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年忘れ恋活祭

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年忘れ恋活祭
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■夕暮れ前〜広がるクレープの輪?
 もう少しで夕暮れを迎えそうになる時間帯。中央広場ではある露店に長蛇の列ができていた。
 クレープ屋『天使の羽』。空京では有名なクレープ販売店であり、この恋活祭にも出張出店するとのことで、ファンの人たちが買いにきているようだ。
「一度でいいから、ここのクレープ食べてみたかったんだよね。あたしたちの分まであるかな……?」
 はぐれないように手を繋ぎながら、その長蛇の列に並ぼうとしているのはリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)とそのパートナー・マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)の二人である。天使の羽がこの祭りで出店することを聞いたマーガレットが、リースを誘った……という経緯だ。
「どんなクレープなんでしょう……気になります」
「ね、リースは何を買うの? あたしはやっぱりアップルシナモンかなっ♪」
「私は普通にバナナチョコで――あら?」
 と、ワイワイとクレープ談義をしているところへ、とてとてと人影が近づいてきた。――その正体は紅 咲夜(くれない・さくや)。先ほどまでは中央広場を巡っていたのだがリースたちを見かけ、勇気を出して話しかけようとする。
「あ、あの……」
「えっと、どうしました?」
 話しかけられたリースは、笑顔で返事をする。紅がどう話を切り出そうか迷っていると、リースたちは紅へ笑みのまま話しかけた。
「もしかして一人? だったら、あたしたちこれからあそこのクレープを食べようって話してたんだけど、君も一緒にどう?」
「……は、はいっ。私も……一緒にお祭りを回ってくれる人を……探していたから……」
「人が多いほうがお祭りも楽しめますしね、一緒に回りましょう!」
 マーガレットからの誘いに、紅は笑顔をほころばせる。互いに自己紹介をしていると、商店街のほうから勇刃と天鐘のカップルがやってきた。
「あ、健闘くん見てください! あそこのクレープ屋さん、空京で人気あるんですよ! 買っていきましょう!」
「おお、いいぜ咲夜(さきや)!」
 と、勇刃の言葉に紅がピクッと反応した。……それもそのはず、自分と一字違いの名前が近くで発せられたのだから、つい反応してしまったのだろう。
「あの、そちらのお二人もクレープを買うのでしたら、一緒に並びませんか?」
 今の会話が耳に入ったからか、リースは勇刃たちへ一緒にクレープを買おうと誘う。特に問題なかったのか、勇刃たちはすぐに了承した。
「あの……名前、咲夜(さきや)って言うの……?」
 身長差からか、上目遣いになりながら紅は天鐘にそう尋ねる。
「はい、私は咲夜(さきや)って言います。あなたの名前は?」
「私は……咲夜(さくや)……漢字はこう書くの……」
 そう言うと、紅は手のひらに『咲』と『夜』の漢字を指で書く。その文字を見て天鐘や、このやり取りを見てた勇刃の表情は驚きを見せる。
「こりゃ珍しいな、読み方は違うが咲夜(さきや)と同じ漢字とはなぁ」
「はい……私も驚きです」
「天『鐘』とこの町の名物である時計塔の『鐘』繋がりといい、これといい……なんか、運命めいたものを感じるな!」
 珍しい偶然の一致に、思わずそんなことを感じてしまう勇刃、天鐘、紅の三人であった。
「お、ちょうどいいところにクレープ屋があるじゃないか。フレイ、一緒にクレープを食べないか?」
「はい、マスター。……でも、『年忘れとんかつ祭』って言う割にはとんかつを扱う店が少ないように思うのですが……?」
 さらにそこへ、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)の二人がやってきた。どうやら、ベルク主導のもと町の中を見て回っているようだが、フレンディスはいつもの護衛、と考えているのかこれをデートと思っていないようだ。その表れか、祭りの名前も勘違いしているほどである。
「――おや、リースさん。ここで会うなんて奇遇ですね」
「あ、フレイさん! フレイさんと……あの、失礼ですけどそちらの方は?」
 リースとフレンディスは以前からの友人であり、リースの姿を見つけるとすぐにフレンディスが話しかける。リースもそれに答えるが、フレンディスの隣にいるベルクとは初対面であり、思わず「恋人さんですか?」と問いかけた。
「え、恋……め、滅相もないです! この方は私のマスターです!! 決してそういうのじゃありません!」
「……ベルク・ウェルナットだ。よろしく頼む」
 ……恐ろしや、天然。ベルクは心の中で泣いていた。
 ――挨拶もそこそこに、すっかり一団となった感じのリース一行はクレープ屋の列に並ぶことになった。列に並んだまま、リースがぴょんぴょんと垂直ジャンプをしてメニューを見ようと必死になってたり、みんなでどのクレープを食べようかという話になったりと、実に和やかなムードである。
 ……あれほどの長蛇の列だったにも関わらず、リースたちは無事に望みのクレープを購入できた。祭りの裏方で色々動いていた太郎がいなければ、おそらく売り切れてたであろう。
 その後、リースたちは近くの席を確保し、楽しく団欒のひと時をを過ごす。リースはバナナチョコ、マーガレットはアップルシナモン、紅はエンジェルクリーム(甘めに調整されたクリーム。天使の羽人気商品)、勇刃は別の露店で購入済みだったカツサンド、天鐘は苺クレープ、ベルクはチョコクリーム、フレンディスは七色チョコチップと、多種多様(一部除く)のラインナップである。
 なぜこんなに種類がバラバラになったかというと、マーガレットが「クレープの交換っこしたいからみんな別種類のを頼んでね♪」と言ったからである。
 そんなわけで、しばらく皆でクレープ(一部除く)交換会が楽しく行われたのであった。

 そしてその頃……カップルが多くなってきたのを見計らい、ある一行が動き出そうとしていたのであった。