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リアクション
「どういうことだ……過去が見られるんじゃなかったのか?」
海が呟くが、誰も答えを出す者はいない。
――『原典』を開き、目が覚めると、海達は真っ白な空間にいた。
見渡す限り、ただただ白い空間が広がり何もない。
同行者たちもこの様子には動揺を隠しきれていない。
「まさか、これが過去……ってわけじゃないですよね……?」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が辺りを見渡して言う。
「さ、流石にそれは無いとアルティシアは思います……多分」
アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が自信が無さそうに近遠に答える。返答というより、自分に言い聞かせるような感じであったが。
「だが、この光景は説明がつかないな……」
「これから何か始まる、と思いたいですわね……」
イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が空を見上げて呟く……空と言っても、真っ白な空間しか無いが。
「……そう言えば、一度しか見られないと言っていましたが……既に開かれた後、なんてありませんよね?」
「そ、それは無い……と思いたい」
近遠の言葉に、海が困ったような顔になる。
「うーん……あの村も絵本みたいだったけど……ここもまるで本みたいですね」
「本みたい……どういうことです?」
火村 加夜(ひむら・かや)の言葉に、海が反応する。
「あ、いえ……ちょっと思っただけなんですが、まるで本のページみたいだなぁ、って」
ああ、と海が頷いた。言われてみれば、この光景の色は紙のように真っ白だ。
「というと、本に閉じ込められたんでしょうか?」
「本の中、というのは確かなのでは、と思いますね……これからどうしましょうか?」
加夜に言われ、海が悩む。
『……随分と大勢来たな』
何者かの声が、海の背後から聞こえた。
「ッ!? 誰だ!」
海が振り返る。
――そこに立っていたのは、影であった。
容姿や格好は全く解らない。輪郭もおぼろげながら、人の形をしている事だけは解る。
「……何者だ」
身構えつつ、海が問いかける。同行者たちも同様に身構えた。
『ああ、このような姿で驚かせてすまない。警戒しないでくれ、私は敵ではない……この記録を作った者だ』
影が侘びの言葉を述べる。
「記録を? ということは……貴方は四賢者の一人、という事ですか?」
警戒を僅かに解いた海が問いかける。ドロシーは、『原典』は『四賢者が封印の直前までを記録した物』と言っていた。
『……少し違う。私はこの記録を作った際に生み出された……残留思念、と言えば分りやすいか?』
「残留思念……?」
『……君達が来たという事は、あの書が開かれたという事。即ち、『大いなるもの』が復活の兆しを見せているのだな?』
海が頷くと、残留思念の『賢者』は少し俯き、溜息を吐いた。
『……やはりそうか。ならば、君達の為に見せるとしよう――過去、何があったかを』
そう言うと、『賢者』は手を開くと、胸の前で叩く。
パン、と音が響いた――瞬間。
「……え!?」
――風景が変わった。
真っ白だった風景は、一瞬にして自然豊かな平原へと変わる。
「……ここは」
『ティル・ナ・ノーグ、ハイ・ブラゼル地方。君達が居る時代より遥か昔のだがな』
そう言うと、『賢者』が辺りを見回した。まるで、懐かしんでいるようにも見えた。
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