リアクション
第三十九篇:十田島 つぐむ×ミゼ・モセダロァ×ガラン・ドゥロスト×竹野夜 真珠
ここではない時、ここではない場所。
これは、もしかしたら存在しえたかもしれない可能性を辿った世界での恋物語の一つ。
新婚ほやほやの素敵な若奥さん竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)の朝は早い。
技術系の会社に勤務する、素敵な旦那さん――十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)の仕事は、発達したネットワーク社会によって在宅で行えるものとなっているが、それでも、会社員の朝が早いことに変わりはないのだ。
素敵な旦那さん――つぐむと結婚して庭付きの新築の住居で猫と犬を飼って愛し愛されて暮らす。
その夢を叶えた真珠は、今日も朝から張り切っていた。
もっとも、在宅勤務が可能とあって、新築の庭付き一軒家で二人は毎日昼間からイチャイチャしている。
まるでフルコースのような朝食を作り、食べ終えた後は、肩もみと称して、PCデスクで作業するつぐむに始終ボディタッチし、そして昼食を終えた後は、昼寝の休憩という名目で、添い寝や膝枕――それが二人の日常だ。
そして、そんな二人を見る一対の視線が一つ。
二人が飼っている狼犬――ガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)は、家の庭に面しているガラス張りの出入り口からつぐむと真珠がイチャイチャしているのを見てこう思う。
(たまには、こんなのもよかろう)
そして、庭にある犬小屋に入って昼寝をする。
一頭の犬が二人を見ているのと時を同じくして、一頭の黒猫――ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)はつぐむのフィンガーテクニックを堪能していた。
喉を撫でてもらいながら、気持ち良さそうに喉を鳴らすミゼ。ミゼは、つぐむにとても良くなついていた。
こうして、十田島一家の平和な日常は過ぎていく。
ここではない時、ここではない場所。
これは、もしかしたら存在しえたかもしれない可能性を辿った世界での恋物語の一つ。