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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
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リアクション


―――ドオオォォォーーンッ!!!

 地上で派手な爆発音がする。
「な、何?」
 エクスが見ると、パレードの列の中に巨大な火柱が立ち上っている。
「あ、コラ! 駄目だよ!! 戻って!!」
 ノーンの悲鳴が聞こえる。
 見ると、ノーンの呼びかけに一旦引きかけた大型昆虫の一部が、再び地上のパレードの中に現れた眩い光を放つ巨大な火柱の方へとに降下していく。
「遅かったか……」
「汚物は消毒だ〜♪」
 遅れて駆けつけた和輝とアニスの駆るグレイゴーストがヴリトラ砲を撃ちながら旋回し、擬似的な範囲攻撃を行おうとするも、既に時は遅すぎた。
 襲いかかる巨大昆虫に地上で待機していた剛太郎が機銃で応戦を開始しようと照準を定めるが、「数が多すぎる!」と悲鳴をあげる。
 そこに、芽衣の乗る疾風迅雷が到着するまで、まだ暫くかかるのである。


 地上のハロウィンパレードで突如起きた謎の大爆発と火柱。結果的に巨大昆虫達を再び呼び寄せてしまったこの騒動の発端は何か?
 少し話は遡る。
 未散と別れた衿栖は地上での警備会社の一日署長とパレードのレポーターをコツコツとこなしていた。
 目の前のTVクルーから、キューの合図が出る。
「はーい。地上の衿栖です。えーと……未散さんが大変な事になっていましたが、ご無事なんでしょうか? ……と、またパレードの山車が来ましたね」
 衿栖が見ると、巨大なもこたん……いや、熊のぬいぐるみを両手で天に突き上げ、がに股でカックン、カックン蟹のように横歩きしながら、琴音ロボが行進してくる。
 全裸改造された琴音ロボが、サンバ衣装のマイクロビキニにオーストリッチの背負い羽を纏い行進してくる。その全身は電飾が無数に施されており、眩いばかりの光を放っている。
「……サンバでしょうか?」
 衿栖がファーストインプレッションでの感想を呟くが、それは、琴音ロボに搭乗しているコンクリート モモ(こんくりーと・もも)ハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)も重々承知していた。
「この両足の間を通過しない人はルール違反……ラスボスまで行けないからね。あ、股間は見るな!」
と、パレード参加者に訳のわからぬルールを外部スピーカーを使って強要するモモ。
「……えーと。す、素敵なイコンですね! まるでサンバカーニバルを彷彿とさせます!」
「そこの黒猫のあんた! まるでじゃなくでこれはサンバなんだよ!!」
 衿栖に向けて外部スピーカーで叫ぶモモ。琴音ロボの頭が270度くらい回転している。
「え、サンバなんだ……ていうか、首ッ!!」

 ここで話はモモが今回の琴音ロボのコスプレを完成させたあたりまで遡る。
「こう見えて、あたし整備科……」
 スパナを握りゴーグル越しに微笑むは、格納庫で改造イコンを見上げるモモ。充実感にあふれたその顔には、オイルの汚れが少し付いている。
「改造はギリギリだったけど、我ながら完璧……」
 そびえ立つは琴音ロボ!
「これなら、今度のサンバパレードも完璧だわ!」
……が、そんな改造イコンをモモの隣で見てお口あんぐりなのはギルティであった。
「あの……モモさん? これ……天宮さんが、いや?WMさんが黙っていないんじゃ……」
 蒼空に危機をもたらす魔改造を気にするギルティ。

 しかし、本当の危機は当日の会場についてから起こった。
「えっ!サンバパレードじゃない? だってここに山車にダンサーって……」
 周囲のハロウィンパレード参加の山車を見たモモが、警備員をしていた三鬼を捕まえ、パレード参加者募集のチラシを見せて問い詰める。その背後には明らかに周囲から浮いているサンバモードの琴音ロボ。
「おまえ……ダンサーっていうのは山車やステージで踊るヤツの事を言うんだぜ?」
「ガーン!!
「第一、ここにハロウィンパレードって書いてあるだろう?」
「くっ……」
 地面に膝を着き、苦悩するモモ。ギルティは壮大に並ぶパレードの山車を見て絶叫する。
「某夢の国イベントをパクるなんて……さすがはパラ実。なんてドス黒い……超ギルティ!」
「パクってねぇよ」
「ミーには同じに見えるネ!」
「インスパイアだって言ってるだろう!?」
「フ、フフフ……」
 未だ言い争う三鬼とギルティに低く笑いながらユラリと立ち上がるモモ。
「あーもう、うるさいわね。ハロウィンパレードでしたって………なら、適当にグロいもん持たせときゃいーのよ!」
「いや……その理論はどうかと思うぜ?」
 突っ込む三鬼。しかし復活したモモにギルティが同調する。
「じゃ、ミーはハロウィンっぽいオレンジ色の熊プーの声担当するヨ!!」
「何だ熊プーって? てか、危険な匂いがプンプンするんだがな」
「アレ!!」
 三鬼がギルティの示す方向を見ると、琴音ロボの両手に持たれた、深淵を覗くような焦点の合わない目、だらしなく開いた口から蜂蜜たらすオレンジ色のぬいぐるみが見える。
「正式名称は熊の……モゴォ!?」
「ギルティ……お楽しみというのは本番まで取っておくものだわ……フフフ、三鬼、また後でね?」
 ギルティを抱えたモモが歩いて行くのを三鬼は不安な思いで見つめるのであった。

「何もしてないわけじゃないさ。僕は何もしないをしてるんだよ。いや、むしろ働いたら負けかなと思ってる。あ、蜂蜜はください」
 カックン、カックン蟹のように横歩きする琴音ロボの持つ熊のぬいぐるみの声が周囲に響く。担当はギルティであり、どうやらボイスチェンジャーも使用しているみたいだ。
「あの……もう少し、夢のあるような声を聞かせてもらった方が……」
 衿栖がそう呟くと、「ハロウィンって言ったらこういうのでしょ!」との返答が返ってくる。
 そんなこんなで、パレードの道で一番観客が入っている場所まで行進してくる琴音ロボ。
「よし、観客前の見せ場でパフォーマンスだ!!」
 操縦席のモモが叫ぶ。
「モモ、何をするの?」
 ギルティにそう言われ、暫し考えこむモモ。
「えーと、夢の国でやってるのはなんだっけ?」
「エレクトリカルなんたらだったネ」
「そう!! じゃ、いくわよっ、必殺エレクトリカルブレード!」
 動きを止めた琴音ロボ、その目に光が収束していく。
「光一閃ビームアイ!」

―――バシュウゥゥゥーーッ!!

「「「おおおおぉぉぉ!?」」」
 目からビームを放つ琴音ロボに拍手する観客達。
「モモ! みんな盛り上がってくれてるネ!!」
「フフフ! 私の琴音ロボが皆の注目を集めるなんて、カ・イ・カ・ン! 必死で改造した日々は無駄じゃなかったわね!!」
 操縦席で高笑いしていたモモの腕が、琴音ロボの首を回転させるスイッチにあたる。
 途端に、目からビームを放ち続けたまま、灯台の様に360度回転し始める琴音ロボの頭。
 そしてそのビームが持ち上げていた熊のぬいぐるみを直撃する。
「あ、ビームでぬいぐるみに火が……」
「にゃー! ぬいぐるみ燃えてる…早く捨てて、捨ててェェー!!」
 ギルティが叫ぶ。
「「「うわあああぁァァァっ!?」」」
 慌てふためく観客。
「やっぱりサンバは間違いだったんだー!!」という声を聞いたモモがこめかみに血管を浮き上がらせる。
「今悪口言った奴誰だー!」
 火のついたぬいぐるみを投げつけようとするが、既にぬいぐるみを燃やす炎は琴音ロボの両腕に伝わっていた。
 さらに、ダチョウの背中の部分の皮膚を利用したオーストリッチを使用した背負羽に引火していく。
「熱い!!」
「モモ!! 早く逃げるネ!!」
 ギルティに促され、コクピットから脱出するモモ。
 これを実況していた衿栖が叫ぶ。
「大変です!! パレードで火事が起こってしまいました!! ……え? CM? そんな場合じゃないでしょッ!?」
『一日署長』と書いた襷を見た衿栖がマイクを捨てて現場へと走りだす。