか」
 恐らくは破壊が目的だろうと、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)が予測する。機晶姫を操っているのが誰か知らないが、イコンやそれを製造するためのプラントを破壊すれば、学院に甚大な被害を及ぼせる。悪い奴が考えそうなことだ。
「おそらくね。このままだとイコンが危ない」
 と、たまきも警戒する。
「そんなことよりもささとおわらそうや。せっかく遊びに来たんやし」
「私も芽衣に賛成〜」
 如月 芽衣(きさらぎ・めい)ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)が口を揃えて言う。淳二と彼女らは娯楽目的でココに来ていた。騒動に巻き込まれただけで、天御柱との問題とは一切関係がない。トバッチリを受けただけだ。
「つーわけで、ランチャー撃ってエエか? あ、今日は『白の剣』ヤッた」
 まあええか、と芽衣は機晶姫に『ツインスラッシュ』で仕掛けた。重火器は無くとも、剣で戦うのも彼女は好みだ。ミーナの《パワーブレス》支援で更に彼女の攻撃力が増す。
「しかし、誰がこんな事を? 機晶姫用の暴走電子ウィスルでも誰かばらまいたか?」
 マイアがそう言う。電子頭脳で構成される彼女達ならその可能性も否定出来ない。だがそれでは辻褄が合わない。那由他も芽衣も機晶姫だと言うのに、暴走していない。
「電子ウィルスなら、剣の花嫁も危なくないか? こんな所で《光条兵器》なんて使われたくないぞ」
 「まったくだ」と昌毅も淳二の冗談に賛同する。だが、冗談ではなかった。
 整備中のイコン目がけて、光が走った。放出型の光条兵器の光だ。この瞬間たまき達整備科の仕事が増えた。
「あの野郎! なんか俺のイコン狙ってないか!?」
 昌毅が青褪める。まさにそうだ。剣の花嫁の《光条兵器》の切先は彼のイコンへと向いている。昌毅の場所からでは彼女への攻撃は届かない。「マジデ辞めてくれ」と言う顔で昌毅が願うも、自動的ではる彼女はそんなことは構わず撃とうとする。
「おらよ!」
 と小さい影が物陰から《隠れ身》を解いて出てきた。【リターニングダガー】剣の花嫁の腕に刺さる。辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)の《先制攻撃》による《ブラインドスナイプ》が成功した。放たれた光条兵器の光は昌毅のイコンを掠めるようにして違うところへ飛んだ。
 昌毅はホッとした。
 刹那は更に強襲を掛けて、剣の花嫁の四肢を切った。
「悪く思うなよ……」
 腱を切られては動けなくする。多少残忍ではあるが、このような場所で、《光条兵器》を放たれまくるとなっては、止む終えないと彼女は思う。
「助かった……、ホント感謝すんぜ」
「仕事なのでのぉ。校長から達示がなければ、助けとらんから気にするな」
 天御柱に訪れていた刹那は、騒動を傍観するつもりだったのだが、コリマからの強制メールで、イコンデッキに加勢するように言われたから来ただけだ。報酬目当てなだけだった。
「では、ささっと仕事を終わらせるのじゃ、まだ次の仕事があるからのう」
 残りの機晶姫を無力化した後に刹那は『アリサの捜索』行かなければならない。